ハマグリ刃研ぎセット「砥easy」の使い方 Ver.3.1
最終ページに記載の警告と注意を守ってください
目次
A.研ぎ直し
B.ハマグリ小刃止め
C.ハマグリ研ぎおろし
D.後始末
研ぎ直しは、研ぎおろしの後に、切刃をつける研ぎです。また、切れ味の落ちた切刃を再生させる研ぎです。小刃止めは長切れのために研ぎ直しの後に必ず行う研ぎです。
切刃が小さい間は、研ぎおろしを省略し、研ぎ直しと小刃止めだけを繰り返すことで、切れ味は回復します。
研ぎ直しと小刃止めは毎回行う研ぎですから、先に使い方を説明します。研ぎおろしは必要な時に行うだけなので、後回しとします。
説明で多用する「庖丁の表」とは、右利きの場合は刃を下に柄を握って右側の面を指します。
A.研ぎ直し
砥easyの研ぎ直しジグは、刃先全域に直線の切刃を均一の角度で作る働きがあります。前回の研ぎの切刃と同じ条件を再現し、研ぎ直しの量を最低限に抑えることができます。
研ぎ直しの量が少ないと、研ぎおろしの頻度も少なくなり、研ぎ作業全体の労力が軽減できます。砥easyの研ぎ直しは非常に軽度で素早い作業で済みます。
A1.位置決めゲージのセット
ケージは磁石で吸着する巾10mmの帯です。
この距離に研ぎ直しジグを使用したとき、薄刃庖丁で、表11度、裏9度程度の角度を目安にしています。
庖丁の刃先からはみ出すように、研ぎ直し用のケージを吸着させます。手指を切らないように気をつけてください。
切り込みの入った側を刃先の方にします。
両刃庖丁の場合は表と裏に1個づつ使用します。片刃庖丁の場合は表に1個使用します。
まな板か木製台座の上で、刃先をローリングします。ケージは刃先曲線に倣って位置決めされます。
A2.研ぎ直しジグのセット
位置決めゲージに沿わせるように、研ぎ直しジグを庖丁に貼り付けます。
庖丁や研ぎ直しジグの粘着面が湿っていると貼り付きません。乾燥してください。
刃先はケージで覆われていますが、手指を切らないように気をつけてください。
貼り付けるときは、ゲージが動かないように気をつけてください。
庖丁の表には、PPフィルムがセンターに粘着している方を貼ります。※1※2
両刃庖丁の裏には、PPフィルムが端に粘着している方を貼ります。
表と裏の研ぎ直しジグを取り外します。庖丁で手を切らないように注意してください。
A3.溜め水の用意
少量の溜め水を用意し、適量の液体洗剤を落とします。液体洗剤は滑りにくい合成洗剤を使いましょう。鉄分による手などの汚れが落としやすくなります。
A4.研ぎ直しプレートの用意
研ぎ直しプレートは両端が5度に曲がったプレートです。
A5.研ぎ直し
切れ味優先の研ぎでは、切刃を小さくします。
長持ち優先の研ぎでは、切刃を大き目とします。
水気の無い研ぎ直しプレートの平面部に、仕上げ研磨剤を少量(耳掻き1/3〜1/4杯程度)落とし、庖丁の先を溜め水につけて水分を補給します。
研ぎ直しプレートの平面部で研ぎます。
研ぎ直しジグのついた庖丁を、従来の砥石で研ぐように往復して研ぎます。
力はあまり入れないで、全体を均一に、滑らすように研ぎます。
研ぎおろし直後の切れ味重視の研ぎ直しは、一ヶ所を数十回の往復という感覚です。
研ぎおろし直後の長持ち優先の研ぎ直しは、中の研磨剤で広めの切刃を作ってから仕上げの研磨剤で仕上げると早く作業が終わります。
二度目以降の研ぎ直しは、一ヶ所を数十回の往復という感覚です。
切刃の付き具合を見ながら調節します。裏は表より軽い研ぎにします。6:4程度の目安です。※3
砥ぎ汁は鉄で黒くなります。
砥ぎ汁が乾いてきたらら、庖丁を溜め水につけて水を補給します。
滑って、庖丁で指を切らないように、気をつけて作業してください。
A6.バリ取り
刃先のバリ(薄い刃返り)は切れ味を極端に落とします。
研ぎ直しジグは付けたままとします。
手指を切らないように注意して作業してください。
庖丁を洗い、絞った雑巾で拭きます。
