実践編B解説

B-1

B いろいろな中止形と接続形
 1 中止形

 中止形については、文型9でとりあげた。ここでは、さらに出題されている、複雑な形を研究する。

 たとえば3は、

 「えゐもさだまらず」 まず、複合動詞「ゐさだまる」の未然形が不可能の「え・・ず」とくみあわさっている。

 そして、最後の「」は連用形と考えられる(これは、文がここで終わっていないで、「、」になっているから)。

 さらに、よくある例だが、係助詞は複合動詞のあいだにはいってくるので、まえの要素「ゐる」の連用形のあとに「」がはいりこんでいる。

1なりて 動詞「なる」連用形+「て」

2いひなさず 動詞「いひなす」未然形+打消「ず」連用形。

3えゐもさだまらず 動詞「ゐさだまる」+「も」+不可能「え・・ず」 連用形。くわしくは、解説。

4おぼえずして 動詞「おぼゆ」未然形+打消「ず」連用形+接続助詞「して」

B-1(2)

1せで 動詞「す」+打消接続助詞「で」。

B-2-1

B いろいろな中止形と接続形
 2 条件形1

 理由を表す、いわゆる順接確定条件については、文型10-1であつかった。

 ここでは、出題されている例をさらにおぎなっている。

 順接確定条件の形は、已然形+接続助詞「」によってつくられるが、この形はすでにのべたように非常におおくの種類がある。条件の形の要素となっている助動詞をとりだして、その意味を加味してかんがえていくとよいだろう。

1みれば 動詞「みる」已然形+

2きけば 動詞「きく」已然形+

 このふたつはきっかけをあらわしているので、「・・と」と訳す。

3おはしければ 尊敬動詞「おはす」連用形+過去「けり」已然形+

4なりにければ 動詞「なる」連用形+完了「ぬ」連用形+過去「けり」已然形+

 1から4はいずれも順接確定条件。

B-2-1(2)

1ことならねば 名詞「こと」+断定「なり」未然形+打消「ず」已然形+

  順接確定条件。

B-2-2

B いろいろな中止形と接続形
 2 条件形2

 逆接確定条件については、文型10-3であつかった。

 「」「ども」は已然形に接続するといわれるが、順接の場合と同様、過去、完了、推量、意志、打消などの助動詞がはいってくる。

 おなじく文型10-3の応用であつかったが、「そ」・・已然形のかたちで、文をおわらないで、逆接の意味を持って主文につながっていく用法がある。これも、出題されている。

1おもひしかども 動詞「おもふ」+過去「き」已然形

2さぶらひつれども 謙譲動詞「さぶらふ」+完了「つ」已然形

3やすからずははべれども 形容詞「やすし」+打消「ず」連用形+「は」+丁寧補助動詞「はべり」已然形

4およばぬにしもおはさざらめど 動詞「およぶ」+打消「ず」連体形+断定「なり」+し+も+尊敬補助動詞「おはす」+「ず」+推量「む」已然形

B-2-2(2)

1きこえたまへりしか 謙譲動詞「きこゆ」+謙譲「たまふ」已然形+存続「り」連用形+過去「き」已然形(謙譲の「たまふ」は下二段に活用する)。

B-2-3

B いろいろな中止形と接続形
 2 条件形3

 順接仮定条件は、文型10-2であつかった。接続助詞は確定条件とおなじく「ば」であるが、未然形に接続する。ところで、形容詞に接続する場合は、未然形「−」に接続すると同時に、「」でなく、「」のかたちをとることがある。

 条件をあらわす従属文は、接続助詞「」「」によってもつくられることは、文型10-5でのべた。このとき「」のつく形は、おおくは逆接であるが、順接の場合もある。

 たとえば3例は、

  くるしきに、 形容詞「くるし」連体形+接続助詞「に」
    順接確定条件。

1くるしからずは 形容詞「くるし」未然形+「ず」未然形+接続助詞「ば」(「は」の形) 仮定

2まゐりつるに 謙譲動詞「まゐる」+完了「つ」連体形+接続助詞「に」  逆接

3くるしきに 形容詞「くるし」連体形+接続助詞「に」 順接 くわしくは説明

4おぼえぬを 動詞「おぼゆ」未然形+「ず」連体形+接続助詞「を」逆接