フリーソフトウェアシンセサイザ ”Astra"
取扱説明書 兼 同意書

 この度は拙作ソフトウェア”Astra"をダウンロードいただき、誠にありがとうございます。商業利用可のフリーウェアですので、どうぞ奮ってご活用ください。

 本作ソフトウェアは、本体である「選択的倍音加減算合成方式(※独自アルゴリズム)」の波形エディタ"Astra version0.0(以後「Astra本体」)"と、Astra本体で作成した波形を元に、フィルタなどを使って音色の作成・及びシーケンサによる演奏データの作成・演奏サウンドのレンダリングを行う"Astra sound editor(以後「ASE」)"の二つから成る複合ソフトウェアです。個人の趣味から企業活動まで、DTM、ミュージシャンとしての活動、html用効果音の作成など、様々な用途にお使いいただけます。

 まずは、無圧縮のwavデータで、性能をお確かめください。Astraのみで作成した(※Audacityでミックス)、ノーエフェクト(エフェクトなし)の演奏データサンプルです。
 


 特徴をざっと挙げると、以下のようになります。

フリーソフトウェアシンセサイザ"Astra"スペック表
ソフトウェアの使用ライセンス形態; フリーウェア、商用・非商用問わず利用可(※同意事項は後述)
波形合成方式; 選択的倍音加減算合成方式
同時発音数; 無制限
発音方式; レンダリングによる非リアルタイム方式(計算によるPCM・WAV出力(DTM専用))
作成されたWAVデータのS/N比; ∞(無限大、原理上ノイズ無し(理論値))
MIDI対応; 無し。 
サウンドのクオリティ;  サンプリングレート:44.1kHz
ビット長:16ビット
(CDと同じ) 
システム要件; ・OS;Windows10(Windows10 Home(32bit)で動作確認済、他のバージョンでは動作未確認)
※「Visual Studio 2017 の Microsoft Visual C++ 再頒布可能パッケージ」のインストールが必要です。
マイクロソフト社ウェブサイトのダウンロードページURL; https://www.visualstudio.com/ja/downloads/?q=#other-ja
("x86"と書かれたラジオボタンをクリックしてダウンロード・インストールしてください。)
・必要空きメモリ;
  ・Astra本体;700MBytes以上(1GBytes以上推奨)
  ・ASE;50MBytes以上(100MBytes以上推奨)
・必要HDD空き容量;20MBytes程度(※インストール不要) 
その他; VSTや外部DLL不要、スタンドアロンで動作します。 

 〜寄付のお願い〜

 Astraは、勿論完全無料でお使いただけるソフトウェアですが、今後の研究と開発のために、資金が必要なのも事実です。そこで、はばかりながら、ユーザーの皆様におかれましては、できるだけ寄付にご協力いただけますとありがたいです。

 一口2〜3千円を目安に、下記口座へ寄付金をお寄せください。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 銀行名;百五銀行 伊勢支店
 (店番;701)
 科目;普通預金
 口座番号;651171
 名義;ミモリ モトキ

 作者ウェブサイトURL;http://www.geocities.jp/motoki_mimori/


 フリーソフトウェアシンセサイザ”Astra"使用同意事項

 Astraをご利用いただくにあたり、下記の1)〜4)の同意事項のすべてにご同意いただく必要があります。もしご同意いただけない場合には、Astraをご利用にはならないようお願いいたします。Astraを使用された時点で、四つの同意事項のすべてにご同意いただけたものとみなさせていただきます。

 尚、ここにいう"Astra"とは、Astra本体("Astra version0.0")とASE("Astra sound editor")を指し、「ユーザー様」はAstraをコンピュータ上で使用される全ての方を指します。

フリーソフトウェアシンセサイザ"Astra"使用同意事項
1).ユーザー様がAstraをご利用されるにあたり、商用・非商用の別はこれを問いません。公序良俗に反しない範囲において、いかなる用途にも無料でお使いいただけます。

