弾道計算ソフト2000 Classic
操作マニュアル


 Rifleでの活用
 この弾頭計算ソフトではスラグばかりでは無く、ライフルの弾道合わせにも対応できるように設計されています。工場装弾の場合、例えばレミントンではレミントン社で無料で配布している弾道計算ソフトを使用する事で、いろいろな条件での弾道を得る事が出来ます(2012年時点)。それ以外のPMC装弾やその他のメーカーではそのような便利なソフトはありませんから、初速や弾頭のデータ、あるいはカタログの弾道データからメートル単位などのご自分に必要な弾道を割り出す必要があります。また、ご自分の銃器で得られる初速などはカタログデータと全く同じではありませんので、必ずしも得られた弾道データが一致するとは限りません。メーカーのテスト銃の銃身の長さがご自分の銃と違ったり、ツイストレートや、銃の製造誤差による銃口の微妙な違い、銃身素材や表面処理の違いによる摩擦抵抗の違いなどで弾速は変わります。さらに、初速を測定して弾道を割り出したとしても、実際の値と計算値にひらきがあることもあります。
この弾頭計算ソフトは、実際の着弾点のデータから数値的にフィッティングさせて弾道を割り出す合わせ込み計算機能がありますので、50m、100m、200m、300mと撃ち分けて得られた実際のデータに近い弾道を得て、それ以上の距離においてどの程度の弾道になるかを計算する事が出来ます。そもそも弾道計算はG1ドラグファンクションや、G7ドラグファンクションによる近似計算に過ぎませんので、実際の弾頭形状にピッタリな計算が出来るわけもありません。したがって、実際の着弾点や弾速に基づく合わせ込みをどれだけ近づけるかで弾道計算結果の精度が決まります。うまく実施する事で単なるカタログスペックよりも実際に近い計算結果を得る事が出来ます。

 
 Federalの工場装弾の場合
   フェデラルの工場装弾の場合は、フェデラルのホームページ(http://www.federalpremium.com/)である程度の弾道データを得る事が出来ます。また、カタログをダウンロードすると、その中に弾道データが記載されています。パーツ番号P3006AEというフェデラルの工場装弾を購入したとします。このデータを見ると、以下のようになっています。

距離
(yards)
銘柄 P3006AE
口径 30-06 Spring.
速度(fps) 弾道(inch)
0
50
100
200
300
400
500
2700
-
2500
2320
2140
1970
1800
-
0.9
2.0
0
-8.6
-24.7
-49.7

このデータは全部ヤードになっています。欲しいのはメートルで、弾道はセンチメートルです。メートル単位の弾道を得るには、もう一度弾道を計算し直す必要があります。

 
 弾頭のBC値を得る
弾道を計算するには、初速、BC値、スコープの高さ、ゼロ距離のデータが最低限必要です。カタログには弾頭の種類は書いてあっても、BC値までは出ていません。そこで、弾頭メーカーのホームページからデータを見ても良いのですが、弾道計算ソフト2000 Classicを使うと、BC値を逆算する事が出来ます。スコープの高さは類推する事も出来ますが、速度で合わせ込み計算を行う事でスコープの高さが分からなくても、ゼロ距離と初速、その他2点の距離での弾速が分かれば、BC値を逆算する事が出来ます。

 


 
計算の結果は、0.453になります。この結果はバーンズの308口径、180gr、TSXの弾頭のメーカー公表値と一致します。
射撃場で弾道を見る時にはどうしても100mや50mになりますから、フェデラルの弾道表はヤードですので、ちょっと合わない結果になってしまいます。ましてや、50mや100mでの距離でゼロを合わせますから、200mや300mになると、少しずれただけで大きな違いとなってしまいます。50m、100mでの値に合わせておけば安心です。

      初速2700fps
      BC値0.453

この設定値で、出力をメートル、センチメートルに合わせれば、ヤード単位の弾道表を簡単にメートル単位に修正する事が出来ます。また、ゼロ距離やスコープの高さも、ご自分の好きな値に合わせる事が出来ます。しかし、実際の弾速とは異なりますので、以降は実際の値にこのデータを近づけて行きます。

 
 実射の値に合わせ込む
  工場装弾がご自分の銃器と同じ初速になることは希です。工場のデータは工場にあるテスト用の銃身であれば同じ結果は出ますが、銃身の製造も均一に行われる事はありませんから、工作機械の精度のぶんだけ製造誤差があります。.308でも細めの銃身であればプレッシャーが高くなり弾速が高くなる事もありますし、銃身の素材や表面処理の違いによって、フリクションが高くなりプレッシャーが高くても弾速が低くなる事もあります。また、工場の銃身長よりも短い銃身で撃った場合や、ツイストレートが異なった場合など、同じ弾速にならない要素は沢山あります。
このような理由で、全く同じ初速になる保証はありません。そこで、実際に射撃場で異なった距離でどのような弾道になるかをチェックし、ご自分の銃器での弾道を求めておく方が安心して猟を行う事が出来ます。

