〜 バックストーリー 〜

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 どこかに魔力がある者達を惹きつける土地がある。
 色々な種族が集まり、混ざる様を見た誰かが<ミキサディア>と名付け、
いつしかその名前が定着していった。

 そんなミキサディアも時代が進み、魔法を主流としつつ、
機械的な文化も織り交ぜられるという、益々統一感の無い土地になっていった。
しかし、何故かバランスが崩れる事は無く、平和な日々が続いていた。

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 最近人々の間でとある事件が話題になっている。
真夜中になると、どこからともなく誰かの歌が聞こえてくるのだと言う。
その歌声はとても綺麗だったが、あまり歓迎されるものではなかった。
理由は実に単純。その歌のせいで夜中に目が覚めてしまい、安眠出来ないからである。

 リナ「ああ、毎晩毎晩うるさいわねぇ。寝不足で体を壊したらどうしてくれるのかしら。

 山奥に住んでいるリナ・ホークレインも、この歌声には参っていた。
 普段はお気楽者な彼女も、連日続く安眠妨害に苛立ちを隠せないらしく、
お得意の魔力源探知魔法を使って、原因を突き止める事にした。

 リナ「……さて、早速犯人をとっちめに行きますか。
    人間健康が一番。昼夜逆転生活なんて私はごめんだわ。

 ブツブツと文句を言いながらも、足取りは軽かった。
 ミキサディア全土に歌を撒き散らすなんて只者ではない。きっと面白い奴に会えるはずだ。

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 ミキサディアには魔法を学ぶための学院があるのだが、
そこに通う者達にとって、この歌の問題は割と深刻であった。
 魔法を使うという事は、ものにもよるがそれなりに体力や精神力を要するのである。
寝不足で体調を崩してしまえば、満足に魔法を扱う事が出来なくなってしまう。
この状態が連日続くようならば、魔法学院という施設そのものが機能しなくなるだろう。

 ティアナ「これは大事件ですね……。見て見ぬふりは出来ないわ。

 学院の生徒であるティアナ・フォーエルは、持ち前の正義感に燃えていた。
 教師達はもうしばらく様子見の姿勢を崩さないはず。原因が分からない以上慎重になりたいはずだ。
だが、それでは時間がもったいない。1日でも対策が遅れれば、
それだけ寝不足で体を壊す者が増えてしまう。ティアナにはそれが許せなかった。

 ティアナ「とりあえず方角はある程度調べたし、
      後は考えるより行動に移した方が早いわ!

 果たして自分なんかの手に負える相手なのか。それを考えると少し足が震えたが、
誰かが何とかしてくれるのを待っていてはダメだ。そう言い聞かせて飛び立った。

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 様々な場所に迷惑を与えている謎の歌声だが、例外もいる。
すなわち熟睡していて、そもそも歌に気付いていない者である。

 セニア 「あの、私は姫様に仕える事が生き甲斐なので、お暇を頂いても何もすることが……。

 夢遊城の主に仕えている、セニア・トランシルバがまさにそれである。
現在彼女は、城の主であるルヴィア・ハートリアスに呼び出されている。

 ルヴィア「うん、だからついでにあの歌の事も調べて来てほしいかなと。
      あなたは気付いていないみたいだけど、あれのせいで夜眠れないのよ。

 セニア 「とにかくその歌を歌っている奴を何とかすれば良いのですね?
      では早速出掛けてまいります!

 ルヴィア「あら、詳しい事何も聞かずに行っちゃった。
      ……年頃だから、たまには外で遊んで来てほしいだけなんですけどねぇ。

 大体こんなやり取りがこの二人の日常である。
ミキサディア全土に及ぶ今回の異変に晒されても、割とマイペースな人達であった。

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 それは確かに綺麗な歌だった。


 だが、何の歌なのかは分からなかった。


 聞かされている者達はおろか、歌っている本人すらも。


 それでもその先に何かがあるだろうと信じて、彼女は歌い続ける。



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