「とき」「ところ」などを意味する名詞のかわりに使われた準体法につづく格助詞「に」「を」のちに「が」は、しだいに接続助詞としてはたらくようになった。古代語では、接続助詞としてはたらいている「に」「を」がかなりおおい。
しかし、これらはもともと格助詞だったのだから、実際の例文で、これは格助詞なのか接続助詞なのか、判断にくるしむ場合がかなりある。「が」が接続助詞としてつかわれるのは、中世になってからなので、それ以前の文章では格助詞として解釈しておけばよい。
1かしづきたまひけるを 動詞「かしづく」+尊敬「たまふ」連用形+過去「けり」連体形+接続助詞「を」。
2おもひやりたてまつるに 動詞「おもひやる」+謙譲「たてまつる」連体形+接続助詞「に」。
3ながめやりしに 動詞「ながめやる」+過去「き」連体形+接続助詞「に」。
4まどふにしも 動詞「まどふ」連体形+接続助詞「に」+強調の副助詞「し」+係助詞「も」。
1まどふにしも 動詞「まどふ」連体形+接続助詞「に」+強調の副助詞「し」+係助詞「も」。
接続助詞の「を」「に」でおわる従属文は、順接の確定(ので)、逆接(のに)、さらには仮定(すると)など、いろいろな意味をあらわす。
また、接続助詞の「を」「に」でおわる従属文は、過去、完了、受け身、推量、意志、打消などいろいろな形をとることができる。
よむに、 よみしに、 よみけるに、 よみつるに、
よみぬるに、よみたるに、よまむに、 よまぬに、・・
よむを、 よみしを、 よみけるを、 よみつるを、
よみぬるを、よみたるを、よまむを、 よまぬを、・・
1きこえあはせんに 動詞「きこえあはす」未然形+仮定「む」連体形+接続助詞「に」。
2ふようならましを 形容動詞「ふようなり」未然形+反実仮想「まし」連体形+接続助詞「を」。
3ありぬべきを 補助動詞「あり」連用形+強意「ぬ」連体形+推量「べし」接続助詞「を」。
4みたらんには 動詞「みる」連用形+接続助詞「て」+補助動詞「あり」未然形+仮定「む」連体形+接続助詞「に」+係助詞「は」。
「てあら」が連合して「たら」と発音されている。
接続助詞「を」「に」さらに中世からは「が」のついた従属文は、よくあらわれてきて、しかも解釈がむずかしい。解釈がおかしくないかぎりは、準体法に格助詞がついたものとして訳するのが無難であろう。
また、接続助詞「を」「に」のついた従属文が、あとにくる主文を省略して、文の最後にあらわれることがある。
これも、常識的に主文をおぎなって解釈することになる。
1ここちにもはべらぬを 名詞+断定「なり」連用形+「も」+丁寧「はべり」未然形+打消「ず」連体形。
2かなしきを 形容詞「かなし」連体形。
3すぐしつるに 動詞「すぐす」+完了「つ」連体形。
4みるに 動詞「みる」連体形。
いずれも接続助詞がつづいている。
1おもひはべりつるに 動詞「おもふ」+丁寧「はべり」+完了「つ」連体形。
これも接続助詞がつづいている。
以上で、文型とその応用をおわります。つぎの実戦編にぜひとりくんでください。