吉見順正 『
射法訓 』
抑々、弓道の修練は、動揺常無き心身を以
て、押し引き自在の活力を有する弓箭を使用
し、静止不動の的を射貫くにあり。
その行事たるや、外頗る簡易なるが如きも、
其の包蔵する處、心行相の三界に至り、相
関連して機微の間に、千種万態の変化を生じ、
容易に正鵠を補足するを得ず、朝に獲て夕に
失い、之を的に求むれば、的は不動にして
不惑、之を弓箭に求むれば、弓箭は無心にし
て無邪なり。
唯々之を己に省み、心を正し身を正しうし
て一念生気を養い、正技を練り、至誠を竭し
て、修行に励むの一途あるのみ。
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