新聞を固く丸めて、引き切りを数回行い、バリを取ります。
バリは、木製木台で擦るなどしても取ることが出来ます。
バリは、刃先だけでなく、切刃のしのぎ筋にも出ることもありますので、よく磨いてください。
Bで行う小刃止めにはバリ取り効果がありますが、バリが大きいと、小刃止めだけでは取りきれないことがあります。できれば倍率の大きいルーペで、刃先を光の方向にかざして確認します。
バリが大きくて上記の方法で取りきれない場合は、庖丁45度前後に傾斜させ、刃先からアゴに滑らしながら、傾斜方向に極めて僅かに表裏1〜2回だけ軽く研ぎます。研ぎ直し用プレートで、仕上げの研磨剤を使います。
この時、研ぎ過ぎないように気をつけてください。ほんの数回舐める程度の感覚です。
A6.切れ味の確認
庖丁を洗い、絞った雑巾で拭いて乾かします。
上質紙を空中に一枚立てて持ち、試し切りをします。引き切りで切れればマズマズです。押し切りで切れればより良い状態です。
上質紙を新聞紙に変えて試します。新聞紙が切れるようなら、上等の仕上がりです。
庖丁や手や紙が濡れていると正しくテストできません。乾いた状態で試します。
切れ味が悪い時は、再度のバリ取りを試みます。研ぎ直しや研ぎおろしに戻す場合もあります。様子を見て判断してください。
B.ハマグリ小刃止め
切刃の先に微少につけるのが小刃です。0.02〜0.2mm程度の小さな刃です。小刃は切れ味をそのままに、長切れをさせる工夫です。
普通は直線刃ですが、小刃をハマグリ形状にすると更に持ちが良いといわれています。
砥easyは、簡単にハマグリ小刃も研げる道具です。
B1.ハマグリ小刃止め
研ぎ直しジグは付けたまま、研ぎ直しプレートを使ってハマグリ小刃をつけます。
まず、庖丁の表のハマグリ小刃止めをします。
奥の斜め傾斜部境界の平面部に、仕上げ研磨剤をごく少量落とし、溜め水を少量塗ります。研ぎ直しの砥ぎ汁でもかまいません。※4
庖丁を斜めにして、研ぎ直しジグが平面部にある所から始まり、刃先が傾斜部の下部に至る範囲で研ぎます。刃先がローリングして、切刃より大きな角度のハマグリ小刃が滑らかにつきます。
力は入れないで、全体を均一に、軽く押して(引きは浮かせて)研ぎます。滑って手指を切らないように気をつけて作業してください。
微少な刃ですから、10〜30回程度を目安として、様子をみてください。
両刃庖丁の場合は、庖丁の裏もハマグリ小刃止めします。
庖丁を水で洗い、絞った雑巾で拭きます。手指を切らないように気をつけてください。
手前の直角傾斜部境界の平面部に、仕上げ研磨剤をごく少量落とし、溜め水を少量塗ります。研ぎ直しの砥ぎ汁でもかまいません。※4
庖丁の刃先を直角にして、研ぎ直しジグが平面部にある所から始まり、刃先が傾斜部の下部に至る範囲で研ぎます。刃先がローリングして、切刃より大きな角度のハマグリ小刃が滑らかにつきます。
力は入れないで、全体を均一に、軽く引いて(押しは浮かせて)研ぎます。滑って手指を切らないように気をつけて作業してください。
微少な刃ですから、10〜30回程度を目安として、様子をみてください。
表を45度、裏を90度の方向で研ぐことで、小刃先には微少な鋸目がつき、引き切りの切れ味を高めます。
B2.切れ味の確認
念のため、研ぎ直しジグは付けたままとします。
手指を切らないように注意して作業してください。
庖丁を洗い、絞った雑巾で拭きます。
新聞を固く丸めて、引き切りを数回行い、バリを取ります。
バリは、木製木台で擦るなどしても取ることが出来ます。
上質紙を空中に一枚立てて持ち、試し切りをします。引き切りで切れればマズマズです。押し切りで切れればより良い状態です。
上質紙を新聞紙に変えて試します。新聞紙が切れるようなら、上等の仕上がりです。
庖丁や手や紙が濡れていると正しくテストできません。乾いた状態で試します。
切れ味が悪い時は、再度のバリ取りを試みます。小刃止めに戻るか、研ぎ直しに戻ることもあります。様子を見て判断してください。