 
 弾速計を使用する場合
  ライフルでこのような確認を行うためにはどうしても、100m以上の射撃場で弾道を調べなければなりません。しかし、そのような射撃場は全国でも少ないので簡単に弾道をチェックするわけにはいきません。そこで必要になるのが弾速計です。弾速計を使用する事で初速が確定しますので、測定された初速を設定すれば良いのですが、銃口から弾速計までの距離は通常3~5m以上離す必要があります。これは、銃口から吹き出るガスが弾速計の測定を阻害するからです。無煙火薬といえども高温のガスは赤外線や光で動作する弾速計の測定素子に影響しますので、影響の少ない距離をとる必要があります。しかし、銃口から離れれば速度低下しますので、銃口から弾速計までの距離を加味した銃口速度を計算してみます。
射撃場で弾速計を銃口から3m放して測定した時、3発の平均値が2623fpsであったとします。しかし、銃口から3m離れていますので銃口での弾速はそれより早くなります。
 


 
  このような設定で計算すると、銃口では2629fpsという結果が出ます。測定値と銃口での速度にあまり変化が無い事が確認できます。一方、銃口から弾速計があまり近いと、銃口から噴出する火薬のガスのために、弾速が正確に測定できない事があります。このために、付属のコードをめいっぱい延ばして5m離れた場合の計算をしてみれば、弾速値の低下は上記の設定条件では約10fpsぐらいになります。
ラウンドノーズ弾頭や、スラグ・サボットの場合は、BC値が低く、たとえ5mでもこれ以上に弾速低下しますので注意が必要です。ここでは、BC値が0.4と大きいのでこの程度で済んでいます。
2700fpsの工場装弾であっても、実際それよりも弾速が低い事は結構ありますが、BC値に関してはメーカー発表の実際の弾道値から逆算しても、メーカーのBC値とほぼ同じ値が出る事から、メーカーの表示値とあまり違いません。実際の弾頭メーカーはBC値を公表して販売していますから、他のライバルメーカーに比較広告されれば当然商売になりませんからこの値は信頼できる物と思われます。
しかし、メーカー公表のBC値よりも低い様な挙動を弾道が示す事もあります。これは気象条件の違いや、弾頭が歳差運動をしていて、実際の空気抵抗よりも大きな抵抗がかかる場合などが考えられます。ですので、出来れば弾道をある程度実測して補正しておくのが、遠射をする場合は必要になります。

 
 微調整を行う
  さて、これまで得られたデータで弾道計算をしてみると、次のようになります。200mでゼロにするように50m射撃場で合わせるためには、以下のようなデータを使う事が出来ます。

 

 
  50mで狙ったところよりも約4cm上に当たるようにすると、200mでゼロになります。
実際に何発か撃ってみて、平均的に4cm上にしたつもりでも、実際は5cmだったとか言うような失敗はよくあると思います。また、4cm上という調整もスコープのクリック数で曖昧になりがちです。
このように、射撃場を引き上げて後から標的紙をよく見てみたら違っていたという場合に、合わせ込み計算を使う事が出来ます。
4cm上に合わせたつもりが、実際は5cmだった場合を考えます。この修正をするには、ゼロ距離で合わせ込み計算を行う事で現在の銃器の弾道を逆算する事が出来ます。

 
 

 
  この設定で合わせ込み計算を行うと、ゼロ距離を調整して、50mで5cm上に当たる場合の弾道を得る事が出来ます。

 
 

 
  この弾道で猟に臨む事が出来ます。
射撃場で得た弾痕の状態から、実際に50mで当たった弾の位置を若干上下させてみて、実際の弾道にどのように影響するのか、300mや400mでの弾道位置を計算をすることで遠距離でのふらつきを予め得る事で、獲物に当たる確からしさを再認識する事が可能です。上記の画面を参考に、合わせ込み点を4.5cmとか5.5cmに変更してみて影響を調べてみて下さい。

 
 300m射撃場で撃ち分けを行う場合
  300mの射撃場があれば、かなりな情報を得る事が出来ます。通常300mの射撃場では100mと200m、300m等の各距離で標的を撃つ事が出来ると思います。これを利用して、着弾点のデータを100m、200m、300mで3点取得し、弾道を得る事が出来ます。
今、200mでゼロに来るように合わせようとした場合を考えてみます。尚、100m、150m、300mの射場の場合は150mで0に合わせる必要があります。猟場で200mでゼロにするには、まず、弾道情報を確定してから、後で微調整するのが良いでしょう。

実射で得られた弾道は、以下のような物でした。

100mで7cm上
200mで0cm
300mで29cm下

合わせ込み計算を行ってみます。今回の想定では弾速計はありませんから、初速を調整してこの弾道になるのかどうかを検討してみたいと思います。

 


 

  
合わせ込みの計算結果は、2623fpsになります。
この結果を使用して、300m以上の距離での弾道を参考に猟に供する事が出来ます。実際には集弾幅(グルーピング)や、風の影響、その他の気象条件や、Killパワーなどを 評価する必要がありますが、やはり、重要なのは実際にどうだったかという事ですので、距離計など現場の検証が可能になるような装備は必須です。
50m、100mの射撃場で弾速計を使用した場合よりも、実際に撃った着弾地点に合わせてありますので300mで撃ったデータで弾道を特定する方が安心感が高いかと思います。

 
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