脆弱性体験

SDカード上のファイルアクセス制限の理解不足による脆弱性が悪用された場合の被害について、サンプルアプリを使って体験してみましょう。

サンプルアプリについて

サンプルアプリは、以下の想定で作成されています。
アプリ名 02電話帳バックアップ
アプリの概要 電話帳アプリに登録されているデータをバックアップするアプリを想定しています。
アプリを使用するメリット 利用者はこのアプリを利用する事で、誤って電話帳内のデータを消してしまったときでも、バックアップから電話帳アプリのデータを復元することができるようになります。
主な動作 サンプルアプリを起動すると、電話帳内に登録されているデータを一覧表示します。
この画面から、電話帳アプリに登録されているデータのバックアップ、およびバックアップしたファイルの削除等ができます。バックアップ先はSDカードです。
サンプルアプリの実装範囲 本サンプルアプリは実際にSDカードへのデータバックアップ、バックアップしたファイルの削除を行います。
サンプルアプリ内の脆弱性 このアプリの開発者は、バックアップするデータが大量になっても対応できるように電話帳のバックアップファイルをSDカード内に作成することにしました。
しかし、そのために電話帳のバックアップファイルが他のアプリからアクセスされてしまう危険性が生じてしまったという想定です。

サンプルアプリのインポート

始めに、サンプルアプリをEclipseにインポートします。
「サンプルアプリをインポート」ボタンをクリックしてプロジェクト「FileaccessSd」をワークスペースにインポートしてください。

サンプルアプリをインポート

Android端末エミュレータの設定

初回起動のAndroid端末エミュレータを使用する場合は、以下の設定が必要になります。
  • SDカードの設定
    Android端末エミュレータの設定画面でSDカードのサイズを指定します

サンプルアプリのビルド、起動

サンプルアプリは、以下の環境で動作するように作成されています。

動作対象バージョン Android2.2(API Level 8) 以降

サンプルアプリをビルドするためにはAndroid2.2(API Level 8) のSDKがインストールされている必要があります。
実行環境の準備を行い、サンプルプロジェクトをビルド・実行してみましょう。
準備ができていない場合はこちらを参考に準備を行ってください。

  • ビルドと実行
    画面左側ペインの「Package Explorer」タブを選択し、表示されているEclipseのプロジェクト「FileaccessSd」を右クリック→「Run As …」→「Android Application」でサンプルアプリを実行してください。

    サンプルアプリがビルドされ、ビルド完了後に自動的に起動します。
    以下の画面が表示され、電話帳に登録されている連絡先の一覧が表示されます。
    (電話帳に1件も登録がない場合は確認ダイアログが表示され、電話帳にテストデータを登録することもできます。)


    サンプルアプリが実行できない場合

    • プロジェクトに「!」が付いている場合
      この場合はサンプルアプリの動作対象バージョンのSDKがインストールされていないことが原因です。
      「FileaccessSd」プロジェクトフォルダの以下に「Android2.2」がありません。
      SDK Managerを起動して、動作対象バージョンのSDKをインストールしてください。
    • プロジェクトに「☓」が付いている場合
      この場合はソースコードにエラーがあることが原因です。
      プロジェクトフォルダ内の.javaファイル、xmlファイルのエラーとなっている箇所を修正してください。
  • データの保存
    サンプルアプリが起動すると登録されている電話番号の情報が一覧されます。
    「電話帳バックアップ」ボタンをタップすることで登録されている電話番号がSDカード上に保存されます。

攻撃アプリについて

攻撃アプリは以下のような想定で作成されています。

アプリ名 02電話帳バックアップスパイ
攻撃者の目的 攻撃者は、アプリがSDカード内のファイルに保存した電話帳の個人情報を盗み出し、情報を転売することを目的としています。
攻撃方法
  • 攻撃アプリのインストール・実行
    攻撃者が情報を盗み出すためには、攻撃アプリを利用者の端末にインストールする必要があります。利用者に攻撃アプリをインストールさせるには、「無害なアプリを装ってアプリを公開する」などの方法が考えられます。利用者に、「攻撃アプリ」を無害なアプリであると思い込ませ、端末にインストールして実行させます。
  • 攻撃実行
    攻撃アプリが情報を盗み出すためには、サンプルアプリ「02電話帳バックアップ」が作成するファイルのフルパスが必要です。
    ファイルのフルパスを調べるには、「アプリが出力する情報から類推する」、「サンプルアプリを解析する」などの方法が考えられます。
    フルパスが判明すれば、サンプルアプリ「02電話帳バックアップ」がSDカードに保存したファイルを、攻撃アプリによって読み取り、情報を外部に送信できます。
    なお、この攻撃アプリはサンプルなので、情報を外部に送信することはありません。
  • 情報の入手
    攻撃者は入手した個人情報を業者に売却することで利益を得ようとします。

攻撃アプリをダウンロード

では、攻撃者の立場に立って、実際に脆弱性のあるサンプルアプリが作成した情報を盗み出してみましょう。
まず、「攻撃アプリをダウンロード」ボタンをクリックし、「FileaccessSdSpyware.apk」をダウンロードしてください。

攻撃アプリをダウンロード

  • 攻撃アプリ(.apkファイル)のダウンロード先を指定する画面が表示されます。

  • 指定した位置に攻撃アプリのファイルと攻撃アプリのインストールを行うためのバッチファイルがダウンロードされます。
  • バッチファイルを実行すると、攻撃アプリが端末(またはエミュレータ)にインストールされます。

    攻撃アプリがインストールできない場合

    • 「'adb' は、内部コマンドまたは外部コマンド、操作可能なプログラムまたはバッチ ファイルとして認識されていません。」のメッセージが表示された場合
      この場合はadbコマンドのpathが設定されていないことが原因です。

      adbコマンドのpathの設定方法は以下の通りです。(Windows7の場合)
      • Windowsの「スタート」をクリック → 「コンピュータ」を右クリック → 「プロパティ」を選択 → 「システムの詳細設定」をクリック → 「環境変数」ボタンをクリック
        環境変数の設定画面が表示されます。「システム環境変数」の項目の中から「Path」を選択して、「編集」ボタンをクリックします。
      • 変数値にAndroid SDKフォルダのplatform-toolsフォルダのパスを追加
        「変数値」の最後の行にAndroid SDKを保存しているフォルダのplatform-toolsフォルダまでのパスを追加します。

        例)Android SDKをCドライブのルートに保存した場合
        C:\android-sdk-windows\platform-tools

        追加するパスの前に「;」が無い場合はそれも追加するようにしてください。
    • 「error: more than one device and emulator - waiting for device -」のメッセージが表示された場合
      この場合は複数の端末がPCに接続されていること、または、エミュレータが複数起動していることが原因です。

      接続する端末を取り外す、または、エミュレータを終了し、DDMSビューにデバイスが1つだけ表示される状態にしてください。

攻撃アプリを使用した攻撃方法

  • 攻撃アプリの実行
    それでは攻撃アプリを実行してみましょう。 端末(またはエミュレータ)のアプリ一覧画面(ドロワー)上で、攻撃アプリのアイコン「02電話帳バックアップスパイ」をタップし、攻撃アプリを起動します。

  • 実行結果の確認
    攻撃アプリを実行すると、「02電話帳バックアップ」アプリが保存した情報が画面に一覧表示されます。

この攻撃アプリはサンプルなので、情報を画面に表示するだけで外部へ送信することはありません。
通常、攻撃者は情報が盗み出されたことを利用者に気づかれないように外部へ送信するため、情報の不正利用が公にならない限り、利用者が被害に気づくことは困難です。