2).Astraそのものの改造及び再配布は、ご遠慮ください。再配布される場合には、Astraが配布されているURLを配布していただくようお願い申し上げます。

3).Astraを利用してユーザー様が独自に作成されたデータ(拡張子".astrawf"".astrasf"".astrasqf"".wav"を持つ四種類のデータ)の著作権は、原則として作成直後の段階においてそれらを作成されたユーザー様に帰属するものとします。尚、Astraの".exe"ファイルと共に圧縮されて配布されているデータ(波形データ、音色データ、演奏データサンプルなど)の著作権はAstra作者に帰属しますが、ユーザー様はこれらを無償且つ制限なく使用することができ、また、これらの一部または全部を変更したデータの著作権は、ユーザー様に帰属するものとします。

4).ユーザー様がAstraを使用し、その結果として生じたいかなる損害に対しても、Astraの作者及び配布者は賠償などの責任を一切負いません。






 フリーソフトウェアシンセサイザ"Astra"取扱説明書

§1.1 Astraとは?


 Astraの設計コンセプトは、「フーリエ級数を用いて波形合成ができないか?」という素朴なアイデアに基づいています。

 「フーリエ級数」とは、大学などで習う概念ですが、全ての周期関数はサインとコサインで表現できるという数学上の概念です。

 たとえば、ノコギリ波形をフーリエ級数展開すると、基本となるサイン波に対し、その二倍、三倍、といった、基本となるサイン波のn倍の周期を持つサイン波の振幅を1/n倍して足し合わせたものになります。

 Astraでは、周期関数が持つこの特徴を利用し、基本となるサイン波の整数倍の周期を持つ「倍音」となるサイン波を最大100倍音まで足し合わせることで、様々な波形を生み出すことができます。

 このようにして作られた波形を、アナログシンセサイザの時代から受け継がれているエンベロープと呼ばれる時間変化設定(いわゆるADSR、Attack、Decay、Sustain、Release)によって音色として加工し、こうして作られた音色をシーケンサーのプログラム通りに計算して演奏データを作成し、出力する、というのが、Astraの設計コンセプトです。

 ですので、Astraにはエフェクタもミキサーもついていません。音作りにおけるAstraの仕事は、「エフェクタやミキサーにかけるための基本となる演奏データ」のWAV出力を以て完了します。

 このように、Astraを用いた音作りは、終始一貫してコンピュータによる計算で行われます。同時発音数に制限がないのもこれが理由です。そのため、Astraで作成したWAVデータは、ノイズが入り込む余地がありません。「完璧な音が出せる」というのが、フリーウェアであるAstraを商用で利用する価値がある最大の理由です。


・Astraを用いた楽曲作成の流れ;
 Astra本体で波形を作成→ASEに読み込み、音色を作成→シーケンサーに演奏データを入力→レンダリング→出来上がったPCMデータを拡張子".WAV"ファイルとして出力(→エフェクタで加工)→Audacity等のソフトウェアを用いて編集(ミキシング)


§1.2 Astra version0.0(Astra本体)について


 Astra本体は、言ってしまえば単なる波形合成アプリです。大量のメモリを消費するのは、音を試聴するための計算を高速化するために、あらかじめ100倍音すべての波形データを数秒分配列としてストックする設計になっているためです。

 Astra本体の特徴を一言で言い表せば、「波形が表示される」という点です。

 今から3〜40年ほど昔、”FAIRLIGHT”という、当時究極と呼ばれた伝説のシンセサイザがありました。

 実を言いますと、Astraは、このフェアライトにあこがれる作者が、フェアライトを目標にして作ったソフトウェアシンセサイザです。

 Astraの音色作成メソッドの本質は、フーリエ級数展開にあります。1から100までの倍音の振幅をそれぞれについて設定することにより、様々な波形を生み出します。波形を確認しながら波形編集作業を進められるという、視覚的に音を見ながら作業ができるのは、フェアライトに少しでも近づきたいという作者の夢が表れたAstraの特徴です。

 また、Astra本体では、いわゆる”A440”を基準として、4Hzのデチューンを予め音にかけています。こうすることで、音の特徴がよく聞こえるためです。

 デチューンのかかっていない音の試聴は、一度波形を保存し、ASEでOSC(s)の設定を1にするとできます。

 Astraは、まだ研究段階の、生まれたばかりのソフトウェアです。ですので、バージョンもゼロとさせていただきました。今後も研究・開発を進めたいと考えておりますので、ご愛用頂けますようお願い申し上げます。



