脆弱性体験

JavascriptInterfaceの理解不足による脆弱性を悪用された場合の被害について、サンプルアプリを使って体験してみましょう。

サンプルアプリについて

サンプルアプリは、以下の想定で作成されています。
アプリ名 09社内Webログイン
アプリの概要 Android端末から自社のWebシステムを利用可能にするアプリです。
アプリを使用するメリット 利用者はこのアプリを利用する事で、場所を問わずに自社のWebシステムにログインし、利用することができます。
主な動作 Webシステムとアプリの連携をスムーズに行えるようにするため、AndroidクライアントアプリではJavascriptInterfaceを有効にしています。 サーバ側のログイン画面では、画面表示時にJavaScriptを実行し、JavascriptInterface経由で端末の電話番号を取得し、正規の利用者であるかの確認を行います。また、それをログイン後の画面に表示します。
サンプルアプリの実装範囲 アプリ起動後に社内Webシステムへのログイン画面を表示します。
本アプリはサンプルのため、ID、パスワードの入力を受け取りますが、入力された値に対するチェック、および認証処理を行いません。
サンプルアプリ内の脆弱性 自社Webシステムのサイトを表示する前提でIntentから受け取ったURLをWebViewに表示するよう実装していましたが、URLのチェックを行っていなかったため、JavascriptInterfaceが有効なWebViewが任意のURLにアクセス可能になっています。 JavascriptInterface経由で呼び出し可能なメソッドで重要な処理を行っており、細工されたJavaScriptを含むWebサイトを表示した場合に、アプリの機能が悪用されてしまう脆弱性が存在しています。

サンプルアプリのインポート

サンプルアプリをEclipseにインポートします。
「サンプルアプリをインポート」ボタンをクリックしてプロジェクトJavascriptInterfaceをワークスペースにインポートしてください。

サンプルアプリをインポート

サンプルアプリのビルド、起動

サンプルアプリは、以下の環境で動作するように作成されています。

動作対象バージョン Android2.2(API Level 8) ~ Android4.1.2(API Level 16)

サンプルアプリをビルドするためにはAndroid2.2(API Level 8)以降のSDKがインストールされている必要があります。
実行環境の準備を行い、サンプルプロジェクトをビルド・実行してみましょう。
準備ができていない場合はこちらを参考に準備を行ってください。

  • ビルドと実行
    画面左側ペインの「Package Explorer」タブを選択し、表示されているEclipseのプロジェクトJavascriptInterfaceを右クリック→「Run As …」→「Android Application」でサンプルアプリを実行してください。

    サンプルアプリがビルドされ、ビルド完了後に自動的に起動します。
    以下の画面が表示されます。

    (本アプリはサンプルのため、認証処理を実装していません。)

    サンプルアプリが実行できない場合

    • プロジェクトに「!」が付いている場合
      この場合はサンプルアプリの動作対象バージョンのSDKがインストールされていないことが原因です。
      JavascriptInterface」プロジェクトフォルダの以下に「Android2.2」がありません。
      SDK Managerを起動して、動作対象バージョンのSDKをインストールしてください。
    • プロジェクトに「☓」が付いている場合
      この場合はソースコードにエラーがあることが原因です。
      プロジェクトフォルダ内の.javaファイル、xmlファイルのエラーとなっている箇所を修正してください。

