弾道計算ソフト2000 Classic
操作マニュアル
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中心点(MPI)とは
このマニュアルでは「中心点」と称していますが、着弾平均位置と表現した方がわかりやすいと思います。本プログラムでは表示の都合で一般的な短い呼称を使用しております。英語の意味はMean Point of ImpactでMPIと略して呼ばれています。
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それぞれの座標位置は標的の真ん中(照準点)から、以下のようになっている。 |
1発目 X位置 -33.0mm Y位置 43.0mm
2発目 X位置 4.0mm Y位置 28.0mm
3発目 X位置 -49.0mm Y位置 4.0mm
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合計 -78mm 75mm
平均 -78mm÷3 75mm÷3
= -26mm = 25mm
中心点 MPI = (-26mm、25mm)
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上記のように、水平位置(X位置)と鉛直位置(Y位置)を物差しで測って、その合計を求めて弾痕の数で割ってやれば中心点を求めることが出来ます。この中心点こそ照準点と一致させるべき点です。スコープの狙いを十分な数の弾を撃った弾痕の中心点(平均位置)に合わせること、これがゼロインです。
射撃場では、一発撃ってその弾痕に照準を合わせたりする人もいますけれども、十分に高い精度の鉄砲であればそれでいいのですが、着弾がばらつく場合は、たまたま、左に外れた一発だったかもしれないのですから、一発の弾痕に合わせたとしても正しい照準に合ったかどうかは、精度がわからないかぎり不明です。
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精度(Precision)と正確さ(Accuracy)について
よく言われる言葉ですが、標的射撃においてAccuracyというと、照準点(狙点ともいう)と複数の着弾の中心点が合っていることです。下の図で、照準点は標的の真ん中だったとすると、左の図は正確に合っていますけれども、このようなバラツキでたまたま一発撃った弾痕に照準を合わせたとしても、本当に中心点に照準が合っているかは不明です。何発か撃ってみて、その中心点が照準と一致したとき初めて正確であるといえます。
一方、右側の図のように、精度が高い場合はどうでしょうか。このような弾痕の場合は、一発撃ってそれが照準点と合っていれば、十分正確であるといえます。
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射撃場で撃ってきた標的紙にあいた穴を評価するときには、正確さと精度について区別しておく必要があります。一発だけ真ん中に当たったからいいやとか、ある程度まとまったからいいやとかで、射撃場で標的紙を捨ててお家に帰るのでは、せっかく時間とお金を使ったのに、無駄が多すぎます。撃ってきたら評価して猟に生かしてみてはいかがでしょう。
正確さと精度が数値的に区別され評価できれば、標的の弾痕を少しでも猟果や経験に生かせるのではないでしょうか。
正確さと精度を統計的なグラフで示すと下記のようになります。
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https://en.wikipedia.org/wiki/Accuracy_and_precisionより引用
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上図でPrecisionで示す幅が狭いほど、精度が高いといえます。また、Accuracyで示す長さが短いほど、正確であるといえます。これらを数値で評価するのが、本プログラムの標的集計図の目的です。
中心点が照準点に近いほど正確であるといえます。しかし、それはあくまで十分な数の弾を撃った結果、精度がわかって初めていえる事です。では十分な数とはどのくらいでしょうか。
ハンティングで使う鉄砲を想定すれば、統計的に意味のある数とはせいぜい10発が限界です。統計的にサンプル数が10よりも良い結果をえるには、サンプル数を100にしなければならないと言われています。しかし、ハンティングに使う強い反動の鉄砲を、同じ気象条件の下、同じような鉄砲の温度・状態で、100発も撃つのは現実的ではありません。銃身を冷やしながら10発撃つ、というのが統計的に合理的といえます。
精度が高いというのは、上の図でPrecisionという幅が狭いという意味ですが、本プログラムでは、この幅を「標準偏差」として表現しております。標的集計図ではσという記号を使用しております。
一方、Accuracyはすなわち中心点と照準点の差であって、これは直接照準点からの相対位置として表示されますので、中心点が照準位置と一致しているということが高い正確さを示すことになります。
さて、上図は一次元的な図ですが、実際は標的紙の上の平面に分散して弾痕がつくことになりますので、一次元的な標準偏差ではうまく表せません。本プログラムでは鉛直方向と水平方向の2次元正規分布として標的紙を表現しております。
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https://ja.wikipedia.org/wiki/正規分布より引用
