脆弱性体験

不適切なログ出力による脆弱性が悪用された場合の被害について、サンプルアプリを使って体験してみましょう。

サンプルアプリについて

サンプルアプリは、以下の想定で作成されています。
アプリ名 08オンライン銀行
アプリの概要 銀行のオンラインバンキングシステムにログインし、口座の残高照会、振り込み処理等を行うアプリを想定しています。
アプリを使用するメリット 利用者はこのアプリを利用する事で、実店舗(ATM設置場所)に行く事なく、Android端末を使って自分の口座を操作できるようになります。
主な動作 最初に認証画面を表示して利用者の契約番号、ログインパスワードの入力を得ます。 その後、入力された値を使って認証を行い、認証完了後に取引メニュー画面に遷移して自分の口座とやり取りを行います。
サンプルアプリの実装範囲 本アプリはサンプルのため、契約番号、ログインパスワードの入力を受け取りますが、入力された値に対するチェック、および認証処理を行いません。認証を通過した想定で次の取引メニュー画面へ遷移します。
サンプルアプリ内の脆弱性 アプリの開発者は入力された情報が正しく取得できているかどうかを確認する目的で、契約番号とログインパスワードをログに出力していました。そしてログ出力部分を削除せず、そのままリリースしてしまったという想定です。
そのため、Android4.1以前の環境ではREAD_LOGSの権限があるアプリを使用することにより、契約番号、ログインパスワードを読み取られる可能性がありました。

サンプルアプリのインポート

始めに、サンプルアプリをEclipseにインポートします。
「サンプルアプリをインポート」ボタンをクリックしてプロジェクト「OutputLog」をワークスペースにインポートしてください。

サンプルアプリをインポート

サンプルアプリのビルド、起動

サンプルアプリは、以下の環境で動作するように作成されています。

動作対象バージョン Android2.2(API Level 8) ~ Android4.1(API Level 16)

サンプルアプリをビルドするためにはAndroid2.2(API Level 8) のSDKがインストールされている必要があります。
実行環境の準備を行い、サンプルプロジェクトをビルド・実行してみましょう。
準備ができていない場合はこちらを参考に準備を行ってください。

  • ビルドと実行
    画面左側ペインの「Package Explorer」タブを選択し、表示されているEclipseのプロジェクト「OutputLog」を右クリック→「Run As …」→「Android Application」でサンプルアプリを実行してください。

    サンプルアプリがビルドされ、ビルド完了後に自動的に起動します。
    以下の画面が表示されます。


    サンプルアプリが実行できない場合

    • プロジェクトに「!」が付いている場合
      この場合はサンプルアプリの動作対象バージョンのSDKがインストールされていないことが原因です。
      「OutputLog」プロジェクトフォルダの以下に「Android2.2」がありません。
      SDK Managerを起動して、動作対象バージョンのSDKをインストールしてください。
    • プロジェクトに「☓」が付いている場合
      この場合はソースコードにエラーがあることが原因です。
      プロジェクトフォルダ内の.javaファイル、xmlファイルのエラーとなっている箇所を修正してください。
  • 契約番号とログインパスワードを入力します。
    契約番号とパスワードを入力後「ログイン」ボタンをタップします。
    (本アプリはサンプルのため、契約番号とログインパスワードは任意の文字列で構いません。)
    取引メニュー画面が表示されます。
次は、出力されたログ情報を盗み出す攻撃アプリの説明です。

攻撃アプリについて

攻撃アプリは以下のような想定で作成されています。

アプリ名 08オンライン銀行スパイ
攻撃者の目的 攻撃者は、「08オンライン銀行」アプリが出力するログから契約番号、ログインパスワードを入手し、正規の利用者になりすますことを目的としています。
攻撃方法
  • 攻撃アプリのインストール・実行
    攻撃者が情報を盗み出すためには、攻撃アプリを利用者の端末にインストールする必要があります。利用者に攻撃アプリをインストールさせるには、「無害なアプリを装ってアプリを公開する」などの方法が考えられます。利用者に、「攻撃アプリ」を無害なアプリであると思い込ませ、端末にインストールして実行させます。
  • 攻撃実行
    攻撃アプリは「08オンライン銀行」アプリが出力したログを読み取ります。この攻撃アプリはサンプルなので取得した情報を外部へ送信することはありません。取得した情報を表示します。
  • 情報の入手
    攻撃者は入手した契約番号とログインパスワードを記録します。そして、攻撃者自身の端末で「08オンライン銀行」アプリを動作させ、入手した契約番号、ログインパスワードを使って正規の利用者になりまして銀行のオンラインバンキングシステムを利用します。

攻撃アプリをダウンロード

では、攻撃者の立場に立って、実際に脆弱性のあるサンプルアプリが作成した情報を盗み出してみましょう。
まず、「攻撃アプリをダウンロード」ボタンをクリックし、「OutputLogSpyware.apk」をダウンロードしてください。

攻撃アプリをダウンロード

  • 攻撃アプリ(.apkファイル)のダウンロード先を指定する画面が表示されます。

  • 指定した位置に攻撃アプリのファイルと攻撃アプリのインストールを行うためのバッチファイルがダウンロードされます。
  • バッチファイルを実行すると、攻撃アプリが端末(またはエミュレータ)にインストールされます。
    *不適切なログ出力による脆弱性の問題はAndroid OSのバージョンに依存する部分があるため、Android4.1以前の端末(またはエミュレータ)にインストールしてください。

    攻撃アプリがインストールできない場合

    • 「'adb' は、内部コマンドまたは外部コマンド、操作可能なプログラムまたはバッチ ファイルとして認識されていません。」のメッセージが表示された場合
      この場合はadbコマンドのpathが設定されていないことが原因です。

      adbコマンドのpathの設定方法は以下の通りです。(Windows7の場合)
      • Windowsの「スタート」をクリック → 「コンピュータ」を右クリック → 「プロパティ」を選択 → 「システムの詳細設定」をクリック → 「環境変数」ボタンをクリック
        環境変数の設定画面が表示されます。「システム環境変数」の項目の中から「Path」を選択して、「編集」ボタンをクリックします。
      • 変数値にAndroid SDKフォルダのplatform-toolsフォルダのパスを追加
        「変数値」の最後の行にAndroid SDKを保存しているフォルダのplatform-toolsフォルダまでのパスを追加します。

        例)Android SDKをCドライブのルートに保存した場合
        C:\android-sdk-windows\platform-tools

        追加するパスの前に「;」が無い場合はそれも追加するようにしてください。
    • 「error: more than one device and emulator - waiting for device -」のメッセージが表示された場合
      この場合は複数の端末がPCに接続されていること、または、エミュレータが複数起動していることが原因です。

      接続する端末を取り外す、または、エミュレータを終了し、DDMSビューにデバイスが1つだけ表示される状態にしてください。

攻撃アプリを使用した攻撃方法

  • 攻撃アプリの実行
    それでは攻撃アプリを実行してみましょう。 端末(またはエミュレータ)のアプリ一覧画面(ドロワー)上で、攻撃アプリのアイコン「08オンライン銀行スパイ」をタップし、攻撃アプリを起動します。

  • 実行結果の確認
    攻撃アプリを実行すると、ログ情報が読み込まれ、画面に一覧表示されます。
この攻撃アプリはサンプルなので、情報を画面に表示するだけで外部へ送信することはありません。
通常、攻撃者は情報が盗み出されたことを利用者に気づかれないように外部へ送信するため、情報の不正利用が公にならない限り、利用者が被害に気づくことは困難です。