文型11,12解説

文型11

 いままでとりあげた文型はすべて、主語+述語の構造をもっていた。文型11では、まったくことなって、連体修飾語+名詞の形をとりあげる。

 連体修飾語には、動詞、形容詞、形容動詞の連体形がくる。名詞がくる場合には、格助詞の「の」をつけるが、このタイプについてはとりあげない。

 連体修飾をうける名詞は、文のなかで、主語以下のいろいろなはたらきをしている。

文型11(2)

13ある 動詞「あり」連体形

 なくは 形容詞「なし」未然形+「ば」の清音化(仮定条件は未然形+ば だが、形容詞につく場合は「は」となることがある)

2みがける 動詞「みがく」連体形

4いふかひなき 形容詞「いふかひなし」連体形

文型11(3)

1さがなき 形容詞「さがなし」連体形

2あやしげなる 形容動詞「あやしげなり」連体形

11応用1

 連体修飾語は連体形によってあらわされるが、連用修飾語になる動詞や形容詞などに、過去、完了、受け身などの意味がくわわることがある。このとき、これらの形をつくる助動詞が連体形をとる。

 よむ。   よむ ひと、   よみ ひと、    よみける ひと、
        よみつる ひと、 よみぬる ひと、  よみたる ひと、
 白し。   白 花、     白かり 花、  白かりける 花、

 たとえば、例文のはじめのふたつは、

1きせし 動詞「期す」連用形+過去「き」連体形。

2うまれたまひし 動詞「うまる」連用形+尊敬「たまふ」連用形+過去「き」連体形。

3やむごとなかりける 形容詞「やむごとなし」連用形+過去「けり」連体形。

4なりぬる 動詞「なる」連用形+完了「ぬ」連体形。

11応用1(2)

1おほとのごもりたる 尊敬の動詞「おほとのごもる」連用形+存続「たり」連体形。

2かくれたる 動詞「かくる」連用形+存続「たる」連体形。

3なからむ 形容詞「なし」未然形+推量「む」連体形。
 「もし」という仮定の意味をふくむ。

11応用2

 つぎに、打消の連体形が連体修飾をあらわしている例を練習しよう。

 よむ。   よみき。   よみけり。  よまる。・・
 よむ 人 よみ 人 よみける 人 ・・

 よま。   よまざりき。   よまざりけり。・・
 よま 人 よまざり 人 よまざりける 人・・

 白から。  白からざりき。  白からざりけり。・・
 白から花 白からざり花 白からざりける

1えもいはぬ 動詞「いふ」未然形+打消「ず」連体形
 「え・・ず」の構文だから、不可能をあらわす

23あらぬ 動詞「あり」未然形+打消

4みもせぬ 動詞「みる」連用形+係助詞「も」+補助動詞「す」未然形+打消
 「みる」がふたつの文節に分割されている例。

11応用2(2)

1れいならぬ 名詞「れい」+断定「なり」未然形+打消

2おろしたまはざりける 動詞「おろす」+尊敬「たまふ」未然形+打消「ず」連用形+過去「けり」連体形

文型12

 連体形の用法として、文型2と3では、強調文と疑問文の述語になるばあい、文型11では連体修飾語になるばあいをあげた。これらとならんでよくあらわれるのは、準体法のばあいである。

 これは連体形をそのまま名詞として使うもので、いろいろな名詞としてはたらくので、こと、もの、ひと、とき、ところなどと訳せる。文のなかでも、普通の名詞とおなじようにはたらく。うえの例で、「いふ」は「いふの」という、主語である名詞としてはたらいている。

文型12(2)

1いふぞ 動詞「いふ」連体形

2すむこそ 動詞「すむ」連体形

3なりたまふに 動詞「なり」連用形+尊敬「たまふ」連体形

4そむきぬるも 動詞「そむく」連用形+完了「ぬ」連体形

文型12(3)

1とはぬも 動詞「とふ」未然形+打消「ず」連体形

2うれしきは 形容詞「うれし」連体形

12応用1

 準体法でつかわれている連体形も、過去、完了、受け身、推量、打消の形であらわれることがある。

 また、動詞のほかに、形容詞や形容動詞、さらに断定の助動詞「なり」をともなう名詞が、準体法でつかわれる。

 こうした用言が名詞となるとき、現代語では「・・の」の形をつかう。したがって、古文の準体法も「・・の」と訳せる。このばあいの現代語の「の」は準体助詞ともいうが、英語では動名詞をつくる-ingがこれにあたる。

1かくれたまへるも 動詞「かくる」連用形+尊敬「たまふ」已然形+完了「り」連体形

2ゆづりきこえたまへりしも 動詞「ゆづる」連用形+謙譲「きこゆ」連用形+尊敬「たまふ」已然形+完了「り」連用形+過去「き」

3むかへたまへらむこそ 動詞「むかふ」已然形+謙譲「たまふ」已然形+完了「り」未然形+推量「む」連体形

4みえぬさへ 動詞「みゆ」未然形+打消「ず」連体形

12応用2

 準体法の連体形は名詞とひとしいのだから、格助詞なしでつかわれることはもちろん、格助詞やその他の助詞とともにつかわれる。また、断定の「なり」をともなって、述語となることもできる。はじめの例文の「もとむるなりけり」がそれである。

 また、文が名詞でおわることがあって、感動を表現する。このときの名詞の位置を準体法の連体形がしめることができる。結果的には、文が連体形でおわっているが、文中に係助詞「ぞ なむ や か」や「疑問詞」がないことによって、いわゆる「連体止め」であることがわかる。

1もとむるなりけり 動詞「もとむ」連体形+断定「なり」連用形+過去「けり」。

 形容詞の準体法
2こひしきは 形容詞「こひし」連体形。
 
 準体法が文末にあるとき
3おはしつる 尊敬動詞「おはす」連用形+完了「つ」連体形。

4とけぬる 動詞「とく」+完了「ぬ」連体形。