§1.3 Astra sound editor(ASE)について


 Astra本体では、波形を加工することしかできません。実際に演奏データを作成するのは、こちらのASEの仕事です。

 ASEのシンセサイザ・セクションは、波形をエンベロープとLFO(低周波発振)によって時間変化する音色に加工します。作成した音色は、下のComputeボタンで実際に計算し、試聴することができます。

 こうして作成した音色を、シーケンサ・セクションに入力された演奏情報の通りに計算し、演奏データ(".wav"ファイル)を作成することを、「レンダリング」と呼んでいます。ASEは、CGのように、レンダリングによって演奏データを作成する「ツール」です。



 全体的に英語を使っており、文法・語法的に怪しい部分が多々あると思いますが、どうか寛大な目で見てやってください(^^);>。



§2.1 Astra version0.0(Astra本体)の使用法


 Astra本体の各機能についてご説明いたします。


1).倍音の振幅の値を直接入力する

 

 @まず、<<、<、>、>>ボタンで1〜100までの倍音の一つを選択します。
 A"Input"ボタンを押してダイアログを表示します。
 B"0."に続く小数点以下の値を、半角数字で入力してください。8桁程度で十分です。
※全角数字でも動作しますが、エラーの原因になる可能性があるのでできるだけ使用しない方が無難だと思います。



2).倍音をまとめて選択する


 ↑これが倍音セレクタです。左上が1番目の音、右下が100番目の倍音で、横向きに倍音の番号が並んでいます。
 一回クリックすると白が黒に反転します。もう一度クリックすると黒が白に反転します。□の状態が選択されていない状態、■の状態が選択されてる状態です。




3).倍音の振幅の値をまとめて編集する



 倍音セレクタで選択された倍音や、倍音セレクタの選択・非選択の状態を操作するための機能群です。

 上段から順にご説明します。


@振幅加減乗除ボタン
 

・「+UP」ボタン;
 倍音セレクタで選択されている倍音の振幅を、すべて0.1加算します。

・「*UP」ボタン;
 倍音セレクタで選択されている倍音の振幅を、その中で最も大きい振幅を持つ倍音の振幅が0.1だけ大きくなるよう、それ以外の選択されている倍音の振幅も大きくします。
 簡単に表現すると、倍音セレクタで選択されている倍音の振幅を、一定の拡大率で拡大する機能です。

・「/DWN」ボタン;
 倍音セレクタで選択されている倍音の振幅を、その中で最も大きい振幅を持つ倍音の振幅が0.1だけ小さくなるよう、それ以外の選択されている倍音の振幅も小さくします。
 簡単に表現すると、倍音セレクタで選択されている倍音の振幅を、一定の縮小率で縮小する機能です。

・「-DWN」ボタン;
  倍音セレクタで選択されている倍音の振幅を、すべて0.1減算します。


A振幅操作ボタン


・「0」ボタン;
 倍音セレクタで選択されている倍音の振幅を、その大きさに関わらずゼロにします。

・「1/n^x]ボタン;
 この機能は少し複雑です。
 まず、このボタンを押すと、次のダイアログが起動します。


 このダイアログでは、数学(フーリエ級数展開)に基づく有効な波形の編集機能を提供します。
 まず、左側から説明いたします。
 "0.1"が表示されている欄の左側のチェックボックスをチェックしてOKボタンをクリックすると、処理が実行されます。チェックされていない場合は、処理が実行されません。
 "1/n^x"の意味ですが、これは、「n倍音の振幅をnのx乗分の一」にする、という意味です。たとえば、nが3、xが1.0なら、3倍音の振幅を1/3にする、という操作を意味します。この操作を、倍音セレクタで選択されている倍音にのみ、加えます。

