この文型も 主語--述語。 である。
述語の形は「−き」の形をしている。この形の述語は過去の出来事をさししめす。過去の形は、動詞の連用形+きである。「き」は、過去の助動詞の終止形であるといわれる。
主語----------------述語
格助詞なしの名詞 --動詞の終止形・・基本的な言い方
--動詞の連用形+過去の助動詞 「き」の終止形・・過去の言い方
応用はかなりむずかしい。
二巡目からやるほうがよい。
1十三にて 格助詞の「にて」は現代語の「で」。
まゐりき 参上した が直訳。
3おはす 「あり」の尊敬語。
4かし 詠嘆の終助詞。
1たまへりき 「り」が連用形の部分で、継続の意味。「たまへ」が尊敬だから、「ていらっしゃった」という訳になる。
この文型も、主語--述語。 である。
述語の形は、「−けり。」で、これも過去の出来事をあらわす。動詞の連用形+けり は、過去の形である。「けり」は、過去の助動詞の終止形であるといわれる。
「−き。」の形の過去形は、話し手が直接体験した出来事をつたえる。
「−けり。」の形の過去形は、話し手が伝え聞いた出来事をあらわす。
1唐船 からふね と読む。
1すみけり 「住んだ」が直訳だが、現代語では「住んでいた」。
3いふ 連体形で、「もの」にかかる。連体形については文型11で。
ありけり 動詞「あり」は、現代語とちがって、人の存在もあらわす。つぎの例もおなじ。
4・・母、・・妹 主語がふたつならんでいるばあい。
1大臣 原文では「おほいまうちぎみ」と読んでいるが、「おとど」と読む場合が多い。
いまそがり 動詞「いまそがり」は 「あり」の尊敬語。
文型1-3に属するが、述語の形が複雑な例をあげる。
1いと たいそう。非常に。
あさまし おどろく、あきれる という気持ちをあらわす形容詞。
2おぼし掟て 「おぼしおきつ」の連用形だが、「おぼし」の部分が尊敬語になっている。
おぼし 「思ふ」の尊敬語「おぼす」の連用形。
掟て 「おきつ」(計画する。処置する。命令する。)の連用形。
3やがて そのまま。
厩 うまや と読む。
たてられ 「られ」は受動の助動詞「らる」の連用形。「たて」は他動詞「たつ」の未然形で、「馬を立つ」とは、馬屋で馬を飼育すること。
4 「ありけり」の 「ーけり。」の形は、会話や歌の文で、話し手の目の前の出来事についてのべているときは、詠嘆の意味をあらわす。最後の例の「ありけり。」も「あったなあ」「あるものだなあ」などと訳せる。
程経て 時を経て。
たま 数珠の玉。ここでは「魂」に掛けている。なくなった玉が出てきたという歌。
これも文型は 主語--述語であるが、述語の形が、「−つ」「−ぬ」となっている。
「動詞の連用形+つ」「動詞の連用形+ぬ」のかたちは完了をあらわす。「つ」「ぬ」は完了の助動詞の終止形であるといわれる。
完了は過去ではないので、その動作の結果や影響がのこっている。上の例では、「わたしはおなかがいっぱいだ」「いまその皇子は生きていらっしゃる」ということがあらわされている。
1もの anythingの意味でつかう。何かあるもの。
2御帳 みちやう と読む。帳は帳台のことで、中世のヨーロッパにもあった、カーテンつきのベッドのようなもの。貴婦人は、寝るときはもちろん昼もここで過ごした。
いれたてまつり 動詞の連用形+たてまつるは 謙譲語にあたる言い 方。文中に表されていないが、入れられた人をうやまっている。
4男御子 おのこみこ と読む。
1申 さる と読む。午後遅く。
(「−つ」の用例は、非常にすくない)
「−つ」「−ぬ」の形は、ともに、「−た」と訳されている。ときには、「−てしまう」とも訳される。
すでにのべた過去も「−た」と訳されるが、これは現代語で過去と完了の区別がなくなってしまったからである。しかし、打消形を考えると、区別できる。
「昨日は月がでた。」
打消は 「昨日は月がでなかった」・・過去
(月を見ながら)「月がでた」
打消は 「月がでていない」・・完了
「−つ」「−ぬ」の違いについては、学者にいろいろな説があって、われわれは両方とも完了としておけばよい。
1おどろおどろしき 「おどろおどろし」(おおげさだ)の連体形。
おはしまさで 「おはします」(「あり」の尊敬語)の未然+「で」(打消の接続助詞)。
2まゐりて 「まゐる」の連用形+接続助詞。「まゐる」は謙譲語だが、このばあいは尊敬語で「召し上がる」。
4ご覧ぜで 「ご覧ず」(「見る」の尊敬語)の未然形+打消接続助詞
帰らせ 「せ」は尊敬の助動詞。「せ+たまふ」は二重尊敬。