文型1-5,1-6,2解説

1文型1-5

 文型は、主語--述語 であるが、述語は「−たり。」の形をしている。現代語で「−ている。」と訳されるとき、「たり」は存続の助動詞であるといわれる。右近は、ふせるという動作をして、ふせた状態が存続しているのである。

 動詞の連用形+たり の形は、また、「−。」と訳されるときもあって、このときの「たり」は完了の意味であるといわれる。「−」「−」の形とちがって、動作のあとの結果や影響の存在はそれほど強くでていない。

文型1-5(2)

1白う 形容詞「しろし」の連用形 「しろく」のウ音便の形。ふって、つもっている ということ。

2さきみだれたり さく という動作はもはや問題になっていない。

3すぐれたり ここでは動作はまったくなくて、状態だけが問題になっている。

4おぼえぬ 「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形。

 みたり いひたり 動作がおこなわれたが、結果はほとんど問題になっていない。

文型1-5(3)

天に張り弓 なぞなぞ。「天に張り弓」とは何だ、ということで、答は「月」。

1-5応用

 四段、ナ変、ラ変の動詞は、「−たり」の形のかわりに「−」の形をつかうことができる。このとき、動詞の已然形+り(存続または完了の助動詞)と説明される。

 助動詞「つ」「ぬ」「たり」「り」は完了という意味を共通にもっているので、大きく完了の助動詞のグループであるといわれる。これに対して、「き」「けり」は過去の助動詞のグループをつくっている。

  過去の助動詞  き
            けり  ・・詠嘆の意味ももつ
  完了の助動詞  つ ぬ
            たり り・・存続の意味ももつ

2しられたり 「れ」は、自発の助動詞「る」の連用形。「自然と・・」と訳される。

3まけじやは 「−じ」は打消の意志の助動詞。「・・まい」「しないようにしよう」という意味。「やは」は終助詞。

 たれ だれ。

 おもひあへり 「おもひあふ」の已然形+り。

4表し、 「あらはす」の連用形。

 いへり 「言ふ」の已然形+り。

文型1-6

過去の完了
 過去の助動詞と完了の助動詞は、くみあわさることができる。

基本の形     過去の形
 動詞の終止形。 連用形+   連用形+けり

完了の形
 連用形+   連用形+   連用形+けり
     +        +       +けり
     +たり       +たり      +たりけり
 已然形+   已然形+   已然形+けり

て、に、たり、り は連用形であるといわれる。

1たまうてき 尊敬の「たまふ」の連用形「たまひ」のウ音便+てき

2内裏にも うち と読む。 格助詞「に」が主語のしるしになるのは、とてもうやまった言い方。

 きこしめし 「きく」の尊敬語「きこしめす」の連用形。

3亡せ うせ と読む。動詞「うす」の連用形。

4いにけり 動詞「いぬ」の連用形+にけり。

文型1-6(2)

1たまへりき 尊敬の「たまふ」の已然形+りき。

文型2

 文の成分(この場合は主語)に係助詞の「」がつくと、述語は連体形をとる。「」のついた部分は強調される。「−連体形。」という文型は、強調文の形である。

 「」のかわりに係助詞「なむ」をつかうと、さらに強い強調になる。「なむ」は「なん」とも書かれる。

 例文では、主語の「僧都(身分の高い僧)」に係助詞がついて、「たまふ」が連体形と解釈される。「額(ひたひ)」は格助詞なしの対象語である。

文型2(2)

1ふけて 動詞「ふく」の連用形+接続助詞「て」

 帰らせ 「せ」は尊敬の助動詞「す」の連用形。

2たまひし 「し」は過去の助動詞「き」の連体形。

3いひける 「ける」は過去の助動詞「けり」の連体形。

4ふく 動詞「ふく」の連体形。

文型2(3)

1まかで 謙譲語の「まかづ」の未然形。
 
 させ 尊敬の助動詞「さす」の連用形。 

2応用

 述語が終止形でおわるのは、ふつうの平叙文である。

       主語------------述語
 平叙文 格助詞なしの名詞--終止形。

 強調文         ------連体形。
     文のいずれかの
     部分に「」「なむ
     がつけたされる。

 強調の文型はおおくあらわれるし、出題もおおい。

1君が 格助詞「が」は現代語の「の」にあたる。

 名残をば 格助詞「を」のあとに係助詞「は」がついた形。この時にかぎって「ば」となる。

 おく 動詞「おく」の連体形。

3ある 動詞「あり」の連体形。

4はべりし 丁寧語の「はべり」の連用形+過去の助動詞「き」の連体形。

 たまへし ここの「たまへ」は下二段に活用しているので、謙譲の 「たまふ」の連用形。