 右側について説明します。
 "0.0125"が表示されている欄の左側のチェックボックスをチェックしてOKボタンをクリックすると、処理が実行されます。この二つのチェックボックスを両方チェックすると、両方の処理が同時に実行されます。
 この機能は、n倍音の振幅に、コンボボックス上で指定した値をパラメータに持つサイン関数を乗じて倍音の並びそのものを波のように変化させます。

 このボタンの機能は、主にフーリエ変換を用いて矩形波や据形波を作成するために作ったもので、具体的な用法の意味については、後述のチュートリアルで説明しますので、そちらをご覧ください。

・「1」ボタン
 倍音セレクタで選択されている倍音の振幅を、その値に関わらず1にします。

・「*-1」ボタン
 倍音セレクタで選択されている倍音の振幅をプラスマイナス反転させます。
 この機能は、はっきり言って意味がありません。単に、波形を見やすくするための機能で、この機能で倍音の振幅を反転させても、音に変化はありません。

B振幅編集ボタン


・「Reset」ボタン
 すべての倍音の振幅を、選択されている・いないに関わらずゼロにします。つまり、波形編集を初期状態にリセットします。

・「Select」ボタン
 このボタンを押すと、次のダイアログが起動します。


 このダイアログは、式”xn+y”を意味します。二つのコンボボックスの値は、それぞれx、yに当たります。
 これらx、yの値を指定することで、倍音セレクタ上の「選択したい倍音」をまとめて選択します。

 たとえば、2n+3を指定すると、n=0から数えて、3(n=0)、5(n=1)、7(n=2)、・・・、99(n=48)倍音までの倍音を一度に選択します。
 既に選択されている倍音は選択されている状態を維持します。選択されていない倍音だけを、選択されている状態に変えます。

・「Deslct」ボタン
 このボタンを押すと、次のダイアログが起動します。


 このダイアログボックスは、Selectボタンを押したときのダイアログと同じです。単に、この式で選択された倍音の選択状態が非選択状態に変わる動作をするだけです。
 既に選択されていない倍音は、非選択状態を維持します。選択されている状態の倍音は、選択されている状態から非選択状態に変わります。

・「Randm」ボタン
 倍音セレクタで選択されている倍音の振幅を、乱数を乗じた値に変化させます。
 ※乱数といっても、いつも同じ乱数列が出るようなので、起動直後に何度かこのボタンを押して乱数を巻いてから使った方が良いかもしれません。



4).その他の機能

 その他のボタンの機能についてご説明いたします。

@「Select all」「Deselect all」ボタン
 文字通り、倍音セレクタ上ですべての倍音を選択(Select all)・非選択(Deselect all)状態にします。

A「<-」「->」ボタン
 編集中の波形を前の状態または後の状態に戻します。

B「Memory」「Load」ボタン
 "Memory"ボタン;倍音セレクタの今の状態を記憶します。記憶できるのは1パターンのみです。
 "Load"ボタン;記憶させておいた倍音セレクタの状態を復元します。現在の状態は破棄されます。

C「sin<-->cos」ボタン
 波形表示画面に表示される波形を、サイン波のみで合成するか、コサイン波のみで合成するか切り替えます。表示されている波形が左右対称であればコサイン合成された波形、回転対称であればサイン合成された波形です。
 ※ASEでは、サイン波のみで音色を計算します。サインで計算してもコサインで計算しても、計算結果である音に影響はありませんが、コサイン波で計算すると、コサインの立ち上がりでノイズが発生するので、サイン波のみを使っています。

D「Compute」ボタン
 試聴用の音を合成します。このボタンを押した後、「110Hz」「440Hz」「880Hz」ボタンを押すと、作成した波形がどのような音なのか、試聴できます。これらはすべて「ラ」の音です。
 ※試聴用の音には、110Hzで+1Hz、440Hzで+4Hz、880Hzで+8Hzのデチューンがかかります。


Eその他(メニュー)
 左上の"File"と書かれた部分をクリックすると、メニューが表れます。
 "Load"をクリックすると、保存されているAstra本体専用の波形データを読み込むことができます。拡張子は、".astrawf"です。
 同様に、"Save"をクリックすると、現在編集している波形データを保存することができます。

