弾道計算ソフト2000 Classic
操作マニュアル


 ドラグファンクションの修正機能について
  ドラグファンクションとは弾頭が空中を進む時、空気抵抗が速度によって変化する様子を示すものです。同じ速度で飛んでいるときは変わらない空気抵抗も、だんだんと速度が落ちて行くに従って、その空気抵抗も変化していきます。
弾道計算ソフト2000 Classicのバージョン2以降においては、このドラグファンクションの種類を増やし、CSVファイルからデータを読み込んだり、カスタマイズできる機能を提供しています。
そもそも、G1ドラグファンクションとは、一定の形状の弾頭を飛ばしたときに各速度における空気抵抗の変化を測定して定めたものですから、弾頭の形や大きさが異なれば違う特性を示します。このため、G7ドラグファンクションなど、今日のVLD弾頭に適したドラグファンクションも色々な弾道計算プログラムで提供されるようになってきております。また、近年では弾頭メーカーが提供する弾頭に独自のドラグファンクションを測定して提供するウエブサイトも出てきております。
この背景には、今日の進んだ製造技術と品質管理によって、市販の銃でも1MOAを保証するものが増えてきて、より正確に着弾点が得られるようになった事があげられます。また、スラグ、サボットにおいても、10年前とは比べものにならないぐらいの高精度な銃、弾が市販されており、これらの弾頭はG1標準弾頭形状とは大きく異なるものも多数あります。これらの弾で、比較的長い距離での高精度な結果が得られればG1で代用するにも無理が出てくるケースもあると思います。
弾道計算ソフト2000 Classic バージョン2では、このほかにGS(真球)やGL(ラウンドノーズ)を使用したり、付属するCSVファイルには、シリンダー(GC)なども用意されています。さらに、読み込んだり、ビルトインのドラグファンクションを修正して、独自のドラグファンクションを定義して実測した弾道に近い計算結果を得る事もできます。また、外部の距離と速度からなるデータを読み込んで新たなドラグファンクションを生成し、これを修正して弾道計算をする機能も提供します。
 
 G2、G5、G6、G8、GS、GLの使用方法
バージョン2から新たに加わったドラグファンクションの使用方法をご説明します。
既存の弾頭メーカから公表されるBCの値は、ほとんどがG1ドラグファンクションに基づいたものです。一部、バーガーからG7ドラグファンクションのBC値が提供されておりますが、G2などのBC値データは全くありません。
弾道計算ソフト2000 Classicでは、BC値を弾道データから合わせ込み機能を使用して特定することが出来ますので、この機能を使用することで、簡単に、そして正確にG1のBC値からG2やG5、GLのBC値を求める事が出来ます。

 1) 設定メニュー、初期設定のリセットの「気象条件を出荷設定にリセット」を選択。
 2) メーカー公表のBC値とG1ドラグファンクションを使用して
    猟で使用する弾速、射獲範囲で弾道計算する。
    そのときの初速、ゼロ距離の他に距離と弾速を2点、メモに控えておく。
 3) 合わせ込みタブを開いて、そのときの弾速、BC値(仮)、ゼロ距離、2点のデータ(距離と速度)を入力する。
 4) これから使用したいドラグファンクション(GS、GLなど)を選択して、BC値の合わせ込み計算を行う。

合わせ込み点に速度を使うことで着弾点の違いが考慮されなくなり、空気抵抗による速度の減衰だけで計算をする事が出来ます。
合わせ込み計算を行うと、その時に選択されているドラグファンクションを使用して、最も適切なBC値を割り出すことが出来ます。
元々、ドラグファンクションが違えばBCをいくら調整しても弾道は一致しません。しかし、特定の範囲で合わせ込みを行うと、その部分だけは全体を合わせるよりも互いに近い値が得られます。ですから、猟で実際に使う範囲で合わせ込みを行ってください。
お使いの弾頭形状が、G2や、G5、G6、G8、GS、GLの形状に似ている弾頭を使用している場合は、この方法でより実測に近い弾道を得られます。また、このことから、ご自分の実測した着弾点がG1弾道とは違う場合、独自のドラブファンクションを使って、実測に近い弾道計算を行うことにも利用できます。

 
  ドラグファンクションと弾頭の形状(同じ縮尺:インチ)
  (G1)市販のリローディングマニュアルにある弾道表に広く利用されている。オージブ形状弾頭。
(G2)ボートテール、アバディーンノーズの弾頭。
(G5)短いボートテール、タンジェントオージブ形ノーズの弾頭。
(G6)フラットベース、スカントオージブ形ノーズの弾頭
(G7)ボートテール、タンジェントオージブ形ノーズの弾頭
(G8)フラットベース、スカントオージブ形ノーズの短い弾頭
(GS)9/16インチの真球
(GL)フラットベース、鉛(ラウンド)ノーズの弾頭

G1以外のドラグファンクションでは、BCの値が全く違ったものであり互換性はありません。G1のBCが0.5だからといって、G8のBCも0.5であるということは全くなく、新たに計測し直さなければそのBC値は得られません。しかし、弾道計算ソフト2000 ClassicのBC値の合わせ込み機能を使えば、簡単に弾道計算範囲において最も近いBC値を求める事が出来ます。
一般的に狩猟で使用するスラグだと距離200m、ライフルだと距離500m前後の範囲においてどのドラグファンクションを使っても弾道に大きな違いは現れません。実際、G1が世界標準的に使用されている所以であります。

