脆弱性体験

他のアプリに公開したServiceがPermissionで保護されていないことで生じる脆弱性が悪用された際の被害について、サンプルアプリを使って体験してみましょう。

サンプルアプリについて

サンプルアプリは、2本のアプリから構成され、以下の想定で作成されています。
アプリ名 05データバックアップ
アプリの概要 サーバへAndroid端末内のデータをバックアップするアプリを想定しています。
アプリを使用するメリット Android端末内のデータを外部に保存しておくことでデータの破損に備えることができるようになります。
主な動作 端末内のデータを複数のサーバに対して順番にバックアップします。また、クライアントアプリから指示があった場合には、任意のタイミングでバックアップを行います。
サンプルアプリの実装範囲 本アプリはサンプルのため、Serviceは起動しますが、実際にバックアップの処理はおこないません。
サンプルアプリ内の脆弱性 データのバックアップを行うServiceのアクセス権設定に不備があったため、他のアプリからアクセス可能であるという脆弱性が存在しています。


アプリ名 05データバックアップクライアント
アプリの概要 バックアップサービスに対して起動の指示を行います。
アプリを使用するメリット このアプリを使用することにより、利用者が任意のタイミングでバックアップ処理を起動することができるようになります。
主な動作 データのバックアップを行うServiceに対して、バックアップ先のサーバの情報とともにバックアップの開始を指示します。
サンプルアプリの実装範囲 実際にServiceに対してバックアップ処理の開始を指示します。
サンプルアプリ内の脆弱性 クライアント側には脆弱性は存在しません。

サンプルアプリのインポート

始めに、サンプルアプリをEclipseにインポートします。
「サンプルアプリをインポート」ボタンをクリックしてプロジェクト「ComponentService」、および「ComponentServiceClient」をワークスペースにインポートしてください。

サンプルアプリをインポート(ComponentService)

サンプルアプリをインポート(ComponentServiceClient)

サンプルアプリのビルド、起動

サンプルアプリは、以下の環境で動作するように作成されています。

動作対象バージョン Android2.2(API Level 8) 以降

サンプルアプリをビルドするためにはAndroid2.2(API Level 8) のSDKがインストールされている必要があります。
実行環境の準備を行い、サンプルプロジェクトをビルド・実行してみましょう。
準備ができていない場合はこちらを参考に準備を行ってください。

  • ビルドと実行
    画面左側ペインの「Package Explorer」タブを選択し、表示されているEclipseのプロジェクト「ComponentService」を右クリック→「Run As …」→「Android Application」でサンプルアプリ「05データバックアップ」を実行してください。
    実行方法

    サンプルアプリ「05データバックアップ」がビルドされ、ビルド完了後に自動的に起動します。

    起動画面
    (起動直後は、「稼動状態:停止中」と表示されます。)


    同様にComponentServiceClientを右クリック→「Run As …」→「Android Application」でサンプルアプリ「05データバックアップクライアント」を実行してください。

    サンプルアプリ「05データバックアップクライアント」がビルドされ、ビルド完了後に自動的に起動します。 サンプルアプリ「05データバックアップクライアント」が起動し、起動画面が表示されます。
    起動画面

    サンプルアプリが実行できない場合

    • プロジェクトに「!」が付いている場合
      この場合はサンプルアプリの動作対象バージョンのSDKがインストールされていないことが原因です。
      ComponentServiceClient」プロジェクトフォルダの以下に「Android2.2」がありません。
      SDK Managerを起動して、動作対象バージョンのSDKをインストールしてください。
    • プロジェクトに「☓」が付いている場合
      この場合はソースコードにエラーがあることが原因です。
      プロジェクトフォルダ内の.javaファイル、xmlファイルのエラーとなっている箇所を修正してください。
  • サンプルの操作
    「開始」ボタンをタップすると、バックアップ機能が開始します。
    起動画面
次は、不正なサーバへバックアップを行う攻撃アプリの説明です。

