JanusHS 0.8.1 ユーザーマニュアル
目次
JanusHSについて
ソフトウェアの概要
JanusHSは、データを安全に移送するために開発された暗号化ソフトウェアです
公開鍵暗号方式によりデータを暗号化することができます。加えて、従来の暗号ソフトと同様にパスフレーズでデータを暗号可することも可能です。
特長
- 公開鍵暗号の利用
- 公開鍵暗号方式を採用しました。面倒でリスキーなパスワード管理をせずに済みます。加えて、従来型のパスワード型の暗号も使用可能となっています。
- エンジンはGnuPG
- 暗号化のエンジンにはUNIX/Linuxで定番のGnuPGを採用しています。暗号強度、実績ともに十分です。
- 複数ファイルの取り扱い
- GnuPGだけでは単独のファイルしか暗号化できないため、前段にtarを組み合わせることにより、複数ファイルをアーカイブし、暗号化できるようにしました。といっておりましたが、その後のバージョンアップで、GnuPGにもgpg-zipというユーティリティが付属するようになり、GnuPGも複数ファイルの暗号化が可能になりました。幸い、JanusHSと同方式が採用されたため、相互運用が可能となっています。
- 直感的なユーザーインターフェース
- 直感的に暗号化・復号できるようにルック&フィールを工夫しました
動作環境
Microsoft Windows 98SE/2000/XPでの動作を確認しております。
(Windows 98SEで、ログオンをせずにOS起動時キャンセルで使用している場合、暗号化の際に短いエラーメッセージが表示されますが、問題なく利用可能です)
使用条件
JanusHSはJanusHS本体(ファイル名 JanusHS.exeおよびその周辺ファイル)と、GnuPG由来のファイル(gpg.exe)、bsdtar由来のファイル(bsdtar.exeおよびその周辺ファイル)とから構成されています。
JanusHS本体については Kazuyoshi Kakiharaが著作権を保持しており、利用についてはGPL2に従うものとします。JanusHS本体はあるがままの形で無保証で提供されるソフトウェアです。著作権表示を保持し、GPL2を適用する限りにおいて、JanusHS本体の複製・改変・再頒布を認めます。
GnuPGおよびbsdtarについては、別途それぞれのソフトウェアのライセンスが適用されます。
セットアップ
運用フォルダの準備
まず、JanusHSを運用する専用のフォルダを作成します。運用の利便を考慮し、My Documents内に作成することを推奨しますが、たとえばUSBメモリ等に入れて持ち運びたい場合は、そのようなリムーバブルメディア上で利用することも可能です(以後の例ではJanusHSという名前のフォルダを作成しています)。
JanusHSは一時ファイルを除き、このフォルダ以外に勝手にファイルの書き込みを行うことはありません。レジストリを使用することも、Windowsのシステムフォルダにファイルを作成することもありません。
同梱のファイルについて
GnuPG
binフォルダ内のgpg.exeは、GnuPG(The GNU Privacy Guard)由来のファイルで、GnuPGのライセンスが適用されます。詳しくはGnuPGのホームページhttp://www.gnupg.org/を参照してください。
GnuWin32
binフォルダ内のbsdtar.exe, archive1.dll, bzip2.dll, zlib1.dll はGnuWin32由来のファイルです。これらのファイルについてはBSDライセンスが適用されます。詳しくはGnuWin32のホームページhttp://gnuwin32.sourceforge.net/を参照してください。
基本操作
公開鍵暗号について
公開鍵暗号とは、データの暗号化と復号で、対になる二つの異なる鍵を使う暗号方式です。
実際の運用にあたっては、あらかじめホームページなどで自分の暗号化鍵を公開しておき、誰からのデータであっても自分宛の暗号はすべてその暗号化鍵を使ってもらうようにします。
復号用の鍵がなければ、暗号化されたデータを元に戻すことはできないので、暗号化鍵を公開することによって暗号の安全性に影響が出ることはありません。
自分は公開した鍵と対になる復号鍵一つだけを厳重秘密に管理しておきます。
従来型の暗号と比べて、
- パスワードを相手に秘密に伝える必要がない
- 暗号を解くための重要な秘密(パスワード等)を誰かと共有しているわけではない
- たくさんのパスワードを秘密に管理しておく必要がない
以上の点で、運用が容易で、安全性が高くなっているのが公開鍵暗号の特長です。
一般に、暗号化鍵は「公開鍵」、復号鍵は「秘密鍵」とよばれます。
JanusHSでは鍵の管理はソフトが行います。ユーザーがしなければならないことは、一度だけの鍵作成と、あとは公開鍵の受け渡しだけです。
※公開鍵暗号は鍵を人に盗聴されても安全ですが、鍵の詐称(悪意のある人が別人になりすまして、あたかもその人のものであるかのようにして公開鍵を渡す場合など)には対応できませんので注意してください。
公開鍵の作成
鍵マネージャの起動
JanusHSをインストールしてから、初めて「ツール」の「鍵の管理」を選択すると、公開鍵を作成するかどうかを尋ねる画面が現れます。
ここで「はい」を選択すると公開鍵作成の画面が現れます。
鍵情報の設定
(注)ここではすでに名前、メールアドレス、コメントが入力されています。
公開鍵の作成には「名前」「メールアドレス」の入力が必要です。また、任意で「コメント」の入力もできます。JanusHSには一度設定した鍵情報を変更する機能がないため、慎重に入力してください。
- 名前
- 「名前」は半角で5文字以上です。日本語の使用も可能ですが、他のシステムとの相互運用を考えると、半角英数のみを使用したほうが無難です。
- メールアドレス