 
 
 付属のドラグファンクションファイルについて
   弾道計算ソフト2000 Classicのバージョン2をインストールすると、そのフォルダーの中に、「dragfunctions」というフォルダーが作成されます。このフォルダーの中に、以下のドラグファンクションが収納されています。

   RA4.csv    22リムファイアの弾頭形状のドラグファンクション
   GC.csv     シリンダー弾頭形状のドラグファンクション
   GL-2.csv    インプルーブGLドラグファンクション
   RA4-2.csv   インプルーブRA4ドラグファンクション

 
 
 よりよい弾道を求める
   猟では色々な距離で射獲する必要がありますから、弾道をよく把握しておく必要があります。100mや200mでも頭を撃つ場合などは、1インチのずれも気になると思います。弾道を正しく把握するには、100mや300mで10発撃ってそのセンターを求め、着弾位置を確定する必要があります。10発という数には統計的に確かであるという重要な意味合いがあります。10発以上の精度を統計的に出すには100発の平均が必要になるため、現実的ではありません。また、10発に満たない場合も大きく統計的精度を損ないますから、10発というのは必要にして十分な数であると考えます。
このようにして求めた着弾点(もちろん許容できる標準偏差である必要がある)は、弾道を特定するのに十分ですから、G1ドラグファンクションと、メーカー発表のBC値を使って弾道計算すれば、大概のケースで良い一致が得られると思います。
しかしながら、弾道と弾頭のスピン軸が合っていない場合、弾頭が歳差運動をしている場合や、メーカーの弾頭の作りが粗い場合など、着弾点と計算値が合わない事があります。
ゼロ距離が確定していて、弾速計で弾速を測定している場合、10発の着弾点と計算した着弾点が標準偏差を考慮して差し引いてもあわないのは、BCが違っているか、ドラグファンクションが合ってないかの二通りの原因が考えられます。10発撃って求めた統計的裏付けのある実測値は信頼できるものですから、これに合わない弾道計算はあまり意味がありません。そこで、これまでの弾道計算では、G2やG8、GL、GSを使用してなんとか近似させようとする訳ですが、これらを使用したとしても、着弾点が合うようにはならない場合もあります。このような場合、距離範囲を限定してBC値の合わせ込み計算をすると、限定的範囲内になりますが、ほとんどの場合で合致します。猟の射獲範囲内でどうしても合致しない場合はドラグファンクションが適合していない事が考えられます。
弾道計算ソフト2000 Classicでは、ドラグファンクションを編集してドラグ係数と速度帯を修正することで、実際に得た着弾地点に計算値を限りなく近づけることが出来ます。そうすると、ドラグファンクションを独自のものにしてしまうことで、一般のマニュアルにある弾道とは違ったものになります。しかし、着弾予測したいのは、今、自分が持っている鉄砲で自分の弾を撃ち出した弾道です。ドラグファンクションを修正する事で実測に近い弾道を得て、その中間地点や、射撃場で試せない距離の着弾点を予測していく事が可能になります。

 
 
 ドラグファンクション修正機能を使う前に
  実際に10発を撃ってゼロインした場合、その弾痕のバラツキが重要になります。大きなバラツキがあるのに、正確な弾道を割り出そうとしても無駄です。10発のデータが得られたら、その標準偏差を求めてください。得られたデータから弾道計算したとき、着弾点の計算値は、結局、ゼロインしたときの標準偏差を反映したバラツキのあるものになります。
標準偏差とは、σという記号で表され、付属の簡易電卓機能で計算することが出来ます。±2σの範囲に入る確率は95%ですから、10発撃って弾速計で速度を測り100メートルで得られた2σ(MOAで)を得て弾道計算した結果と、200メートルで10発の中心点(MPI、Mean Point of Impact)が2σから外れるのは、おかしいと考えることが出来ます。
計算した弾道があってるかどうか判断するときにはそういった統計的な判断が必要になります。その中で、統計値から外れるぐらいに着弾点が計算値と異なる場合に、BC値やドラグファンクションが違っていると判断できると考えます。
ほとんどの場合、正確な気象条件を入力して正しいBC値を使う事で、G1の弾道計算値は実測値と大差ない結果が得られます。ですから、今日の装弾メーカの弾道表や、リローディングマニュアルに書かれている弾道表は、ほとんどがG1で代用されているのはご承知のことと思います。実測したデータが計算値と異なる場合は、まず、実測値に間違いが無いか、気象条件、スコープのクリック、銃の傾き(CANT角)、弾速計の値、、、などを疑って、間違いないという確信が得られたら、BC値や、ドラグを修正してみるというアプローチになると考えます。特に、スラグやサボットは弾頭形状がG1の弾頭と大きく違う物もあるので、ドラグファンクションを修正する、他のドラグファンクションを使ってみる、などの工夫が必要になる場合もあります。

 
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