弾道計算ソフト2000 Classic
操作マニュアル


 MPBR計算について
MPBRとは、マキシマム・ポイント・ブランク・レンジ(maximum point brank range)の略です。
弾道は歪んだ放物線を描きます。一旦上がってまた下がるようになるので、距離が遠くなればどんどん下に当たるようになります。一方、着弾させたい獲物には急所があり、これは心臓や、肺といった臓器です。これらの重要な臓器にヒットさせて捕獲する事になりますが、臓器にも大きさがあります。例えば頭、心臓、肺などで大きさが違います。いろいろな距離で獲物を捕獲する場合、弾道の上下の上がり下がりで、外れたり当たったりする事になります。
この臓器の幅が25cmであると分かっていれば、弾道計算したときに一旦上に上がって下がってくるその幅が25cm以内の距離であれば、獲物が近くても遠くても弾は必ず重要な臓器のどこかにヒットする事になります。

 


獲物の生命を維持する重要な臓器のある範囲をバイタルゾーンといいます。弾頭の初速や空気抵抗が分かっていれば、バイタルゾーンの幅の範囲内で弾頭が上下する最大距離を突き止めることが出来ます。その最大距離範囲をMPBRといいます。MPBR計算に使用する上下の幅の事をPBR幅といいます。
PBR幅はバイタルゾーンの幅を入力するのが基本ですが、当てたい範囲を指定することの方が有効です。例えば、シカの場合は心臓や肺のある急所の幅は大体25cmぐらいだとしても、頭を撃って捕獲したい場合は頭蓋骨中心部分のサイズ(5cm前後)の幅になります。このように、当てたい範囲を指定して計算することによって、よりいろいろなケースに対応する弾道を突き止めることが出来ます。また一方で、銃の精度、腕の精度といろいろなブレの要素があるので、これらを考慮して若干少な目に設定するなどの考慮も必要になります。常にぎりぎりで余裕がない計算をしても、はずれになる可能性が高くなります。この計算ソフトでは、PBRの幅をある程度自由に設定することが出来るので、いろいろなケースで計算し 評価することが出来ます。
くわえて、分析図においてはこのMPBR計算で使用した範囲をグラフィックに水色の枠線で表示するので、銃の集弾度合いの青線のグラフィックカーソルと共に比較する事が可能です。
また、分析図においてはPBR幅は赤線のグラフィックカーソルでその幅を表示します。集弾の幅と行ったブレの要素も青線のカーソルで表示されますので、比較していただくと、捕獲できる範囲を調べることが出来ます。
分析図の縦や横のサイズの割合は自由に変更できますので見たい範囲がよく見えるように調整することも可能です。

 
 MPBR計算とMDSR計算について
MPBR計算においては、獲物のバイタルゾーンを指定するPBR幅の中心に狙い線が来る事が基本です。しかし、この場合メスシカの頭やイノシシの耳の下、サル注1)の頭などに狙いを付けて当てようとしたとき、PBR幅は5cmとか3cmとかの狭い範囲に設定する必要があります。
ご存じのように照準の高さはスコープで1.5inchが数々の装弾メーカの発行するリローディングブックの弾道表の標準の高さになっています。また、対物レンズの大きさが明るさやひとみ径に直接影響しますから、高倍率だったり、見やすいスコープは対物レンズが大きくなりがちです。
バイタルゾーンが狭い場合、たとえば5cmと指定した場合、MPBR計算でスコープの高さに許される最大の高さは2.5cm以下になります。スコープの高さが1.5inchの場合は3.81cmですから、銃口において既に2.5cmよりも下に着弾するので、最初から範囲をはみ出してしまいます。

 


これでは頭など狭い範囲を狙うのには不便ですので、弾道計算ソフト2000 Classicでは、デインジャラススペース(dangerous space)を最遠距離にする計算を行うようになっております。MPBRとは意味合いが異なります。デンジャラススペースはカーソルの黒枠表示にも使用されますが、それでは最遠距離点がわかりません。20m以内で頭を撃つ事は無いけれど60mとか100mでは頭を狙う場合、弾道を出来るだけ有効に使いたい要件があります。この様な要求に応えるために、スコープの高さが5cmであっても5cmのバイタルゾーンを指定して、どの程度の遠距離まで行けるのかを計算する事注2が出来ます。ただし、その場合は「MPBR計算」という表示では無く「MDSR計算」と表示します。「MDSR」はマキシマム・デンジャラススペース・レンジ(maximum dangerous space range)の略で、弾道計算ソフト2000 Classicだけの便宜的な造語ですのでご注意下さい。

