第127段。きまりのまるいものを列挙して、類集的章段。
1さしいでたる:完了「たり」連体形は、準体法で、いろいろな名詞を補って訳すが、ここでは、様子、ところ、のを補う。
2取らする:動詞「とらす」連体形。呼ばれたと思って行ったところ、呼んだ人が物をあげようとしていたところだったので、間違って行った人はよけい恥ずかしい、ということ。
いとど・・:「はしたなし」などが省略。
ひとの上:ひとのこと。「身の上」の「上」とおなじ。
3聞きとりて:人の悪口を言っているのを、小さい子が聞いていたのである。子供だから、それを当人がいるときに、「あの人はこうなんだよね」とか、言ってしまう。源氏物語・若紫に、まだ幼い若紫が、家の人たちが源氏の評判をしたのを聞いていて、源氏が聞いている時に言ってしまう場面がある。その内容は、源氏を誉めているのだが、家の人たちはきまりわるく思う。
1うち泣きなどするに:その人が泣いたりする時に。
2げにいとあはれなり:聞いているこちらの言葉。
涙:同情の涙。
4めでたきことを:その一方で、すばらしいことを。清少納言が涙が出るほど感動するのは、悲しいことより、すばらしいことに対してであることがわかる。
1いで来にぞいで来る:動詞「いで来」を強調するため、連用形に格助詞「に」をつけたものに繰り返して、「いで来にいで来」とした。これは「泣きに泣く」と同じ用法。さらに、係助詞「ぞ」を間にはさんで、後半を連体形の結びとしたもの。どんどん出てくるのだ。
「はしたなきもの」について、現代にも通じる、日常的な例を挙げている。