実践編C,D解説

C-1

C いろいろな疑問文1

 出題されている解釈問題のかなりの部分を疑問文が占める。

 疑問文の基本的なパターンは、疑問の係助詞「」「」+連体形。であった。これについては文型3でとりあげた。ここであげた例では、係助詞をふくむ文節は、

 かたつかた、ひと、よく、けふ

 この「」が連体形の述語と呼応するのは、いわゆる係結びの法則であるが、疑問文の形式であるとするのがただしいだろう。

1ありけむ 動詞「あり」連用形+過去推量「けむ」連体形。

2いひそこなひたらむ 動詞「いひそこなふ」連用形+完了「たり」未然形+推量「む」連体形。

3よくやはべらむ 形容詞「よし」連用形+係助詞「や」+丁寧補助動詞「はべり」未然形+推量「む」連体形。

4ながめくらさん 動詞「ながめくらす」未然形+推量「む」連体形。

C-2

C いろいろな疑問文2

  疑問詞がつかわれていると、「」「」がなくても、連体形で文がおわって、疑問文をつくる。はじめの2例は、

 いかなる(疑問詞) みせむ(動詞「みす」未然形+意志「む」連体形)。
 など(疑問詞) えのぼりたまはぬ(動詞「のぼる」+尊敬「たまふ」+打消「ず」連体形(え・・ず で不可能))

 疑問文はさらに文の最後に疑問の終助詞「」「」をくわえることによってつくられる。これは現代語とおなじつくりかたである。

1みせむ 動詞「みす」未然形+意志「む」連体形。

2えのぼりたまはぬ 動詞「のぼる」連体形+尊敬「たまふ」未然形+打消「ず」連体形。
(え・・ず で不可能をあらわす)

3たまはるや 尊敬動詞「たまはる」終止形+疑問終助詞「や」。

4はべりや 丁寧動詞「はべり」終止形+疑問終助詞「や」。

C-3

C いろいろな疑問文3

 例は終助詞「」をもちいた出題である。形容動詞の場合は、語幹につくことができる。

  まことか 形容動詞「まことなり」語幹+「

 つぎの例は、疑問詞「なに」があって、引用をあらわす格助詞に断定「なり」がついている。この「なり」未然形+推量「む」連体形 と説明される。

 「」「」はまた感嘆をあらわすばあいがある。みっつめの例がそうで、疑問に解釈してはならない。話して自身の気持ちを述べているからである。

1まことか 形容動詞「まことなり」語幹+疑問終助詞「か」。

2せむとならむ 動詞「す」未然形+意志「む」終止形+引用の格助詞「と」+断定「なり」未然形+推量「む」連体形。

3おもひやられはべるや 動詞「おもひやる」未然形+自発「る」連用形+丁寧補助動詞「はべり」連体形+感動終助詞「や」。
 「はべる」と連体形でおわっているのは、これも感動の表現。

D-1

D 反語の文1

 反語の文の出題は非常に多い。反語の文は、形の上では疑問文と同じである。文脈や常識からして、あたりまえのことを尋ねると、反語の意味になると考えてよい。

 これは現代語でもおなじで、いたずらしている子に「そんなことをしてもいいのか」と聞くのは、「そんなことをしてはいけない」と反対のことを強くいっていることになる。

 例文は、疑問文の作り方と同じ順で挙げていくことにする。

 疑問の係助詞「」「」のある例。
 疑問詞と疑問の係助詞「」「」のある例。

1まつべき 動詞「まつ」終止形+当然「べし」連体形。

2つつむべき 動詞「つつむ」+当然「べし」連体形。

34あらむ 動詞「あり」未然形+推量「む」連体形。

 いずれも反語の意味をもっている。形式的に判断することは難しく、あたりまえのことをたずねている場合に反語になると考えたほうがわかりやすい。

D-2

D 反語の文2

 反語としてはたらく疑問文も、係助詞「」「」+連体形の文型によっている。まえのカードの例と、このカードの最初の例がそれである。最初の例は、さらに疑問詞「など」に「」がつけくわわっている。

 つぎに、疑問詞と連体形だけの疑問の文型のつかわれている例である。

 いかが
 いかが+係助詞「は」
 など

という疑問詞がつかわれている。反語の文では、述語が推量のかたちであることがおおい。

1たすけざるべき 動詞「たすく」+打消「ず」連体形+推量「べし」連体形。

2なのめならむ 形容動詞「なのめなり」未然形+推量「む」連体形。

3せむ 動詞「す」未然形+意志「む」連体形。

4かうぶらしめん 動詞「かうぶる」未然形+使役「しむ」未然形+推量「む」連体形。

D-3

D 反語の文3

 さらに疑問詞

  なに
  いかで

がつかわれている例をつづける。

 さいごの例では「なににかは」のかたちになっている。疑問詞「なに」+格助詞「に」+疑問係助詞「か」+係助詞「は」のくみあわせであるが、「かは」のくみあわせは反語の意味のあらわれるときによくみられる。こうした例では、かたちのうえから反語を区別できる。

1ところならん 名詞「ところ」+断定「なり」未然形+推量「む」連体形。

2のべうべき 動詞「のべう」終止形+推量「べし」連体形。「う」は現代語の「える」で、「・・できる」の意味。

3せむ 動詞「す」未然形+意志「む」連体形。

D-4

D 反語の文4

 さらに疑問詞として、

  いかに
  なにしに
  など

をつかった文が出題されている。

 また、文の最後に「」「」をつけて疑問文をつくる型の例も出題されている。反語の訳し方としては、「・・だろうか、イヤ・・でない」という型があるが、反対の意味であることがつたわれば、そうでなくてもよいようである。

1せむ 動詞「す」未然形+意志「む」連体形。

2おんゆゑにてさぶらふべき 接頭辞「おん」+名詞「ゆゑ」+断定「なり」連用形+接続助詞「て」+丁寧補助動詞「さぶらふ」終止形+推量「べし」連体形。

3いはざらんや 動詞「いふ」未然形+打消「ず」未然形+推量「む」終止形+疑問終助詞「や」。

4ものか 名詞「もの」+疑問終助詞「か」。

D-5

D 反語の文5

 反語は、かたちのうえでは疑問文とおなじである。しかし、さきにのべたように「やは」「かは」のかたちは反語であることがおおい。これが名詞の「もの」についた「ものかは」のかたちは、ほとんど終助詞のようにつかわれて、文の最後について反語をあらわす。

1かけられけるものかは 動詞「かく」+可能「らる」連用形+過去「けり」連体形+ものかは。

3おもふものかは 動詞「おもふ」連体形+ものかは。