文型1-12,13,8解説

文型1-12

 ここでは、形容動詞が述語になっている。形容動詞も過去の助動詞、推量の助動詞とくみあわさる。

あはれなり    あはれなる    あはれなれ
あはれなり  あはれなり   あはれなりしか
あはれなりけり あはれなりける あはれなりけれ
あはれなら  あはれなら   あはれなら
あはれなるべし あはれなるべき あはれなるべけれ
あはれなれ(命令形はあまりつかわない)

文型1-12(2)

1むげなり 形容動詞「むげなり」終止形。

2うつくしげなり 形容動詞「うつくしげなり」終止形。
 「げ」は形容詞から形容動詞をつくる接尾辞

3ものあはれなり 形容動詞「ものあはれなり」終止形。
 「もの」はあまり意味のない接頭辞。

4まれなり 形容動詞「まれなり」終止形。

文型1-13

 名詞が述語にあらわれるとき、「−なり」の形をとる。

なり」は断定の助動詞といわれるが、じっさいは、名詞を述語にするコピュラといわれるものである。述語になっている名詞も、過去・推量のかたちをとる。

  山なり。     山なる。     山なれ
  山なり。    山なり。    山なりしか
  山なりけり。  山なりける。  山なりけれ
  山なら。   山なら。    山なら
  山なるべし。  山なるべき。  山なるべけれ。
  山なれ。(命令形はあまり使われない)

文型1-13(2)

1深山木なり 名詞「みやまぎ」+断定「なり」。

2事なり 名詞「こと」+「なり」。

34ものなり 名詞「もの」+「なり」

文型1-13(3)

1限りなり 名詞「限り」+「なり」

2ほどなり 名詞「ほど」+「なり」

 「こと」「もの」「かぎり」「ほど」などは、物ではなく、抽象的な意味をもって、文を形式的にととのえるはたらきをするので、形式名詞といわれる。

1-12/1-13応用

 ここでの例文の前のふたつ(1,2)は、終助詞がついたり、過去の助動詞などがつく例である。
 
 さきの形容動詞と名詞が述語になっているとき、形容詞の場合とおなじく、「あり」で代表される補助動詞とくみあわさっていることがある。あとのふたつの例(3、4)はこれである。
  
 悩ましげに おはす   悩ましげに 侍り
 人に おはします    人に 侍り
                   など。

1際高なる きはだかなる と読む。

 御もてなしなりや 名詞「もてなし」+「なり」終止形+終助詞「や」。御 は接頭辞。

2たよりなりけり 名詞「たより」+「なり」連用形+過去「けり」。

3悩ましげにおはす 形容動詞「なやましげなり」連用形+補助動詞・尊敬「おはす」終止形。

4人に侍べり 名詞「人」+断定の助動詞「なり」連用形+補助動詞・丁寧「はべり」。

文型8

 ここでは、否定文をまなぶ。述語が「−」の形をとっている文は、否定文である。「」は否定または打消の助動詞といわれる。文型1から7でとりあげた文には、原則的に、それに対応する否定文がある。

 よむ   よみき   よみけり    よみつ・・

 よま よまざりき よまざりけり よまざりつ・・

文型8(2)

1おこたりたまはず 動詞「おこたる」連用形+尊敬「たまふ」未然形+「ず」

2いたまず 動詞「痛む」未然形+

3かけず 動詞「かく」未然形+

4きこしめさず 尊敬の動詞「きこしめす」未然形+

文型8(3)

1たがはね 動詞「たがふ」未然形+打消「ず」已然形。 強調。

2さぶらはざりき 丁寧の動詞「さぶらふ」未然形+「ず」連用形+き

3しらせざりけり 動詞「しらす」未然形+「ず」連用形+「けり」

8応用1

打消の推量または意志
  よま
 「」は打消の推量または意志の助動詞といわれる。
 終止形「」以外の形はほとんどつかわれない。
  「よまざらむ」の形は漢文訓読にもちいる。

可能の打消、すなわち不可能
 文型1-10でのべた可能に対して、不可能は、
  よま
   よまず    よまじ
の形がつかわれる。

1いでたまはじ 動詞「いづ」連用形+尊敬「たまふ未然形+打消推量「じ」終止形。

2いれじ 動詞「いる」未然形+打消意志「じ」終止形。

3えしのびあへたまはず 動詞「しのびあふ」連用形尊敬「たまふ」未然形+不可能「え・・ず」終止形。

4えにくみたまはじ 動詞「にくむ」連用形+尊敬「たまふ」未然形+不可能・推量「え・・じ」終止形。

8応用2

打消の命令、すなわち禁止
  よむ
   よみ

 「な」は禁止の終助詞。「な」は終止形のあとにつく。

 「な・・そ」は、副詞+終助詞。「な」と「そ」のあいだには、連用形がくる。

 「よまざれ」の形は漢文訓読にもちいる。

1なありきそ 動詞「ありく」連用形+禁止「な・・そ」。

2なみたまひそ 動詞「みる」連用形+尊敬「たまふ」連用形+禁止「な・・そ」。

3もらすな 動詞「もらす」終止形+禁止の終助詞「な」。

4みせたまふな 動詞「みす」連用形+尊敬「たまふ」終止形+「な」。