攻撃アプリについて

攻撃アプリは以下のような想定で作成されています。
アプリ名 05データバックアップスパイ
攻撃者の目的 攻撃者は、「05データバックアップ」アプリの脆弱性を悪用し、バックアップを行うServiceを起動します。さらにバックアップ先に攻撃者のサーバを追加します。
攻撃方法
  • 攻撃アプリのインストール・実行
    攻撃者が不正にデータバックアップを行うためには、攻撃アプリを利用者の端末にインストールする必要があります。利用者に攻撃アプリをインストールさせるには、「無害なアプリを装ってアプリを公開する」などの方法が考えられます。利用者に、「攻撃アプリ」を無害なアプリであると思い込ませ、端末にインストールして実行させます。
  • 攻撃アプリの実行
    攻撃アプリはIntentを発行し、「05データバックアップ」アプリのServiceを起動し、攻撃者のサーバにバックアップさせます。 この攻撃アプリはサンプルなので取得した情報を外部へ送信することはありません。

攻撃アプリをダウンロード

では、攻撃者の立場に立って、実際に脆弱性のあるサンプルアプリのバックアップ処理を起動してみましょう。
まず、「攻撃アプリをダウンロード」ボタンをクリックし、ComponentServiceSpyware.apkをダウンロードしてください。

攻撃アプリをダウンロード

  • 攻撃アプリ(.apkファイル)のダウンロード先を指定する画面が表示されます。

  • 指定した位置に攻撃アプリのファイルと攻撃アプリのインストールを行うためのバッチファイルがダウンロードされます。
  • バッチファイルを実行すると、攻撃アプリが端末(またはエミュレータ)にインストールされます。

    攻撃アプリがインストールできない場合

    • 「'adb' は、内部コマンドまたは外部コマンド、操作可能なプログラムまたはバッチ ファイルとして認識されていません。」のメッセージが表示された場合
      この場合はadbコマンドのpathが設定されていないことが原因です。

      adbコマンドのpathの設定方法は以下の通りです。(Windows7の場合)
      • Windowsの「スタート」をクリック → 「コンピュータ」を右クリック → 「プロパティ」を選択 → 「システムの詳細設定」をクリック → 「環境変数」ボタンをクリック
        環境変数の設定画面が表示されます。「システム環境変数」の項目の中から「Path」を選択して、「編集」ボタンをクリックします。
      • 変数値にAndroid SDKフォルダのplatform-toolsフォルダのパスを追加
        「変数値」の最後の行にAndroid SDKを保存しているフォルダのplatform-toolsフォルダまでのパスを追加します。

        例)Android SDKをCドライブのルートに保存した場合
        C:\android-sdk-windows\platform-tools

        追加するパスの前に「;」が無い場合はそれも追加するようにしてください。
    • 「error: more than one device and emulator - waiting for device -」のメッセージが表示された場合
      この場合は複数の端末がPCに接続されていること、または、エミュレータが複数起動していることが原因です。

      接続する端末を取り外す、または、エミュレータを終了し、DDMSビューにデバイスが1つだけ表示される状態にしてください。

攻撃アプリを使用した攻撃方法

  • 攻撃アプリの実行
    それでは攻撃アプリを実行してみましょう。 端末(またはエミュレータ)のアプリ一覧画面(ドロワー)上で、攻撃アプリのアイコン「05データバックアップスパイ」をタップし、攻撃アプリを起動します。
    攻撃アプリを実行
  • 実行結果の確認
    攻撃アプリを実行すると、URL入力画面が表示されます。
    「強制バックアップ」ボタンをタップすることにより、脆弱性アプリのServiceのバックアップ機能を起動し、指定したURLにバックアップ処理を行います。
    入力したURLへバックアップデータを送信したと仮定し、「(入力したURL)」に情報を送信しました」とメッセージを表示します。
    攻撃アプリを実行

この攻撃アプリは、サンプルなので通知を表示するだけで外部へ送信することはありません。
通常、攻撃者は情報が盗み出されたことを利用者に気づかれないように外部へ送信するため、情報の不正利用が公にならない限り、利用者が被害に気づくことは困難です。