これは述語が連体形であることは、文型2とおなじである。文の中に係助詞の「や」または「か」があって、述語が連体形であるのは、疑問文の形である。このばあい、文の中に疑問詞があることもおおい。
文型1 平叙文 主語-----------終止形の述語。
文型2 強調文 主語-ぞ・なむ---連体形の述語。
文型3 疑問文 主語-や・か-----連体形の述語。
(疑問詞があるばあいも)
1思ひつる 「つる」は完了の助動詞 「つ」の連体形。
3参りたる 謙譲語「参る」連用形+完了の助動詞「たり」(ここでは存続)の連体形。
4深う 形容詞「深し」の連用形「深く」のウ音便の形
出でさせ 動詞「いづ」未然形+尊敬の助動詞「さす」連用形。
給へる 尊敬の「たまふ」已然形+完了の助動詞「り」連体形。
1かかると 動詞「かかる」連体形+引用をあらわす格助詞「と」。
過去と完了の助動詞も連体形であらわれる。
終止形 き けり 連体形 し ける
つ ぬ つる ぬる
たり り たる る
疑問文があたりまえのことをたずねているとき、反語の意味になる。つまり、強く肯定する。(3応用の1〜4例)
文の中に「や」「か」がなくて、疑問詞だけがあるばあいがある。このときも、述語は連体形になって、疑問文をつくる。(3応用の例文 1)
1祐純 すけずみ と読む。人名。
才 ざえ と読む。才能。
侍る 「あり」の丁寧語「はべり」の連体形。
2乞はう 動詞「乞ふ」未然形+推量の助動詞「む」連体形のウ音便。
ある 動詞「あり」の連体形。
3射る 動詞「射る」の連体形。
な射そ な+動詞連用形+そ 禁止。
4見参にいる お目にかかる 「べき」は推量の助動詞「べし」の連体形。「やう」は名詞で、様子。
1いふ 動詞「言ふ」の連体形。
直訳すると、心がとまるのだ。
強調のもうひとつの言い方は、文のなかに係助詞「こそ」があって、述語が已然形になっている。これは、「ぞ」「なむ」をつかった強調文よりさらにつよいといわれる。
平叙文 強調文一 強調文二
ぞ・なむ こそ
動詞の終止形。 ・・連体形。 ・・已然形。
き。けり。 し。ける。 しか。けれ。
1すげなう 形容詞「すげなし」の連用形「すげなく」のウ音便。
そねみ 動詞「そねむ」の連用形。
2撥 ばち と読む。琴をひく道具。
3おぼしたれど 「思ふ」の尊敬語「おぼす」連用形+たれ+接続助詞 くわしくは文型10-3で。
4おもひわたりつれ 動詞「おもひわたる」の連用形+つれ。
1猶 なほ と読む。
勝りたれ まさり と読む。動詞「まさる」の連用形+たれ。
動詞の終止形、連用形、已然形は、述語のみっつの形であって、平叙文、強調文、疑問文のみっつの文型をあらわしわけている。「ものす(何かをする)」を例とすると、
ぞ・なむ・や・か こそ
ものす ものする ものすれ
ものしき ものしし ものししか
ものしけり ものしける ものしけれ
ものしつ ものしつる ものしつれ
ものしぬ ものしぬる ものしぬれ
ものしたり ものしたる ものしたれ
ものせり ものせる (ものせれ)