文型1-10,1-11解説

文型1-10

 述語が「−」「−らる」でおわると、受け身の動作をあらわす。「」「らる」は受け身の助動詞といわれ、動詞の未然形に接続する。動詞の四段・ナ変・ラ変には「」が、それ以外には「らる」がつかわれる。

ほむ  ほめらる   ほめられき  ほめられけり・・

ほむる ほめらるる ほめられし  ほめられける・・

ほむれ ほめらるれ ほめられしか ほめられけれ・・

文型1-10(2)

1ゆるさる 動詞「ゆるす」未然形+

2ながされたまふ 動詞「ながす」未然形+「る」連用形+尊敬「たまふ」

3さわがれき 動詞「さわぐ」未然形+「る」連用形+過去「き」

4おぼされけり 尊敬「おぼす」未然形+「る」連用形+過去「けり」

文型1-10(3)

1おされたまへり 動詞「おす」未然 形+「る」連用形+尊敬「たまふ」已然形+完了「り」
 「る」「らる」が完了の助動詞とくみあわさる例は、あまりおおくない。

1-10応用

 「−」「−らる」の形の述語は、受け身以外に、自然にそうなる意味の動詞のばあいは、自発、打ち消しの形などで、可能、すでに敬語法でのべた尊敬文型1-9)の意味でつかわれていることがある。

 これらの意味の区別は、なかなかむずかしいが、上にのべた順で可能性をあたっていくしかない。

 受け身に対して、使役の形は使役の助動詞「」「さす」「しむ」によってつくられる。これらも、尊敬の意味をあらわすことがある。使役は人に何かさせる、という意味になる。(さいごの例)

1思い出られたまふ 動詞「おもひいづ」未然形+「らる」連用形

2なかれけり 動詞「なく」未然形「る」連用形+過去「けり」

4動かれず 動詞「うごく」未然形+「る」未然形+打消の助動詞「ず」
 打ち消しの形についてはあとであつかう。

1-10応用(2)

1かかせたまふ 動詞「かく」未然形+「す」連用形+尊敬「たまふ」
 使役の形は、かかき かかけり などの形でもあらわれる。

文型1-11

 主語であらわされているものが、どんなであるかをいうときは、述語に形容詞があらわれる。
 述語になる形容詞も、終止形以外に、連体形、已然形であらわれることがある。

  終止形     連体形     已然形
 にくし      にくき      にくけれ
 おそろし    おそろしき   おそろしけれ

文型1-11(2)

1みきくも 動詞「みきく」連体形+係助詞「も」
 この連体形の用法はあとでとりあげる。「なきこそ」「かはられけるこそ」も同様

 かなし 形容詞「かなし」終止形。

2うらめしき 形容詞「うらめし」連体形。 「ぞ」の結び。

3さうざうしけれ 形容詞「さうざうし」已然形。 「こそ」の結び。

4ありがたけれ 形容詞「ありがたし」已然形。

 守の 助詞「の」のついた形が主語をあらわしている。

1-11応用

 形容詞からなる述語も過去の形をとることがある。このとき、動詞とおなじように過去の助動詞「」「けり」があらわれる。命令形はあまり使われない。

 しろし      しろき      しろけれ
 しろかり  しろかり    しろかりしか
 しろかりけり しろかりける  しろかりけれ
 しろから  しろから   しろから
 しろかるべし しろかるべき  しろかるべけれ

1うつくしかりき 形容詞「うつくし」連用形+過去「き」

2かしこかりけり 形容詞「かしこし」連用形+過去「けり」

3くるしからむ 形容詞「くるし」未然形+推量「む」連体形 疑問。

4多かり 形容詞「おほし」終止形
 形容詞の終止形は本来「し」でおわるが、これだけは例外。

1-11応用(2)

1こころうや 形容詞「こころうし」語幹+終助詞「や」
 形容詞の語幹は感動表現にもちいられる。

1-11応用2

 形容詞はしばしば補助的動詞とともにもちいられる。

  うつくし      うつくしく あり
  うつくしき     うつくしく ある
  うつくしけれ   うつくしく あれ

 補助的動詞は「あり」が基本であるが、「あり」があらわれることはあまりなくて、尊敬の「おはす」や丁寧の「侍り」があらわれることがおおい。

 また、「あり」のかわりに「ものす」をもちいて、「ものし たまふ」のように、尊敬の補助動詞をつけることもある。これらは、形容詞が述語にくると、敬語表現がしにくいので、それをおぎなうためである。

1おもしろくあり 形容詞「おもしろし」連用形+補助動詞「あり」

2わかくおはします「わかし」連用形+補助動詞・尊敬「おはします」

3をさなくはべり「をさなし」連用形+補助動詞・丁寧「はべり」

4うつくしうてものしたまふ「うつくし」連用形ウ音便+補助動詞「ものす」連用形+尊敬「たまふ」

1-11応用2(2)

1かたくはべらめ 「かたし」連用形+補助動詞・丁寧「はべり」未然形+推量「む」已然形 強調。