良ければ、研ぎ直しジグを外して、庖丁と道具を洗って拭いて、完成です。
非常に強い両面テープの場合は、研ぎ直しジグを外すときに小さい曲率に曲げると、ゴム同士の接着がはがれる場合があります。はがれたら瞬間接着剤を点付けして修理します。
再剥離の両面テープは、洗剤と水で洗って乾燥させると、長く再使用できます。ポリエチレンシートや牛乳パックの容器で作った台座に貼って保存すると便利です。
C.研ぎおろし
刀身を薄くする研ぎです。Aの研ぎ直しとBの小刃止めの前に、必用なときだけ行います。
研ぎ直しを繰り返して切刃の巾が広くなると、刃先のしのぎ筋の厚さが大きくなったということです。
刃欠けの修正、刃先曲線の修正などを行う場合もこの方法によります。
研ぎおろしは、刀身の1/3程度を薄くする研ぎです。
砥easyでは刃先から20mmに厚さ0.2mmのジグを貼り付けて、標準的な薄刃庖丁で約6度の研ぎ角度を目安にしています。
C1.位置決めゲージのセット
位置決めケージは磁石で吸着する帯です。手作り砥easyではゲージの巾が10mmですから、2本並べて使います。
庖丁の刃先からはみ出すように、研ぎ直し用のケージを吸着させます。手指を切らないように気をつけてください。
切り込みの入った側を刃先の方にします。
両刃庖丁の場合は表と裏の2回の作業となります。片刃庖丁の場合は表だけです。
まな板か木製台座の上で、刃先をローリングします。ケージは刃先曲線に倣って位置決めされます。
C2.研ぎおろしジグのセット
両面テープの剥離紙の端を剥がします。
ゲージの背面に沿わせるように、ジグを庖丁に貼り付けます。刃先はケージで覆われていますが、手指を切らないように気をつけてください。
庖丁が湿っていると貼り付きません。乾燥してください。
ジグを貼り付けるときは、ゲージが動かないように気をつけてください。
ケージを外します。手指を切らないように気をつけてください。
両刃庖丁の場合は裏も、C1とC2の作業を繰り返します。
C3.研ぎおろしプレートの用意
研ぎおろしプレートは、角度が1度のプレートです。※5
C4.溜め水の用意
少量の溜め水を用意し、液体洗剤を数滴落とします。液体洗剤は滑りにくい合成洗剤を使いましょう。鉄分による手などの汚れが落としやすくなります。
C5.目安の小刃
普通は、切刃のしのぎ筋を研ぎおろしの目安とします。
切刃のしのぎ筋が均一でない場合や、刃先の欠けや刃先曲線の修正が必要は、刃先に鈍い角度の目安の小刃を付け、新しい刃先の位置に見立てます。研ぎの程度を考えて、適切な大きさの小刃をつけてください。
庖丁を45度程度に立てて、刃先だけを削り落とします。
研ぎおろしプレートに、中か仕上げの研磨剤を少し(耳掻き1/6杯程度)落とし、溜め水を少し塗って、刃のない方向に滑らせて研ぎます。
両刃庖丁の場合は、表と裏の両方を均等に研ぎます。
C6.研ぎおろし
研ぎおろしプレートの平面部に、荒い研磨剤を少し(耳掻き1杯程度)落とし、庖丁を溜め水につけて水分を補給します。
研ぎおろしジグのついた庖丁を、研ぎおろしプレートの平面部で、従来の砥石で研ぐように往復して研ぎます。目安のしのぎ筋が均一にほぼ消えるまで研ぎます。
滑って、庖丁の刃で手指を切らないように、気をつけて作業してください。
力はあまり入れないで、全体を均一に、滑らすように研ぎます。
最初はジリジリと音がしますが、次第に静かになります。砥ぎ汁は鉄分で黒くなります。
砥ぎ汁が乾いてきたら、庖丁の先端を溜め水につけて水を補給します。
研磨剤の補充を止めて研ぐと、砥粒が細かくなります。荒い傷が消えるまで研ぎます。荒い傷が残っていると、刃先に欠けを作る原因となります。
研ぎおろしジグを庖丁から剥がします。庖丁で手指を切らないように注意してください。研ぎおろしジグは、荒い研磨剤で磨耗するので、使い捨てです。
