【 「懴悔滅罪」とはどういうことか 】
懴悔とは“さんげ”と読み、“ざんげ”ではありません。何か悪い事をし
たので、どうもすみません、と謝ることではありません。懴悔ということは
自分(人間一人一人)が創造主であることの裏返しです。
自分が創造主であり、善も悪も自分が造り、その結果が現在の自分に現れ
ている。自分の不幸を神のせいにせず、生まれ変わり死に変わり、一切が自
分の責任であることを認め、現在の自分をより良い方に変えていくことを
「さんげ」と言います。
「私は何も悪いことをした覚えがないから、サンゲは必要ない」と思われ
るかもしれませんが、例えば、今生きていて、人間関係で相手を憎むとか、
恨むとか、そういう悪感情を持ったことありませんか。それを類推していけ
ば、過去世に、食べ物にも事欠くような時代に、経文(行法経)に「身とは
殺・盗・婬、心とは諸の不善を念ずる、…」とあるように、「殺・盗・婬」
をしてきた自分ではないかなということが想像つくと思います。
その過去世の結果が今の自分、今の生活を作っているのですから、その懴
悔です。懴悔すれば滅罪になります。自分を覆っている曇り…業が取れ、自
分がもともと持っている光が出てきます。つまり、信仰とは自分を立派にす
る懴悔です。(このことを大荘厳懴悔道といっています。)
仮に人間の輪廻転生を認めないとしても、日々生きていくのに、人間は他
の生命(動物、植物等)の犠牲の上に生きていますから、そういう意味でも
懴悔は必要です。この罪の相のない懴悔を「無罪相懴悔」と言い、この懴悔
観は思い上がりを防ぎ、物事の実相を知るのに大事な観点です。
これに対し、現世で犯した罪を詫びるのは「罪相懴悔」です。
懴悔の結果、自分の生活から病・貧・争が消えていくので懴悔滅罪と言い
ます。
懴悔というと、普通は「ざんげ」と読んで、罪を告白して許しを請う意味
ですが、ここでは「さんげ」と読みます。「さんげ」とは、神仏を拝み倒し
て助けてもらうということではなく、不幸の原因を自分の責任とし、積極的
に自分を改善していくことによって、具体的には「仏説による父母孝養・
師長恭敬」の行践によって、より良き人生を創造していくということです。
自分自身の反省、さんげを忘れては、いくら神仏を拝んでも、善も悪もそ
の創造主は自分であることを忘れていることになるので、滅罪はできません。
つまり、神仏のご加護を得ることはできません。
自分の責任を認めて反省、懴悔すれば、必ず滅罪します。キリスト教では、
罪は告白すれば半減すると言われますが、仏教では懴悔すれば、朝露が太陽
にあたれば消えてなくなるように、「懴悔滅罪の大法」という太陽によっ
て、業報不同なので一概に言えませんが、いつかは消えてなくなります。
今世の自分は貧乏で、病気や様々な問題に苦しむのも、過去世の「身とは
殺・盗・婬」の自分を思えば無理はない。過去世に自分が作った悪業が今世
に現れて来ているのだから、今世はその反対の事、即ち、利己主義ではなく
生命の真のあり方に合致した生き方をしよう。そう決意した時に、全てが良
い方に回転します。
罪業は自分で作ってきたものなので、自分で消すことができるのです。神
仏を拝んだから罪が消えるのではなく、人間が懴悔、努力するからこそ、そ
こに神仏の御力が現れて、滅罪するのです。
懴悔は自分の精神を神仏に近づけ、諸仏・菩薩に守護される唯一の行法で
す。
『行法経』には「佛、阿難に告げたまわく、未来世(現代のこと)に於て、
若し此の如き懴悔の法を修習することあらん時、當に知るべし、此の人は慚
愧の服を著、諸佛に護助せられ、久しからずして當に阿耨多羅三藐三菩提
(全知全能)を成ずべし」とあり、同じく行法経に「佛、阿難に告げたまわく、
我賢劫の諸の菩薩及び十方の佛と、大乗眞の實義を思ふに因るが故に、百萬
億阿僧祇劫(非常に長い間)の生死の罪を除却しき。此の勝妙の懴悔の法に
因るが故に、今十方に於て各佛となることを得たり」(懴悔の法によって佛
になることができた)とあります。また、「懴悔を行ぜん者は、……悪相及
び悪業報を見じ」ともあります。
(注…「慚愧の服を著…ざんきのふくをき」とは、自分と他の人と比べてみ
て、菩薩方と比べてみて、友人と比べてみて、自分はこれで良いとか悪いと
か、内省することをいう。)
懴悔の法は諸仏、諸大菩薩をつくる因であり、懴悔を行ずる人は仏のみ子
なので、すでに仏になられた方々が、父母がその子を守るように加護なさる
のです。
このように懴悔ということが重要なのは、自分が主体だからです。その自
分はどう生活するべきか、即ち、この懴悔の実践が「仏説による父母孝養・
師長恭敬」です。
☆ 阿難という人は釈尊の侍者で、釈迦十大弟子の一人です。阿難は「全身
耳」といわれた人で、今でいうテープレコーダーの機能を持った人です。
前のページへ戻る このページのトップへ 次のページへ