次は、端末が持つ重要な情報を盗み出す攻撃アプリの説明です。

攻撃アプリについて

攻撃アプリは以下のような想定で作成されています。
アプリ名 09社内Webログインスパイ
攻撃者の目的 攻撃者は「社内Webログインアプリ」の脆弱性を悪用し、端末が持つ重要な情報の窃取を目的としてします。
攻撃方法
  • 攻撃アプリのインストール・実行
    攻撃者が情報を盗み出すためには、攻撃アプリを利用者の端末にインストールする必要があります。利用者に攻撃アプリをインストールさせるには、「無害なアプリを装ってアプリを公開する」などの方法が考えられます。利用者に、「攻撃アプリ」を無害なアプリであると思い込ませ、端末にインストールして実行させます。
  • 攻撃アプリの実行
    攻撃アプリは「09社内Webログイン」アプリに対し、細工されたJavaScriptを含んだHTMLファイルを表示させるようIntentを発行します。この攻撃アプリはサンプルなので取得した情報を外部へ送信することはありません。取得した情報を表示します。
  • 入手情報の悪用
    攻撃者は入手した端末内の情報を外部のサーバに送信し、保存します。そしてその情報を名簿業者などへ売却します。

攻撃アプリをダウンロード

では、攻撃者の立場に立って、実際に脆弱性のあるサンプルアプリが作成した情報を盗み出してみましょう。
まず、「攻撃アプリをダウンロード」ボタンをクリックし、JavascriptInterfaceSpyware.apkをダウンロードしてください。

攻撃アプリをダウンロード

  • 攻撃アプリ(.apkファイル)のダウンロード先を指定する画面が表示されます。

  • 指定した位置に攻撃アプリのファイルと攻撃アプリのインストールを行うためのバッチファイルがダウンロードされます。
  • バッチファイルを実行すると、攻撃アプリが端末(またはエミュレータ)にインストールされます。
    ※WebView#addJavascriptInterface()の脆弱性にはAndroid OSのバージョンに依存する部分があるため、Android4.1.2以前の端末(またはエミュレータ)にインストールしてください。

    攻撃アプリがインストールできない場合

    • 「'adb' は、内部コマンドまたは外部コマンド、操作可能なプログラムまたはバッチ ファイルとして認識されていません。」のメッセージが表示された場合
      この場合はadbコマンドのpathが設定されていないことが原因です。

      adbコマンドのpathの設定方法は以下の通りです。(Windows7の場合)
      • Windowsの「スタート」をクリック → 「コンピュータ」を右クリック → 「プロパティ」を選択 → 「システムの詳細設定」をクリック → 「環境変数」ボタンをクリック
        環境変数の設定画面が表示されます。「システム環境変数」の項目の中から「Path」を選択して、「編集」ボタンをクリックします。
      • 変数値にAndroid SDKフォルダのplatform-toolsフォルダのパスを追加
        「変数値」の最後の行にAndroid SDKを保存しているフォルダのplatform-toolsフォルダまでのパスを追加します。

        例)Android SDKをCドライブのルートに保存した場合
        C:\android-sdk-windows\platform-tools

        追加するパスの前に「;」が無い場合はそれも追加するようにしてください。
    • 「error: more than one device and emulator - waiting for device -」のメッセージが表示された場合
      この場合は複数の端末がPCに接続されていること、または、エミュレータが複数起動していることが原因です。

      接続する端末を取り外す、または、エミュレータを終了し、DDMSビューにデバイスが1つだけ表示される状態にしてください。

攻撃アプリを使用した攻撃方法

  • 攻撃アプリの実行
    それでは攻撃アプリを実行してみましょう。 端末(またはエミュレータ)のアプリ一覧画面(ドロワー)上で、攻撃アプリのアイコン「09社内Webログインスパイ」をタップし、攻撃アプリを起動します。
  • 実行結果の確認
    攻撃アプリを実行すると、端末内の情報が画面に表示されます。
    攻撃アプリは実行時に細工されたHTMLファイルを端末に書き込み、それをサンプルアプリに読み込ませるようにIntentを発行しています。
    サンプルアプリに読み込まれたHTMLファイルに記述されたJavaScriptが、JavascriptInterface経由でサンプルアプリの機能を悪用し、電話番号を取得しています。

この攻撃アプリはサンプルなので、情報を画面に表示するだけで外部へ送信することはありません。
通常、攻撃者は情報が盗み出されたことを利用者に気づかれないように外部へ送信するため、情報の不正利用が公にならない限り、利用者が被害に気づくことは困難です。