研ぎおろしプレートの端の傾斜部と中心の平面部を刀身が往復するように研ぐことで、刀身にハマグリ形状が作られます。
(図はうんと誇張して描いています)
荒い研磨剤が刀身の軟鉄部分に刺さって残っていますから、研ぎおろしの終了時には、それらが無くなっていることを確認してください。
できれば、中の研磨剤で表面を滑らかに仕上げます。
C7.バリ取り
刃先が鋭利になると、刃先にバリ(薄い刃返り)が出ることがあります。特にステンレス庖丁ではバリが大きく成長することがあります。
前述Bの小刃止めにはバリ取り効果がありますが、バリが大きいと、小刃止めだけでは除去が面倒なことがあります。
こういう場合は、目安小刃をつける時のように、庖丁をうんと立てて、刃先を極めて僅かだけ軽く研ぐことで、バリを除去できます。研ぎ直し用プレートで、細かい研磨剤を使います。
この時、研ぎ過ぎないように気をつけてください。ほんの数回舐める程度の感覚です。
D.後始末
プレートは水で洗い、絞った雑巾で拭きます。
使用済みの研ぎおろしジグは捨てます。
研ぎ直しジグは、水で洗います。貼りなおし可能な両面テープの場合は洗剤で洗います。裏面の粘着は清浄に乾燥させると、繰り返し貼付け可能です。粘着材の付きにくいクッキングシートやポリエチレンなどに貼って保存します。※2
付記
※1 何回も使ってテープの磨耗が大きくなった時は、テープだけを剥がして、新しい研ぎおろしジグを所定の位置に張りなおしてください。
※2 研ぎ直しジグの裏面の両面テープが効かなくなったら、剥がして貼り直してください。
※3 初めて砥easyを使う庖丁では、切刃角度が異なるために、研ぎ直しを大きくすることが必用なことがあります。研ぎおろしから行った方が良い場合もあります。
※4 ハマグリ小刃止めでは傾斜部はガイドの役割だけで、傾斜部に研磨剤をつける必要はありません。
※5 研ぎプレートには研磨剤が刺さって残ります。(5度の傾斜のついた)研ぎ直しプレートで荒研ぎをしないように気をつけてください。誤って使用した場合は、サンドペーパーやカッター刃で擦って除去してください。
主な変更点。
Ver.2.0
Ver.1.0では歯磨きペーストを使いました。鉄分での手などの汚れは取れやすいのですが、滑るのと、研ぎの力が若干低下するようなので、Ver.2.0では歯磨きペーストの使用をやめ、液体洗剤入りの溜め水を使うように改めました。
Ver.3.0
Ver.1.0とVer.2.0では研ぎおろしプレートは平面でしたが、Ver.3.0では両端に1度の傾斜をつけたので、刀身のハマグリ形状がより確かに作られるようになりました。
Ver.3.1
B1の図の配置を適正化しました。
警告
庖丁の刃先や切っ先やあごなどに直接触らないこと。
落下や衝突や押し付けなど起こらないように、庖丁は安全な場所に置くこと。
庖丁をはだかで持ったまま移動しないこと。
庖丁を人や動物の方に向けないこと。
庖丁を振り回したり投げたりしないこと。
準備をするときに、手指が庖丁の刃先や切っ先やあごなどに触ることが無いように、気をつけて作業すること。
研ぐときに、手指が滑って庖丁の刃先や切っ先やあごなどに触ることが無いように、気をつけて作業すること。
道具で強く擦ったり、角を押し付けたりしないように気をつけること。
道具や庖丁などを足などの上に落とさないように気をつけること。
注意
幼児や子供がいたずらしないように気をつけること。
研磨剤を口に入れないこと。
研磨剤は物品や歯に傷をつけるので、研ぎの用途以外に使用しないこと。
研磨剤は物品に傷をつけるので、水で良く洗い流すこと。
汚れるので、研ぎ汁は水で良く洗い流すこと。
汚れるので、研ぎ汁が衣服などや周囲に付かないように気をつけること。
研ぎ汁で汚れるので、荒れた手や傷ついた手で作業しないこと。
環境保全のために、研磨剤を過分に使わないように気をつけること。
用具や研磨剤や容器の廃棄は、地区の方法によること。