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「もう、寝てしまわれたようですね。」
サブリナは小さな体と不釣合いなくらい大きなベッドで寝ている少女に向かってつぶやいた。 今まで読んでいた本を閉じ、傍らにある台へと置く。 そしてもう一度、少女の顔をのぞいてみた。 「よく眠っている…。」 小さく、誰にも聞こえない声でつぶやいた後、サブリナは静かに立つ。 少女を起こさないようにゆっくりを扉を閉め、歩き出そうとしたとき背後から呼び止められた。 「サブリナ様。ダレス様がお呼びですが…。」 まだサブリナよりも幾つか年下の使用人が恭しく頭を下げた。 ほんの数秒の黙考。 「エリン様はいまお休みであり、私もここを離れるわけには参りません。また後ほど伺いますと伝えてください。」 サブリナの言葉を聞いた使用人は、来たときと同じように頭を下げ去っていった。 再び訪れた静寂の中、思考をめぐらせる。 ダレルはサブリナにとってすべてと言ってもよい存在のエリンを利用している輩。 否、ダレスはエリン自身にまったく興味はなくその力を欲しているだけ。 同じ血が流れているのにこの温度の激しさは何だろう。 そう思うと、やるせなくなる。 自分の視線がおちていることに気づき、あわてて軽く頭を振った。 下手な考えや詮索は自分の行動を縛り限界を作ってしまうことは彼女にはわかっている。 それでも想わずにはいられない。 想いは強く、彼女に責任感と使命感を背負わせる。 だがそれは重荷ではなく、むしろ信頼とも呼べるものに包まれ温かい。 例えそれが自己満足からくるものであろうとも。 私がここにいるのはエリン様を守るため。 全てを捧げ守り抜く。 視線を上げ、窓を見た。 先ほどまでは晴れていた空に、厚く黒い雲がかかり始めていた。 |