弾道計算ソフト2000 Classic
操作マニュアル
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V.3.1.4から、異なる距離に置かれた標的写真を読み込んで一つにまとめて集計する機能が加わりました。100mで5発撃った標的紙が2枚、150mで撃った標的紙が1枚ある場合を考えてみます。以前のバージョンでは、この15発の集計を一度に行う事はあまり意味がありませんでした。理由は150mと100mでは弾道的に同じ狙点で撃っても当たるところが違うし、バラツキも150mの方が角度的に広がってしまうからです。
しかし、弾道計算ソフト2000 Classic V3.1.4以降では、150mの弾痕を100mの軌道に換算して100mの標的上に表示する機能があり、これを利用することで違った距離にある標的を、まとめて集計することが出来るようになりました。ただし、使用している銃から撃ち出された弾丸の弾道と計算された弾道が一致している必要があります。
計算された弾道を使用しない場合は、拡大・縮小だけを行い狙点からの距離に表示することも可能です。そうするには標的集計図を弾道と連携しないで起動する必要があります。さらに、100mと150mでは当たるところが下がってしまうので、150mでの標的の照準点を150mの下がり分だけずらして指定する必要があります。たとえば100mでゼロで、150mで15cm下がる事があらかじめ解っている場合は150mの標的集計において、その照準点の指定を15cmずらす事で、100m上に自動換算して集計を行う事が出来ます。これは150mの標的上の間隔を100mにあわせるために2/3倍して表示・計算するからです。
今回は、スラグの標的紙を使用して例をご紹介します。
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弾道データを使わない場合は、メインコントロールパネルのツールメニューで標的集計図(弾道と連動しない)を選択します。弾道と連動するを選択しても、起動してから弾道計算を一度も行わなければ同じです。また、弾道計算していても、設定メニューから設定のリセットの内どれか一つでも実施していれば、弾道情報は一時的に使われません。再計算など、弾道を計算するアクションを行う事で再度使われるようになります。
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標的集計図(弾道と連携しない)を選んで起動する。
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この状態で起動された標的集計図は弾道に合わせた補正は出来ません。ただ単に距離に応じた拡大・縮小を行います。
100mでの標的2枚を読み込んで、寸法をそれぞれ合わせ、上下を修正して弾痕マーカーを付けます。この結果、次のようになります。
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100mでの標的写真を読み込み寸法を指定。
標的紙の中心から黒点の外周まで101mmであったので、その通り入力する。
射撃場によって微妙に印刷された黒点の大きさが違うので、その都度実寸を計測して入力する。

標的の上下は1点の文字を目印に行う。

標的の中心点はX点の中心に合わせる。

12番のサボットなので、弾の直径は13mmである。
グリッド間隔は1クリック1/4MOAなので0.25MOAを指定する。

弾痕をマーカーでマークしたところ。

二枚目の写真も同様に寸法設定、上下設定、照準設定、弾痕指定する。
集計は100mで行われている。
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次に、150mの写真を読み込み、同様に寸法、上下を設定します。
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150mでの標的を読み込んで、寸法、上下、照準を指定。
その後弾痕をマーカーで指定。
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150mの標的紙を読み込んで、標的までの距離を正しく入力していません。この状態では、グルーピング値も、弾痕の様子も正しい値になりません。
三回目に読み込んだ150mの標的写真において、設定タブで標的までの距離を150mに指定します。
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写真番号3の設定タブ