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信頼区間とは
射撃では、常に同じところに当たることはありません。必ず一発一発、少しずれます。要因はいくらでも考えられ、たとえば、外部要因として、風が吹いたり、狙いがずれたり、引き金を引くときに鉄砲がぶれてしまったり、、、内部要因としては、火薬が均一に発火しなかったり、強弱があったり、バレルの振動が均一ではなかったり、弾頭の歳差運動があったり、、、などです。結果として、標的紙にはばらついた弾痕がつくことになります。このバラツキの度合いを数字で表すと、標準偏差(σ、シグマ)という数になります。
弾痕の中心点から、左右、上下に広がりができます。
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正規分布
https://ja.wikipedia.org/wiki/正規分布より引用
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上記のグラフに描かれた曲線を正規分布と言います。中心点の濃い青の部分に弾が集中して、その高さは頻度を表していて、左右に広がるにつれてだんだんと薄れていきます。実際には、上下左右に広がるので、この図は左右だけに着目して描いた物と考えてください。そう見た時、狙ったセンターが0になっていて、それより左の青の濃い部分に当たる確率が34.1%だと言う意味です。左と右両方なら、68.2%になります。たとえば、100発撃ったら、青の濃い部分に68発当たり、次に青の薄くなっているところには27発当たります。濃い部分と合計すれば、94発が青の濃い部分と2番目に濃い部分に当たると言うことです。青の濃い部分は±σ、2番目に濃い部分も合わせると±2σの範囲と言うことになります。
実際の弾痕のバラツキはこの正規分布通りではなく、偏った物になりますが、統計的に数値を得るためには分布の度合いが正規分布だったと仮定して、確率などの計算をします。したがって、必ずしも実際に撃ったバラツキが正確に表現されているわけではなく、本プログラムで計算された統計的数値は、あくまで目安として利用すると言うことになります。ここで示してあるσの大きさによって弾痕のバラツキを表現しますので、σが小さければとがった山になり、大きければ平たい山になります。
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σの大きさが左右では違いますが、確率は変わりません。左右の弾痕の双方で、10発撃ったとき、6~7発(68%)が濃い青のところに集中し、±3σの範囲に99.7%以上の着弾が集中します。この範囲の事を、信頼区間(Confidence
Interval)と言います。
±σの範囲は、図中の濃い青のところで、この部分に集中するのが全体の68.2%になります。±2σの範囲は薄くとも濃くとも青い領域で、この部分は全体の95.4%になります。山のほとんど99.7%の領域が±3σの広さになります。
猟では半矢を出来るだけ少なくするべきですから、信頼区間のパーセンテージは高い方がいいと考えがちですが、そもそも、バラツキが正規分布にならないのが現実であって、風の状況やその他の諸条件が折り重なって、同じ条件になることはなく、再現性はありません。ですので、ここで得られた指標を、ご自身の射獲経験に照らしてご判断いただくのが適切かと思います。
そのために、本プログラムでは信頼区間の幅を50%~99.7%(0.7σ~3σ)の範囲で選べるようになっております。
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フライヤー(Flyer)
射撃場で鉄砲を撃ってますと、良いようにまとまってきたところで、一発、大きく外れてしまうことがあります。射手のせいではない突然の外れは、一般的にフライヤーと言われます。
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左ははっきりした外れだが、右はちょっと微妙
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弾道の確定やゼロインを正確に行う目的なら、ガク引きとか、目にゴミが入って撃ったとかで、大きく外れた場合、ゼロインや弾道を決定するのにはふさわしくないデータですから、フライヤー同様、データから除外することも考慮すべきです。
少し外れたときと大きく外れたときとで区別する必要がありますけれども、これを数値的に表すのが偏差値です。偏差値はたまたま外れた一発が全体の内のどのぐらいに位置する点なのかを表すのに都合がいい指標です。
本プログラムでは中心点から最も遠い点を「最遠点」として表示し、その後に水平方向での偏差値と鉛直方向の偏差値を表示します。この偏差値が70以上であったり、30以下であったりしたとき、正規分布の仮定で全体の2.3%の集団に入る希なサンプルであるといえますので、除外してもいいかもしれません。もちろん、この判断が出来るのは10発以上撃ち、統計的に意味がある場合に限ります。
一方、猟での射獲範囲を決めるような場合とか、射撃の試合に出るとかの場合、フライヤーとか射手のミスとかもデータにいれて考慮した方が良い場合もあるかもしれませんので、ケーズバイケースでご判断ください。
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