文型1-8,1-9,7解説

文型1-8(1)

 ここでは述語の形が「−べし」である。「べし」は推量の助動詞といわれるが、「−」が「だろう」と訳されるのに対して、「はずだ」と訳されることもある。単語の形は、あとでふれる形容詞とおなじように変化する。

 終止形  む   べし    形容詞 白し
 連体形  む   べき         白き
 已然形  め   べけれ        白けれ

文型1-8(2)

1御らんじゆるすべし 動詞「ごらんじゆるす」終止形+べし 「御覧ず」は「みる」の尊敬語。

2あるべし 動詞「あり」連体形+べし ラ変といわれる動詞のばあい、「べし」は終止形ではなく、連用形に接続する。

3すべし 動詞「す」終止形+べし

1-8の応用

 助動詞の「べし」は、過去や完了の助動詞とくみあわさることもある。主語が一人称の文の中の「べし」は、「」とおなじように、意志をあらわす。

 「べし」はふつう動詞の終止形に接続するといわれるが、ラ変動詞(およびこれに準じて終止形が「り」で終わるもの)では、連体形に接続する。

 ものす      あり       はべり
 ものさ     あら     はべら
 ものすべし   あるべし   はべるべし

1やぶれ侍りぬべし 動詞「やぶる」連用形+丁寧「はべり」連用形+強意「ぬ」終止形+べし 推量。

2おはしつきにたるべし 尊敬語「おはしつく」連用形+完了「ぬ」連用形+存続「たり」連体形+べし 推量。

3かくれ給ひぬべし 動詞「かくる」連用形+尊敬「たまふ」連用形+強意「ぬ」終止形+べし 未来

4すべし 動詞「す」終止形+べし 当然の判断。

1-8の応用(2)

拝むべし 意志。

文型1-9

敬語法のまとめ1

 ここで、動詞が述語になったばあいの、敬語のあらわしかたについてまとめておこう。身分関係のきびしい古代では、敬語がさかんに使われた。

 敬語はつねに、はなし手またはかき手の態度である。会話文ではそのはなし手の、地の文では、かき手の。

 はなし手・かき手が文のなかで主語であらわされている人に敬意をあらわすときは、尊敬の言い方を使う。

 はなし手・かき手が文のなかで主語以外であらわされている人に敬意をあらわすときは、謙譲を使う。

 きき手・よみ手に敬意をあらわすときは丁寧を使う。

1のたまふ いふ の尊敬語。

2おぼす おもふ の尊敬語。

3おはしき 「あり」の尊敬語「おはす」連用形+過去「き」。

4いまそがりけり 「あり」の尊敬語

 「いまそがり」連用形+過去「けり」。

文型1-9(2)

1異君達 こときんだち と読む。

 おぼしおとすな 「おもふ」の尊敬語「おぼしおとす」終止形+禁止の終助詞「な」。禁止の文。

2まゐる ゆく の謙譲語。

3「まゐり」は謙譲語「まゐる」の連用形。

文型1-9(3)

敬語法のまとめ2

 敬語はそのためのとくべつの動詞によって表されることがある。

  尊敬語  おぼす おはします のたまふ・・
  謙譲語  さぶらふ たてまつる まゐる・・
  丁寧語  はべり

 動詞の連用形に補助動詞をつけることもおおい。

  尊敬   たまふ
  謙譲   たてまつる
  丁寧   はべり

 尊敬は、また、尊敬の助動詞「る・らる」「す・さす」によってもあらわされる。

1まかでさせ給ひける 「ゆく」の謙譲語「まかづ」未然形+尊敬「さす」連用形+尊敬「たまふ」。

2参りたる 「来」の謙譲語「まゐる」連用形。疑問の文。 

3つきたまひぬ 動詞「つく」連用形+尊敬「たまふ」連用形。

4いれたてまつりつ 動詞「いる」連用形+謙譲「たてまつる」連用形+完了「つ」。

文型1-9(4)

1出でさせ給へる 動詞「いづ」未然形+尊敬「さす」連用形+尊敬「たまふ」已然形+完了「り」。

文型7

 ここでは希望をあらわす文型をあげる。ここまでで古文の文型はつぎのようになる。

 平叙文  文型1-1 1-2 1-3 1-4 1-5 1-6 1-7 1-8
 強調文  文型2 4
 疑問文  文型3
 命令文  文型5
 意志文  文型6「−む」「−べし」
 希望文  文型7「−ばや」「−てしがな」「−なむ」 「−まほし」

文型7(2)

1すまばや 動詞「すむ」未然形+願望の終助詞「ばや」

2見てしがな 動詞「見る」連用形+願望の終助詞「てしがな」

3咲かなむ 動詞「咲く」未然形+願望の終助詞「なむ」

4見せまほしきよ 動詞「見す」未然形+願望の助動詞「まほし」連体形+詠嘆の終助詞「よ」
 連体形で文が終わっているばあいについては、あとでのべる。