〜 バックストーリー 〜

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 どこかに魔力がある者達を惹きつける土地があるらしい。
事実そこには魔法使いや魔物、精霊などの様々な存在が集まっていた。
 名前なんて無い未開の地だったのだが、節操無く色々な連中が混ざり集まる様を見た住民の誰かが
<ミキサディア>という名前を付けて以来、ここはそう呼ばれるようになっていった。

 時代が流れ、ミキサディアには魔力を持たない普通の人間や動物も増えていった。
とくれば、魔法を使える者が使えない者にその力を教授し
魔法を使えるようにしてあげる。そんな文化交流も自然と生まれていった。
<ミキサディア魔法学院>という、分かりやすい名前の学び舎が作られたのもそんな時代の中である。
 中には手に入れた力を悪用する者もいたのかもしれないが、割と秩序は守られているらしく
ミキサディア出身の者が大きな問題を発生させる事は無く、更に時代は流れていった。

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 さて、そんな長い歴史を持つミキサディア魔法学院に現在通っている生徒で、
格好良いんだか悪いんだか分からない二つ名を付けられている
赤雷のお気楽魔女、リナ・ホークレインはいつも暇を持て余していた。
が、ある日の晩の事。自宅で熟睡していたリナは、どこからか感じる強い魔力によって目を覚ました。

 リナ「もー、誰よ?こんな夜遅くに物騒な魔力撒き散らしている奴は。

 などと愚痴をこぼしながら、安眠妨害をするこの魔力の出所を調べ始めた。
 優れた魔法使いは、散布した少量の魔力からでも魔力の発生位置をある程度探る事が出来る。
その気になれば、どんな魔法を使ったのかも分かるのである。

 リナ「……学院の方からか。誰だか知らないけど
    わざわざ『こんな面白い事』するなんて、放って置くワケにはいかないわね。

 そんな独り言をつぶやきながらも、気付けば彼女は好奇心の赴くままに
真夜中の学院を目指して、自宅を飛び出していた。
 ついさっきまで眠かった事など、すでに忘れてしまったようだ。

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 ミキサディア魔法学院の校舎は非常に広大だった。
どこにどんな施設があるのか生徒はもちろん、教師すらも把握し切れていないほどである。
それに比例して様々な魔法を使う者が当然いるのだが、その夜発動された魔法はあまりに強大だった。

 物質の空間転移魔法。呼んで字の如く、荷物や人を別の場所へ瞬時に移動させる魔法だが、
学院内に突如転移された<それ>は、並の魔法使いでは到底扱い切れない大きさだったのである。
 そして、それを転移させるために使われた魔力の残りカスが散布した。
残りカスといえども、その膨大な魔力は周辺の者達を惹きつけるのに十分であった。

 いつの間にか学院内には、大量の妖精が闊歩していた。
 もっとも実害は特に無い。周辺の魔力が薄まれば、皆自分の住処に帰っていくからだ。
突然沸いた強い魔力によって興奮状態になり、ちょっとしたお祭り騒ぎになっているだけなのである。
それを知っている上層の教師達は、特に動こうともせず朝まで自宅で待つ事にしていた。
 だが、どこのご時世も昼夜逆転の生活を送っている者はいるのである。この学院も例外ではない。
妖精達の生態を良く知らない生徒や一部の教師達にとってはえらい事態である。

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 真夜中のミキサディア魔法学院は、混沌とした状態に陥っていた。


 これまでミキサディアに惹かれ、集まってきた者達と同じように


 誰に誘われるでもなくこの地にやってきた、一人の少女の気まぐれによって。



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