文型10-5解説

文型10-5

 「とき」「ところ」などを意味する名詞のかわりに使われた準体法につづく格助詞「」「」のちに「」は、しだいに接続助詞としてはたらくようになった。古代語では、接続助詞としてはたらいている「」「」がかなりおおい。

 しかし、これらはもともと格助詞だったのだから、実際の例文で、これは格助詞なのか接続助詞なのか、判断にくるしむ場合がかなりある。「」が接続助詞としてつかわれるのは、中世になってからなので、それ以前の文章では格助詞として解釈しておけばよい。

文型10-5(2)

1かしづきたまひけるを 動詞「かしづく」+尊敬「たまふ」連用形+過去「けり」連体形+接続助詞「を」。

2おもひやりたてまつるに 動詞「おもひやる」+謙譲「たてまつる」連体形+接続助詞「に」。

3ながめやりしに 動詞「ながめやる」+過去「き」連体形+接続助詞「に」。

4まどふにしも 動詞「まどふ」連体形+接続助詞「に」+強調の副助詞「し」+係助詞「も」。

文型10-5(3)

1まどふにしも 動詞「まどふ」連体形+接続助詞「に」+強調の副助詞「し」+係助詞「も」。

10-5応用1

 接続助詞の「」「」でおわる従属文は、順接の確定(ので)、逆接(のに)、さらには仮定(すると)など、いろいろな意味をあらわす。

 また、接続助詞の「」「」でおわる従属文は、過去、完了、受け身、推量、意志、打消などいろいろな形をとることができる。

  よむ、   よみし、  よみける、 よみつる
  よみぬる、よみたる、よまむ、  よまぬ、・・

  よむ、   よみし、  よみける、 よみつる
  よみぬる、よみたる、よまむ、  よまぬ、・・

1きこえあはせんに 動詞「きこえあはす」未然形+仮定「む」連体形+接続助詞「に」。

2ふようならましを 形容動詞「ふようなり」未然形+反実仮想「まし」連体形+接続助詞「を」。

3ありぬべきを 補助動詞「あり」連用形+強意「ぬ」連体形+推量「べし」接続助詞「を」。

4みたらんには 動詞「みる」連用形+接続助詞「て」+補助動詞「あり」未然形+仮定「む」連体形+接続助詞「に」+係助詞「は」。
「てあら」が連合して「たら」と発音されている。

10-5応用2

 接続助詞「」「」さらに中世からは「」のついた従属文は、よくあらわれてきて、しかも解釈がむずかしい。解釈がおかしくないかぎりは、準体法に格助詞がついたものとして訳するのが無難であろう。

 また、接続助詞「」「」のついた従属文が、あとにくる主文を省略して、文の最後にあらわれることがある。

これも、常識的に主文をおぎなって解釈することになる。

1ここちにもはべらぬを 名詞+断定「なり」連用形+「も」+丁寧「はべり」未然形+打消「ず」連体形。

2かなしきを 形容詞「かなし」連体形。

3すぐしつるに 動詞「すぐす」+完了「つ」連体形。

4みるに 動詞「みる」連体形。

いずれも接続助詞がつづいている。

10-5応用2(2)

1おもひはべりつるに 動詞「おもふ」+丁寧「はべり」+完了「つ」連体形。

これも接続助詞がつづいている。

以上で、文型とその応用をおわります。つぎの実戦編にぜひとりくんでください。