- 「メールアドレス」は、ここで入力された内容が実際のメール送信等に使われるわけではありませんので、架空のものでも大丈夫です。が、やはり他のシステムとの相互運用や管理の手間を考えると、日常に使用しているものを入力したほうが無難です。
- コメント
- 「コメント」は任意ですが、半角の丸括弧()は使用できません。また、やはり他のシステムとの相互運用を考えると、日本語は使用せず、半角英数のみにしたほうが無難です。
以上を入力して「OK」をクリックすると鍵が生成されます。鍵の生成には場合によっては数十秒から数分の時間がかかります。
公開鍵のファイル書き出し鍵を生成し終えると、公開用の鍵をファイルに書き出すかどうか尋ねる画面が現れます。
「はい」を選択すると、鍵のファイル名を指定する画面が現れます(「いいえ」を選択しても、鍵は後から書き出すことが可能です)。
適当な名前をつけて「保存」をクリックしてください。
鍵マネージャの表示
一連の作業が完了すると「鍵の管理」の画面が表示されます。
JanusHSでは鍵の管理はソフトウェアが行ないます。ユーザーが鍵の中身を直接目にすることはありません。
(注)オリジナルのGnuPGでは原則として自分の秘密鍵にパスフレーズを設定して守ることになっています。が、JanusHSでは「公開鍵暗号」をPRするため、この機能を敢えてはずしてあります。ですので、共有のパソコンなど、誰かに中身を見られる恐れのあるパソコン上ではJanusHSを使用しないでください(Windows XPの暗号化ファイルシステムでJanusHSのフォルダをまるごと暗号化したり、JanusHSをまるごとUSBメモリーキーで持ち運ぶなどして、パソコンには暗号化されたファイル以外は残さないような運用方法を検討してください)。
公開鍵の受け渡し
鍵マネージャの起動「ツール」の「鍵の管理」を選択すると、鍵管理の画面が表示されます。
鍵のインポート
相手から鍵を受け取った場合は、この鍵管理の画面で「インポート」をクリックすれば、ファイルから公開鍵を読み込み、リストに加えることができます。
相手から受け取った鍵ファイルを指定して、「開く」をクリックしてください。
鍵のインポート状況を逐次表示する画面が現れます。ここでエラーが出なければインポート成功です。
鍵のインポートに成功すれば、受け取った鍵ファイルは削除してしまってかまいません。
鍵の削除
何らかの理由で鍵を削除する場合は、鍵管理の画面で、削除したい鍵を選択した状態で「削除」をクリックします。
鍵の削除状況を表示する画面が現れます。ここでエラーが出なければ削除成功です(成功の場合は何も表示されません)。
データの暗号化
応用編
対称暗号による暗号化
暗号化パスフレーズの指定
事前に公開鍵を作成している場合は暗号方式を選択する画面が現れますので、対称暗号(パスフレーズ方式の暗号の意味)を選び、パスフレーズを入力してください。
(注)ここでは既にパスフレーズが入力されています。
公開鍵を作成していない場合は、パスフレーズの入力を促す画面のみが現れます。
対称暗号の復号
復号したいファイルをJanusHSの画面上右側の「Decrypt」と書かれた絵の上にドロップしてください。
復号先のフォルダを選択する画面が現れますので、適当なフォルダを選択してください。
復号状況を逐次表示するダイアログが表示されます。途中、暗号解除のためのパスフレーズの入力を促す画面が現れますので適切なパスフレーズを入力してください。ダイアログにエラーが表示されなければ復号完了です。
鍵のバックアップ
一度公開鍵を作成すると、JanusHSの運用フォルダの下に、confというフォルダが作成されます。
このフォルダの中に、自分の秘密鍵やインポートされた公開鍵などがすべて含まれます。
このフォルダをどこかにコピーするだけで、鍵のバックアップは完了です。
間違った鍵をインポートしたりして、JanusHSの動作がおかしくなった場合は、confフォルダを削除して、バックアップしておいたconfフォルダをコピーして戻すようにしてください。
補助ツール(JEnc、JDec)の使い方
JanusHSには、JEnc.exe, JDec.exeという補助ツールが付属しています。
JEnc.exeにファイルをドロップすると、JEnc.exeと同じフォルダにあるJanusHS.exeが起動し、ドロップされたファイルを暗号化します。
JDec.exeに暗号化されたファイルをドロップすると、JDec.exeと同じフォルダにあるJanusHS.exeが起動し、ドロップされたファイルを復号します。
ですので、これらのファイルのショートカットを例えば、デスクトップ上に作っておくと、JanusHSを起動しておかなくても、そのショートカットにファイルをドラッグ&ドロップするだけで、暗号化、復号が可能になります。
また、これらのファイルのショートカットをSendToフォルダ内に作成しておくと、ファイルをマウスでポイントして、右クリック→送るでファイルを暗号化、復号できるようになります。
これらの補助ツールについては、必ず「ショートカット」を作成してご利用ください。間違ってツール本体をJanusHSのフォルダから出してしまうとうまく動作しません。
UNIX系ツールとの相互運用
JanusHSは基本的にgpg.exeおよびbsdtar.exeに対するラッパーです。
JanusHSでインポート、エクスポートされる鍵は、gpg --export で作成される鍵と同じものです。
JanusHSによる暗号化は、tar -cvf <filenames> | gpg --encrypt (公開鍵の場合)と同じものです。
JanusHSによる復号は、gpg --decrypt <filename> | tar -xvf と同じものです。
ですので、UNIX系のツールでこれらのコマンドを使用して作成された暗号データはJanusHSで使用可能です。
また、JanusHSで作成された暗号データはこれらのUNIX系コマンドで操作可能です。