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ゲッショク 月食(月蝕 げっしょく) (英語 a lunar eclipse) >>関連項目一覧


世界各地の伝承、記録にみられる天体現象。「蝕」とも書かれる。虫が葉をはむように欠けるからだという。 月が地球の本影の中に入って、月面の一部または全部が暗くなる現象。 月の一部が本影に入るのを部分月食(a partial eclipse of the mmoon)、全部が入るのを皆既月食(a total eclipse of the moon)という。。
月食はかならず満月の時におこる(月と太陽が反対の位置にある。間に地球が入る)。月の軌道面は地球の軌道面と約5度傾いているため、月がこの二つの軌道面の交わる方向に近い位置で 満月になったときにのみ月食がおこる。太陽が、地球から見て1年に天球を1回りするとき、この交点を2回通過するが、 このときの季節に日食も月食もおこりやすく、この季節を食の季節という。食の季節は18.6年周期でひと周りする。 年2回の交点は月と太陽の軌道が5度傾いているためである。
日食は月食に比べれば見ることができる地域が限られるが、伝承では日食・月食が一緒に語られることも多い。

月と太陽の軌道上の交点は特別視され、インドでケトゥ、ラーフ、中国に伝わり計都羅喉(けいとらごう)が九曜になった。 ヨーロッパでも太陽と月の南北の交点ノウド、ノードは
ドラゴンの頭(ヘッド)(カプト・ドラコニス)
ドラゴンの尾(テイル)(カウダ・ドラコニス)
といわれる。

元々、満ち欠けしている月だが、やはり短時間に蝕がおきることは特別視されたようだ。 皆既食になっても月がまったく見えなくなることは少なく、地球の大気で屈折された太陽光が月に当たって赤銅色(オレンジ)に光って見える。 まれに非常に暗くてほとんど見えなくなることもあるという。2010年12月の皆既月食はアイスランドの火山噴火の影響で赤黒くみえるらしい。

月食の古い時代の記録は月や太陽の長年月の間の運動の研究に役立っている。
地球上の広い範囲の地域で同時に観測ができる月食は、 東洋と西洋とで独立になされた月食の古記録を比較することによって、記録の信頼性を検証することができ、 暦学、年代学上の資料となり、日食の記録よりも有益である場合があるという。

古代のイギリス(ブリテン島)に住んでいた人々は、冬至の日に月食がおこることを予言する必要があった信仰を もっていたらしく、紀元前BC1900年ごろに建設が始まったソールズベリー平原の巨石の建造物ストーンヘンジは、 冬至の月食も予言できる構造をもっているともいう。

AD1世紀のローマの博物学者プリニウス(AD22,23 ?-79年)が著したという「博物誌」によれば、 スルピキウス・ガルス等が日食、月食の予言(予報)を行ったことが記載されている。
より古代では、月食は「月が毒をもられ死にかけている」などを記している。


日蝕と同じく、月を飲み込んだ魔物の伝承がみられる。

以下、世界の神話伝承にみられる月食(明示的なものと想定されるものがある)
・火の犬が日月をかむ(韓国:日食と月食のできた理由)
半蛇の魔神ラーフが日月を飲む(インド:ヴィシュヌが斬首した魔神の首が蝕をおこす)
太陽と月の交点はドラゴンの頭と尾(ギリシャ、ヨーロッパ:日食・月食の起こる交点ノード)
※インドのケトゥ、ラーフ、中国に伝った計都羅喉も同じ考え方

・魔狼ハティが月をのむ(北欧神話:ラグナロク)

という。あるいは、昼と夜のはじまりの起源説話とも思われるかはっきりしない神話伝承も多い。


参考資料
・日本大百科全書 (執筆者:関口直甫 小学館)
・大辞泉 (JapanKnowledge)
・eプログレッシブ英和中辞典 (JapanKnowledge)


 
関連項目一覧
【大項目】
星、星座 【世界:伝承】
ハティ 【北欧神話:狼:月食】
ラーフ 【インド:月:交点、星】
ケトゥ 【インド:月:交点、星】
ラゴウセイ(羅喉星) 【中国:九曜:星】
ケイトセイ(計都星) 【中国:九曜:星】

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