§2.2 Astra version0.0(Astra本体)を用いた波形の合成例

 Astra本体を使用するための使用例(チュートリアル)です。据形波とパルス波を作ってみましょう。

 まず、Astra本体を起動します。赤いAの文字が書かれたアイコンをダブルクリックしてください。

 次に、倍音セレクタで"Select all"ボタンを左クリックしてください。倍音セレクタが全て選択の状態になります。

 この状態で、"1"ボタンを左クリックしてください。波形表示画面の下の倍音表示画面が、1から100まで全ての倍音の振幅が最大になった状態になります。

 現在の画面は下図のようになっているはずです。


 この状態で、"1/n^x"ボタンを左クリックし、ダイアログを起動してください。左側のチェックボックスにチェックを入れ、"0.1"と表示されているコンボボックスの値を一番下の"1.0"に指定し、"OK"ボタンを左クリックしてください。下図のようになり、波形表示画面に据形波(いわゆるノコギリ波形)が表れるはずです。

 "Compute"ボタンを左クリックし、しばらく(数秒)待ってから110Hz、440Hz、880Hzのボタンを左クリックしてどのような音か確認してみてください。特に110Hzの低音は、にじんだ分厚い音になっていることが聞き取れると思います。



 波形の左右の端で、線が揺れているのが見て取れると思います。倍音の加減算で合成されている証拠です。

 では、次に、もう一度"1/n^x"ボタンを左クリックしてダイアログを起動し、今度は右側のチェックボックスにチェックを入れて、"0.0125"と表示されているコンボボックスの値を"0.2"にして"OK"ボタンを左クリックしてみてください。「ぐにゃ」っとなった波形が出ると思いますので、"sin<-->cos"ボタンを左クリックしてサイン波合成からコサイン波合成に切り替えてみてください。下の図のようになったらパルス波形の合成成功です。



 こちらも、据形波の時と同じように、"Compute"ボタンを押してしばらく待ち、110Hz、440Hz、880Hzのボタンを左クリックしてどのような音か確認してみてください。アコーディオンのような音が聞こえると思います。110Hzの低音では、やはりにじんだ分厚い音になっていることをご確認いただけると思います。

 慣れると、好きなように倍音を組み合わせて波形を作ることができます↓。ちなみに、この波形は2の累乗の倍音を足し合わせたもので、ベルのような金属系の音がします。



§3.1 Astra sound editor(ASE)の使用法


 ASEの各機能についてご説明します。


・"File"メニュー
 "Load wave data"を選択すると、Astra本体で作成した波形データ(拡張子".astrawf")を読み込むことができます。
 "Load sound data"を選択すると、ASE用の音色加工データ(このシンセサイザ部のデータ、拡張子".astrasf")を読み込むことができます。
 "Save sound data"を選択すると、現在の音色加工データを保存(拡張子".astrasf"ファイル)できます。
 "Load sequence data"を選択すると、保存してあるシーケンサのデータ(自動演奏プログラムのデータ、拡張子".astrasqf")を読み込むことができます。
 "Save sequence data"を選択すると、現在シーケンサ部に設定してある演奏データを保存(拡張子".astrasqf"ファイル)できます。


A)シンセサイザ・セクション

 画面左半分は、Astra本体で作成した波形を読み込み、音色に加工するためのシンセサイザ部です。最初に、波形データを読み込みます。波形データがないと、発音しません。
 次に、必要なら、音色のデータも読み込みます。当然ながら、起動直後のデフォルトの状態から、つまりゼロから音色設定をすることもできます。


・「Pitch」ボタン

 音程に関する操作(設定)を行います。

 左クリックすると、下のダイアログが表示されます。




 @Oscilator(s)
 作成している音色で使用する波形の「重ねる数」を指定します(次のデチューンの項で詳しくご説明いたします)。

 ADetune
 二つ以上の波形を発振させる際に、数Hzの周波数のずれをかけ、音の特徴を際立たせることがよくあります。
 たとえば、440Hzを基準として考え、デチューンの値に"4Hz"を指定した場合、ASEでは、@で指定したオシレータ数が2だとしますと、基本となるオシレータは440Hz、もう一方のオシレータは444Hzで計算されます。
 同様に、オシレータの数を4、デチューンの値を4Hzに設定すると、基本周波数が440Hzと仮定した場合、基本となるオシレータは440Hz、二本目のオシレータは444Hz、三本目のオシレータは448Hz、四本目のオシレータは452Hzで計算されます。
 こうした周波数のずれを故意に作り出すことを、「デチューン」といいます。

