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ダーマット・オディナ >>関連項目一覧


ディアルマド、ディアルミドDiarmaid・オ・ドゥヴネ、ディアルウァドとも。ケルト、エリン(アイルランド)の伝承における英雄。フィン王のフェーナ騎士団の勇者。 美男であり、戦士としても優秀。マナナーン神から授かった名剣モラルタ、ドルイドのアンガスより 与えられた名槍ガ・ジャルグ、ガ・ボーを持つ。またモラルタほどではないがベガルタという剣も持つ。 ケルトの戦士が身につける技として城壁などを飛び越える技があるが、この技にも優れ、二本の槍を使った高飛びで、城壁や敵の包囲を突破できる。

戦士として気高く、敵に囲まれた絶対的な危機に、アンガスが魔術的に助け出そうとするのをよしとせず、自らの力で危機を脱する。 主君への忠誠心も高い。戦いでは常に先陣にたち、退くときはしんがりをつとめる。グラーニア姫からの愛の告白の時も、再三主君との結婚を促し断る。友人も多く、グラーニアとの悲恋物語の中でも多くの友が彼を援助する。

ダーマットは美男で、グラーニア(グラーネ)姫はダーマットのことを「金髪、そばかす肌、黒髪の英雄、やさしい、ハンサムで 男らしい顔だちでいい声をしている」といっていた。

フィンが結婚しようと迎えに行った容姿も性格もエリン一の美女というコーマック王の娘グラーニアが、フィンが老人であるのを知って、ダーマットにギーサ(ゲッシュ:魔術的な誓い)をかけ、自分と結婚して 逃げて欲しいといったところからダーマットの物語は始まる。

怒りに燃えたフィン王の追撃を逃れ、逃避行の冒険の末、安住の地を手に入れ暮らすが、 本人の知らないギーサによって命を失う。発端は、安住の地で落ち着いたある日、グラーニアが ここに父王コーマックとフィン王を迎えたことがないとなげく。一時和睦してるが許されたわけでは ないというダーマットだが彼女の願いを聞き両王をまねく。

それ自体は問題なかったが、客を迎えたある夜、犬が騒ぐのでおきてでかようとするダーマット。 グラーニアはモラルタとガ・ジャルグを持っていくようにいうが、たいしたことはないだろうと ガ・ボーとベガルタを持っていく。するとフィン王に会う。部下たちが野生の猪の足跡を見つけて 夢中に狩をはじめてしまったと。しかしこれはベン・グルバンの猪(ベン・ブルベン山の猪Sanglier de Ben Bulben)で多くの犬と人を殺したもの で今この丘に向かっているから立ち去った方がいいと。ダーマットは猪を恐れて立ち去らないというが フィン王はダーマットの忘れている昔のことを話す。昔ダーマットが子供の頃、ダーマットの父が 執事の息子を殺してしまった。 執事の息子はダーマットの命を要求したがアンガスがかばうので、執事はドルイドの魔法の杖で死んだ息子 を剛毛の猪に変え、いつかダーマットを殺すだろうと呪った。アンガスはダーマットに猪を狩してはいけないといった。しかしダーマットは聞き入れず猪と戦う。しかし剛毛は投げたガ・ボーをはじき、ベガルタの 一撃は逆に刀身が砕け散った。グラーニアの言葉を聞かなかったことを悔やんだが、猪の牙で致命傷をおいながら、ベガルタの柄を撃ちこんで猪の頭蓋骨を砕いて殺した。

問題は瀕死のダーマットを前に、フィン王が瀕死の者も治療できる「両の手でくんだ癒しの水」を ダーマットに与えなかったことだった。グラーニアの件を根にもっていたからだ。孫のオスカーが ダーマットに水を与えないなら私かあなたのどちらかが死ぬことになる、とまでいわれ三度水を運ぶが 途中でこぼし、三度目の途中でダーマットは息たえた。

ドルイドのブラフのアンガスは嘆き悲しみ、私の魔法で生きてるように保存 し、魂を吹き込んで、生き返らすことはできないが、毎日少しの間話をしようといった。グラーニアも悲しんでいたがアンガスのダーマットへの愛情に納得した。

(出典:
「ケルトのロマンス」Old Celtic Romances,1879 P・W・ジョイスPatrick Weston Joyce:著 収録の「ダーマットとグラーニアの追跡」
レンスター物語群のアイルランド叙事詩「ディアルミドとグラーネの追跡」


参考文献:ケルト幻想民話集(社会思想社)、ケルト文化事典(大修館書店)、ケルト神話物語(原書房) 、虚空の神々(新紀元社)

 
関連項目一覧
ケルト 【文化地域項目】
エリン(アイルランド) 【文化地域項目】
ガ・ボー 【ケルト:武器:槍】
ガ・ジャルグ 【ケルト:武器:槍】
モラルタ 【ケルト:武器:剣】
ベガルタ 【ケルト:武器:剣】
マナナーン・マック・リール 【ケルト:神】

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