標的までの距離を150mに指定する。

再び集計タブに戻って、全点表示するとこの様になる。
150mの弾痕がドロップの分だけ下になってしまっている。
また、集計数値のところに写真番号3の弾痕位置データに@150mと表示される。
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このままではドロップの分が合わないので集計が正しく表示されません。このサボットは、これまでの経験で150mで大体15cmの下がりがあるので、照準点を下方に15cm修正することで、下がりを考慮した集計が出来ます。また、「照準を変更」チェックボックスをクリックする事で、ずらす事も出来ます。
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100mの弾痕が150mのバラツキに拡大され青で表示されている。
集計値は写真番号の若い100mの指定が基準となって表示されている。
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あらかじめ、弾道が突き止めてある場合は照準点を手動で動かさなくても、その弾道をメインコントロールパネルで計算しておくことで弾道を考慮して100mでの集計データを表示することが出来ます。その場合は、ツールのメニューで「標的集計図(弾道と連動する)」を選択して標的集計図を起動してください。
メーカーが提供する、このスラグの弾道データは初速2000fpsで弾のBC値は0.817という値です。メインコントロールパネルでこのデータを反映し、手持ちの鉄砲のスコープの高さ1.7inchを設定して弾道計算することで、弾道計算を反映した結果を得ることが出来ます。
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スラグの弾道を計算する為のパラメータを入力して数値計算ボタンを押す。
数値計算ボタンで弾道計算した後に標的集計図を起動して前項で集計した様に弾痕のデータを入れていく。

照準点は標的の中心で指定しても、計算された弾道情報を使用して弾痕位置が自動的に変換される。
図では集計データは写真番号の若い100mを基準に再計算して表示されている。
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メインコントロールパネルの弾道計算と連携することによって、上下だけではなく、ウインテージやCANT、スコープのオフセットなども再現することが出来るので、実際の標的の写真を使用して、これらの計算前提が合っているかの検証も行えます。
基礎データを入力して計算した弾道データは、100mで15cmのドロップとはなっておりませんので、集計データは若干違った結果になります。スラグでは30inchのテストバレルで基準温度下で測定された工場装弾のデータより、短い銃身で、冬の寒い時期に撃ち出した実測値の方が低めに出ることもあります。ですから、カタログデータではなく実射によって得られたデータに適合した弾道を求めるべきです。
そこで、150mの弾痕データだけを「集計しない」チェックボックスを使って表示させます。チェックボックスで右クリックするか、チェックボックスの「集計しない」文字表示位置でマウスクリックすると、メニューが表示されるので「この写真だけ集計」を選択します。
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この中心点は、以下のようになります。
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150mの標的での中心点は、横-10.4mm、縦-162.4mmとなっております。
この中心位置(150mで-162.4mm下がる)を利用して、初速調整による合わせ込み計算を行います。
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合わせ込み計算結果は1796fpsと出ました。
弾速が約200fps少ない値ですが、スラグにおいて工場装弾の弾速が200fps低いというのは珍しいことではありません。この値は妥当であると思いますし、なによりも、この弾道は実際に撃った標的の着弾位置に合致しているのですから、150mまでの弾道はミリ単位でこの曲線上を飛翔するといえます。問題は150m以上の場合ですが、151mになったから急に10cmも違うようになるはずも無く、ほぼ、この弾道をトレースして飛翔すると考えられます。
工場スペックで200mでの着弾位置を計算すると-38cmになります。この合わせ込み結果は-49cmになっているので11cmしか違いがありません。200m位まではこの弾道が最も現実に近いと考えても猟果には問題無いでしょう。
さて、標的集計図は弾道計算結果と連動しているので標的集計図において、集計するチェックボックスで全部集計を指定して、全点表示チェックボックスをオンにすると、以下のように自動修正された表示になります。
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150mの5発の平均では10mm位左にずれているように見えていましたけれども、100mの着弾結果と総合してばらつきを評価すると、ほぼ、左右のゼロ点はこれで良さそうです。
工場スペックで表示したのよりも、実際の着弾位置に合っているので、こちらの方が現実味があります。
また、15cmのドロップという、「大体このぐらい」の考えで照準をずらして得た集弾結果よりも、こちらの方が現在の弾道に合致した確かな物であると思いますが、正確さを求めるならば150mでも10発撃って集計するべきです。
この例のほかにも標的集計図で着弾の中心位置を得て、その弾道から合わせ込み計算を行う「標的集計から弾道を求める例」もありますので、そちらもご参照ください。
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