 BPitch of attack, Length of attack
 発音の最初に、何オクターブ上(下)のどのキーから、どのくらいの時間(秒)をかけて音程を下げる(上げる)かを指定します。Pitchは1あたり半音、Lengthは1あたり1秒です。

 ・LFO
 PitchのLFOは、音程の震え、「ビブラート」の効果を作り出します。

 @Frequency
 LFOの周波数です。単位はヘルツ(Hz)です。

 AAmplitude
 LFOの振幅です。どの程度の振幅が良いかは、実際に試しながら調節してください。この値をゼロに指定すると、LFOはオフになります。

 BDelay
 LFOの発振開始地点を、音色の発音開始から何秒後にするかを設定します。



・「AMP」ボタン

 音量変化の設定をします。

 左クリックすると、下のダイアログが起動します。



 Volumeは、音量ですが、サイン波やコサイン波の振幅とお考え下さい。ゼロから1の間の値が入ります。
 
 また、Lengthは、各設定値の時間です。単位は秒です。

@Attackでは、発音開始時点の音量を指定し、そこから何秒でDecayの音量に到達するかを指定して、発音開始時の音量変化を設定します。

ADecayでは、ここで指定した音量からSustainで指定された音量に変化するまでに何秒かかるかを指定します。

BSustainは、Decayのあと発音停止までの間の音量を指定します。一定のレベルを保つので、時間指定値はありません。

CReleaseは、疑似的に鍵盤を放してから音量がゼロになるまでの間の時間を指定します。鍵盤を放した時点の音量から音量が減り始めるので、音量の指定値はありません。

・LFO
 AMPのLFOは、音量の震えを作り出します。基本はPitchのLFOと同じなので、説明は省略します。

・「LPF」ボタン
 ローパスフィルタです。倍音の高音域の音ほど大きく削られます。その結果、LPFを閉じると、音色はこもった感じに変化します。
 ASEのLPFでは、ゼロから2の間の値を指定してフィルタリングを行います。ゼロはフィルタなしの明るい音色の状態、2は最もフィルタが利いた(倍音が削られた)こもった音色の状態になります。
 設定の仕方は、LFOと共にAMPの設定と同じなので、特に説明は省略させていただきます。

・「Compute」ボタン
 設定した音色を試聴することができます。110〜880Hzの間で、音色を試聴できます。



B)シーケンサ・セクション

 シーケンサは、演奏データを作成するための、楽譜を作成するパートです。ASEでは、32分音符を量子化の最小分割値として、シンセサイザ部の音色に対して演奏データを作成することができます。小節数は、最大で80です。対応しているリズムは4/4拍子のみです。

 音階は、下から「ドレミファソラシド」の順になっています。一番下は1オクターブ目のラ(A1)で、一番上は7オクターブ目のラ(A7)です。横線の色分けは、黒鍵(黒)と白鍵(ダークグレイ)の別と同じになっています。ここでは、この黒い表を「シーケンス表」と呼ぶことにします。シーケンス表は、1小節単位で表示されます。

(※シーケンス・データのリセットは、presetフォルダ内にある"empty.astrasqf"を開いてください。)


・「1/x」ボタン
 画面最上部のボタン群です。シーケンス表に縦線を引きます。たとえば「1/32」ボタンを一回押すとシーケンス表上に32分音符を並べるための罫線を引きます。もう一度押すと罫線は消えます。複数の罫線を同時に表示できます。