 
注1) 日本では狩猟においてライフルで撃っていい獲物にサルは含まれません。有害駆除であれば問題ありません。
注2) 計算では距離が最大になる様にゼロ距離などを計算します。

  
 中間的なゼロ距離に弾道を合わせる方法
  MPBR計算やMDSR計算はゼロ距離が170mとかになったりしますが、射撃場では 50mとか100mにしか標的をおけません。この様な場合は計算結果の100mや50mでの着弾位置で100mに標的を置いて合わせる事が出来ます。
たとえば、170mでゼロのとき100mで6cm上という結果だったとすれば、100mで6cm上に集弾中心が来るようにクリックを合わせる事で、実際は170mでスコープの中心に集弾するようにゼロインする事が出来ます。

  1) 100mに狙いを付けて10発撃つ。
  2) 10発合計した中心点を計測する。
  3) 中心点が狙いを付けた標的紙の中心から6cm上になるようにクリック調整する。

たとえば、狙い通りに100mで標的の中心に集弾したら、クリックを上に回して、中心を狙って6cm上に着弾するようにします。
センターでは無く、100mで左に3cm、下に1.5cmズレていたとしたら、まず、右に3cmクリック調整して、上に7.5cmクリック調整する事でトータル6cm上に着弾するようになります。

さて、この様にスコープの中心に着弾するようにしないでゼロインをする場合には大きな注意点があります。それは、標的の上下を鉛直方向に正しく合わせておく必要があると言う事です。さもないとうまくゼロインできません。
たとえば、左に5°傾いて標的を貼ったとします。その場合20cm下に着弾しても、標的が傾いているために、標的紙の印刷模様から5°傾いた位置に弾痕が点く事になります。標的紙を剥がしてきて机の上に置くと傾いていたのはわかりませんから、印刷された真下から1.7cmほど左にずれているように見えてしまいます。これを見て左に2~3クリック調整してしまうと実際には必要の無い修正をしてしまった事になります。標的は貼っている時はスコープで覗くだけですので傾きがよくわかりませんし、まして、はがして机の上で着弾を計測するときには、もともと傾いていた事など知るよしもありません。
ですので、標的紙を貼るときは、水平器やひもの付いたおもり等をつかって、標的の上下を正確に鉛直方向に合わせておく事をお勧めします。射撃場の標的紙を貼り付ける看板の枠木は正確に鉛直や水平になっているか良く確認して下さい。

傾いていても標的紙の中心に合わせてから、最終的に上や下にクリック補正する方法も考えられます。一見よさげに思えますが、それだと、撃っている時に標的紙の真下だと思っている箇所が実際には標的紙が傾いていて真下の線上に無い、そこで真下では無いという誤解を得てしまいます。たとえば、撃っていて下に15インチ、左に1/2インチ、などと判断してクリック補正すると、本当は真下なのに、左に2クリック回し、上に30クリック回してしまいます。この直後に一発撃つと、標的の上下はほぼ合いますが、左にズレた位置に着弾してしまいます。結果として、無駄なクリック補正をする事になり、無駄弾を使うばかりではなく、「狙いがそれる癖があるようだ」、とか、「もしかしてパララックスかも」、などと間違った認識を得てしまう事にもなりますので、標的紙はどのような場合にも鉛直、水平を正確に貼り付ける事、また、そうできない場合は、どの方向に、どの程度傾いているか、クリック補正するときにどの程度考慮していいか、よく認識した上で、正しい判断を得る事をお勧めします。

 
 
左は正しい貼り方、右は傾けて標的紙を貼った場合
標的が傾いていると、真下に当たっているのか、本当に左に当たってるのか、詳細なクリック数が不明確。
集計のために剥がして机の上に並べたら、どれだけずれているのか全くわからなくなる。

 
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