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「エリン様!今すぐ私とお逃げください!」
背後から突然の声。
慌しい足取りでエリンに近づいて来たのはいつもそばにいてくれるサブリナだった。
「え…え……?」
いつもと様子が違う。
静かで慌てることのないサブリナが珍しく焦っていた。
「サブリナ? 何があったの…?」
何があったか分からないからサブリナに聞いてみる。
だが辺りを見回しているばかりで答えは返ってこなかった。
「…時間がありません。失礼します!」
サブリナはエリンを背に乗せ、外への扉を開けた。
雨音がはっきりと聞こえてきた。
かなり雨が降っていることが、音からでもすごく分かる。
サブリナが走りだしたのと同時に、今までいた地面に矢が刺さった。
「いたぞ!逃がすな!!」
複数の怒号とともに、大勢の足跡が迫ってくる。
「怖い…怖いよ……!」
背後から迫ってくる感情は、容赦なく背中へと突き刺さる。
それは恐怖というものになり、徐々に心を侵し始めた。
「エリン様!しっかりしてください!大丈夫です、私がお守りします!」
サブリナはエリンを励ましつつ、脱出路を必死に探す。
勝手を知っている館だが、それは相手も同じ。
徐々に逃げ道を失っていく。
追っ手も徐々に増えているらしく、足音もだいぶ多くなってきた。
「くっ…。どこへ逃げれば…っ!」
サブリナが声を押し殺して叫んだ。
虚しく響いた叫びと同じくして、サブリナとエリンの背後へと鋭い武器を突き立てた。
「いやあぁぁっ!!!」
エリンの絶叫。
それと共に光。
閃光とも呼べる強烈な光が辺りを飲み込んでゆく。

そして、辺りに静寂が戻った。