・「Tempo」ボタン
 Tempoを設定します。80から220までの間で設定できます。

 「UP」;Tempoを10上げます。
 「up」;Tempoを1上げます。
 「down」;Tempoを1下げます。
 「DOWN」;Tempoを10下げます。

・シーケンス表上での操作

 シーケンス上での音符情報の書き込みは、次のように行います。シーケンサの発音単位は32分音符ですが、音符の位置は1小節を96分割した長さを単位としています。

 音符を書き込みたい位置で左クリックすると、サイン波形でその音階の音を発音し、音程を確認できます。
 音符を書き込みたい位置で右クリックすると、次のダイアログが起動します。


 "Key"は音階を表します。この例では7オクターブ目のC(ド)が選択されています。
 locationは、シーケンス表上での位置です。ASEのシーケンサでは、1小節を96分割しています。音符の分割の単位は1/32音符が最小ですので、シーケンサにとっての最小の音の長さは96÷32で3ということになります。逆に最大は全音符4つをスラーでつないだ長さ(96×4=384)になります。

@「Note length」;音符の長さです。
 3;32分音符
 4;24分音符(六連符)
 6;16分音符
 8;12分音符(三連符)
 12;8分音符
 24;4分音符
 48;2分音符
 96;全音符

A「Key length」;音符の長さに対して鍵盤を押す時間の割合です。割合を小さくすると、スタッカートになります。10〜100%の間で指定できます。

B「Velocity」;鍵盤を押す強さを疑似的に再現したものです。強く押すほど大きな音が出る、というように、この値が大きいほど音量を大きくすることができます。10〜100の間で値を指定できます。10が最小です。音量は値に正比例します。

・小節移動ボタン
 小節間を移動するためのボタンです。

 「<<」;小節のインデックスを小さくする方向で小節を10移動します。
 「<」;小節のインデックスを小さくする方向で小節を1移動します。
 「>」;小節のインデックスを大きくする方向で小節を1移動します。
 「>>」;小節のインデックスを大きくする方向で小節を10移動します。

・「COPY」ボタン
 小節を一つ、別の小節にコピーします。このボタンを押すとダイアログが表示されます。上のコンボボックスの値がコピー元の小節のインデックス、下のコンボボックスの値がコピー先のインデックスです。上下のコンボボックスで同じ値が指定されると何もしません。

・「Render->」ボタン
 シーケンサの通りに演奏データを作成します。いわゆるレンダリングを実行するためのボタンです。

・「Play」
 レンダリングされた音声データを再生します。

・「Save(.WAV)」ボタン
 作成された演奏データをWAVデータとして保存します。


§3.2 Astra sound editor(ASE)の使用例


 ASEを使用するための使用例(チュートリアル)です。ASEに音を奏でさせてみましょう。

 まず、ASEを起動します。青いAの文字が書かれたアイコンをダブルクリックしてください。

 次にFileメニューから"Load wave data"を選び、Astraを解凍したフォルダ内の"preset"フォルダを開き、"Synth_Lead"フォルダを開いて"Saw wave.astrawf"ファイルを開いてください。また、更にFileメニューから"Load sound data"を選び、同じフォルダ内の"Synth lead.astrasf"ファイルを開いてください。

 これで、据形波を使ったシンセ音のセットは完了です。シンセサイザ部については、プリセットの音色を試聴して設定のコツをつかんでみてください。シンセサイザに詳しい方は、すぐに使い方になれると思います。

 次に、シーケンサ表上で、好きな音階のところを右クリックしてダイアログを表示させ、そのまま"OK"ボタンをクリックしてください。

 最後に、"Render->"ボタンを押してレンダリングしてください。演奏データが長い場合計算に時間がかかりますので、そのままお待ちください。

 レンダリングは終了を通知する機能がありません。適当に時間を見計らって"Play"ボタンを押してください。作成した演奏データを試聴できます。

 作成した演奏データを保存したい場合は、"Save(.WAV)"ボタンを押して、好きな名前でデータを保存してください。また、作成したシーケンス・データを保存したい場合は、Fileメニューから"Save sequence data"を選び、好きな名前でデータを保存してください。

・「Audacity」フォルダについて
 フリーウェア"Audacity"で作成した、冒頭に挙げたサンプル小曲の編集データです。ご参考までにご覧ください。