枕草子130・解説

作品について

 枕草子

  晩秋の雨上がりに見られる露のすがたの面白さ。人の気づかないものを捕らえる作者の感性を表した随筆的章段。

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九月ばかり:特定の年の9月の話ではない。一般的に述べている。このような一般的、概括的な文章を書いたことによって、清少納言は仮名ではじめて随筆を書いたと言われる。

ぬれかかりたる:植え込みが雨によって濡れて、雨滴が掛かっている様子。そうしたところに朝日がさして、雨滴がきらめく一瞬の美しさをとらえている。

 透垣の羅文:便覧等の図を見てほしい。隙間があって、いかにもクモが巣を張りそうになっている。

:クモが巣を張りそうな部分。屋根の張り出した部分のことだが、手すりのことだという解釈もある。

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かかりたるが:「かかる」という動作がされて、その結果として雫が残っている、と読んで、完了の用法と見た。存続と見る人もいる。

 白き玉:雫の様子。雫が蜘蛛の糸にネックレスのように掛かっている。

枝のうち動きて:露が落ちて重量がだんだん減っていくにつれて枝がかすかに動いていき、そのうち枝の反発力が勝ってさっとはね上がる、という微妙な変化をとらえている。

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と言ひたることどものとわたしが言った事々が

をかしけれ:「をかしけれ」をここで2度目に繰り返している。枕草子が「をかしの文学」と言われるゆえんである。