文型10-1,10-2解説

文型10-1

 「−」の形でおわっている文は、「理由」をあらわしながら、つぎの文につながっていくことができる。このとき、「−」の形の文を従属文、あとの文を主文という。

 「」は已然形に接続しているとき、順接確定条件をあらわす接続助詞であるといわれる。

  よめ、  よみしか、   よみけれ
  よまね、 よみざりしか、よみざりけれ
  よみつれ、よみぬれ、 よみたれ、よめれ
  よまるれ、 よますれ、   など。

文型10-1(2)

1のたまへば 尊敬の動詞「のたまふ」已然形+「ば」。

2みしかば 動詞「見る」連用形+過去「き」已然形+「ば」。

3めしければ 動詞「めす」連用形+過去「けり」已然形+「ば」。

4いりぬれば 動詞「いる」連用形+完了「ぬ」已然形+「ば」。

文型10-1(3)

1わたりたまひぬれば 動詞「わたる」連用形+尊敬「たまふ」連用形+完了「ぬ」已然形+「ば」。

10-1応用1

 順接確定条件の「−」の形の述語は、「理由」のほかに、先にあった出来事がきっかけとなって、あとの出来事がおきたということをあらわすときがある。このとき、「・・」と訳す。また、過去の出来事のばあいは、「・・たところ」と訳す。

 「−」の形は、動詞以外にも、形容詞、形容動詞、述語としてつかわれている名詞にもみられる。

  白し。    白けれ
  豊かなり。 豊かなれ
  山なり。   山なれ

 「山なれば」の「なれ」は断定の助動詞の已然形。

1ひきよせたまへば 動詞「ひきよす」連用形+尊敬「たまふ」已然形+「ば」。きっかけ。

2おもへば 動詞「おもふ」已然形+「ば」。きっかけ。

3いやしければ 形容詞「いやし」已然形+「ば」。理由。

4おもげなれば 形容動詞「おもげなり」已然形+「ば」。理由。

10-1応用1(2)

1ことなれば 名詞「こと」+断定「なり」已然形+「ば」。理由。

10-1応用2

 さらに、完了や打消の形で、条件の形になっている例をあげよう。

1ききつれば 動詞「きく」連用形+完了「つ」已然形+「ば」。きっかけ。

2 いりぬれば 動詞「いる」連用形+完了「ぬ」已然形+「ば」。理由。

3ゆきたまひたれば 動詞「ゆく」連用形+尊敬「たまふ」 連用形+完了「たり」已然形+「ば」。きっかけ。

4えりあはせられたりしかば 動詞「えりあはす」未然形+尊敬「らる」連用形+完了「たり」連用形+過去「き」已然形+「ば」。

 4例は理由。

10-1応用2(2)

1あるべきならねば 動詞「あり」連体形+当然「べし」連体形+断定「なり」未然形+打消「ず」已然形+「ば」。
 「べきなり」の言い方については、あとでふれる。

2みえざりければ 動詞「みゆ」未然形+打消「ず」連用形+過去「けり」已然形+「ば」。

 1,2例はいずれも理由。

文型10-2

 ここでも従属文の述語が「−」の形をとっているが、この「」は未然形に接続している。

 この形は順接仮定条件をあらわしているといわれ、仮定の条件をさしだし、その条件のもとで主文の出来事がなりたつだろうとのべている。

 したがって、主文のかたちは、推量、疑問、または命令である。上の例も、主文の述語の形は、推量でかつ疑問であるが、たずねる意味はあまりつよくなく、心のなかで想像しているのである。

文型10-2(2)

1あらば 動詞「あり」未然形+「ば」。

2いはば 動詞「いふ」未然形+「ば」。

3なくば 形容詞「なし」未然形+「ば」。

4ものならば 名詞「もの」+断定「なり」未然形+「ば」。

文型10-2(3)

1命だにあらば。 「あらば」の説明はまえとおなじだが、主文が省略されている。いわなくてもわかるばあい、このように省略されることがある。

10-2応用

 順接仮定の形は、確定とことなって、過去の助動詞とはくみあわさらない。

 よめ、よみしか、よみけれ、よみつれ、よみぬれ、よみたれ、よめ、・・(確定)

 よま、 ・・、     ・・、      よみ、 よみ、  よみたら、よめ、・・(仮定)

 過去の助動詞「」または反事仮想の助動詞「まし」とくみあわさると、事実に反する仮定をあらわす。

 よみば、よみましかば、

1みなりせば 名詞「み」+断定「なり」連用形+過去「き」未然形+「ば」。

2所ならましかば 名詞「所」+断定「なり」未然形+「まし」未然形+「ば」。

3せましかば 動詞「す」未然形+「まし」未然形+「ば」。

4みざらましかば 動詞「みる」未然形+「まし」未然形+「ば」。

 いずれも事実に反することを仮定している反実仮想。