6.3       波形分離(ピーク分離)

サンプルファイル名:(データファイル)波形分離.csv、(計算条件ファイル)二波形分離.ccn

この例では、バックグラウンドノイズがあるデータ(x,y)2つの正規分布にフィッティングする波形分離を行います。

まずは、メモ帳あるいはExcelなどでデータファイルの中身を確認してみてください。このデータをグラフにすると、2つのピークが確認でき、そのピークはx=20付近、x=15付近であり、かつ半値幅(FWHM)は両方とも1020くらいであることがわかります。また、ピークの部分の面積は両方ともおおよそ2000くらいであることもわかります。

ここで計算条件ファイルを開くと、フィッティング式は、

y = k2*1/(2.506628274631*k1)*exp(-((x-k0)^2/(2*k1^2)))+k5*1/(2.506628274631*k4)*exp(-((x-k3)^2/(2*k4^2)))+k6

となっています。

k2*1/(2.506628274631*k1)*exp(-((x-k0)^2/(2*k1^2)))と、k5*1/(2.506628274631*k4)*exp(-((x-k3)^2/(2*k4^2)))でそれぞれ1つの正規分布を表しており、k0k3は正規分布の平均値、k1k4は正規分布の標準偏差であり、k2k5はそれぞれの正規分布のピークの高さを何倍したものかを表す係数となっていることを意味しています。そしてk6はバックグラウンドノイズが定数で表されることを意味しています。

文字定数(k0からk5)の条件は、x=20付近、x=15付近にピークをもつことから、k0k3の初期値はそれぞれ2015とし、半値幅の約2.35分の1が標準偏差ですのでk1k4の初期値はそれぞれ7としています。また、面積が2000くらいであることからk2k5の初期値は2000としています。上限、下限は各文字定数とも初期値を含むような範囲で適当に設定していますが、k1k40以下というのはありえないのでk1k4だけは下限を0.1としています。

上記データファイルと計算条件ファイルを開き、計算を実行してみてください。k0=20.13k1=4.969k2=1977k3=14.99k4=2.035k5=1042k6=7.8となり、x=20.1314.99にピークを持つ2つのピークがあり、それぞれの標準偏差は4.9692.035であることがわかります。また、標準偏差の約2.35倍が半値幅ですので、半値幅は11.74.8であることがわかります。下図はExcelで描いたデータ(x,y)の各点と、フィッティング結果から描いた曲線です。併せて、バックグラウンドノイズを差し引いたときの2つの正規分布と、バックグラウンドノイズも表示しています。

サンプルファイルの中には、3つの正規分布にフィッティングするための計算条件ファイルもあります。それが三波形分離.ccnです。これを用いれば、3つのピークの波形分離を行うことができます。ただし、注意しなければならないことがあります。それは、大部分の分布曲線は2つのピークにフィッティングできると同時に、3つのピークにもフィッティングできてしまうということです。どちらのフィッティング結果が正しいのかを最終的に判断できるのは人間ですので、その物理的意味を考えて、妥当な結論を導き出す必要があります。下の図は、データファイルは波形分離.csvのままで、計算条件ファイル三波形分離.ccnを利用して3つのピークに波形分離した結果です。全く同一のデータ(x,y)であるにもかかわらず、1つ前の図と同様、非常によくフィッティングできていることがわかります。

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