文型10-3,10-4解説

文型10-3

 従属文が、結果が予想に反するという逆接の意味をもつときは、述語が「−」または「−ども」のかたちをとる。已然形に接続する「」と「ども」は、接続助詞であるといわれる。「ども」は「」とおなじはたらきをするが、あまりつかわれない。

 「」「ども」も過去、完了、推量、意志、受け身、使役などの意味とくみあわさってあらわれる。

文型10-3(2)

1おもひすつれど 動詞「おもひすつ」已然形+「ど」。

2そそのかししかど 動詞「そそのかす」連用形+過去「き」已然形+「ど」。

3おぼししかど 尊敬の動詞「おぼす」連用形+過去「き」已然形

4ききわたりつれど 動詞「ききわたる」連用形+完了「つ」已然形

文型10-3(3)

1おもひぬれど 動詞「おもふ」連用形+完了「ぬ」已然形+「ど」。

2ゑひたれど 動詞「ゑふ」連用形+存続「たり」已然形+「ど」。

10-3応用1

 逆接の形の従属文の述語は、さらに、打消の形、形容詞、形容動詞、名詞がつかわれることがある。

 よめ、        よまね
 白けれ、       白からね
 豊かなれ、     豊かならね
 山なれ、       山ならね

 打消の形で、「ざれど」は、漢文訓読にもちいられる。
「ざれば」も同様である。

1法 「のり」と読む。

 おぼえはべらねど 動詞「おぼゆ」連用形+丁寧「はべり」未然形+打消「ず」已然形+「ど」。

2のこらねど 動詞「のこる」未然形+打消「ず」已然形+「ど」。

3なけれども 形容詞「なし」已然形+「ども」。

4みなれども 名詞「み」+断定「なり」已然形+「ども」。

10-3応用1(2)

1おぼえはべらざりしかど 動詞「おぼゆ」連用形+丁寧「はべり」未然形+打消「ず」+過去「き」+

10-3応用2

 この例文は、文型4でとりあげた、「こそ」・・已然形。の形の強調文のようにみえる。しかし、つぎに文がつづいていて、従属文であることがわかる。このような場合、逆接の従属文になる。

 見分け方としては、已然形の述語のあとに、「。」がきて、文がおわっていれば、強調文。「、」がきて、つぎの文がつづいていれば、逆接の従属文である。

10-3応用2(2)

1ありけれ 「あり」+過去「けり」 已然形。「・・の時はよかったが」という意味のきまり文句になっている。

2きけ 動詞「きく」已然形。

3うるはしうこそ ありけめ 形容詞「うるはし」連用形「うるはしく」のウ音便の形+係助詞「こそ」+補助動詞「あり」連用形+過去の推量の助動詞「けむ」已然形。
 形容詞に過去推量のついた「うるはしかりけむ」を補助動詞によってふたつの部分にわけた言い方。

文型10-4

 述語が「−とも」の形の従属文は、逆接の条件をあらわす。つまり、仮定しておいて、しかも予想と反対の出来事を推量したり、命令したり、自分の意志をあらわしたりする。

 したがって、主文の述語は「推量」「命令」「意志」のかたちである。「とも」は、終止形に接続する接続助詞であるといわれる。ただし、終止形が「−り」でおわる活用語には、連体形に接続する。

文型10-4(2)

1あはすとも 動詞「あはす」終止形+とも。

 さやはあるべき 副詞「さ」+や+は+補助動詞「あり」連体形+推量「べし」連体形。反語。

2いたうとも 形容詞「いたし」未然形ウ音便+とも。

3はかるとも 動詞「はかる」終止形+とも。