弾道計算ソフト2000 Classic
操作マニュアル
|
|
|
弾道計算ソフト2000 Classicの縦・横 照準 offset(以下オフセットと称す)は、照準器の取り付け位置が銃身の真上でないときに、見かけ上の弾道が変化して見えてしまう現象を、計算で再現するために用意したものです。
上図は銃身が曲がっていた場合です。この場合、スコープをどんなに正確にアクションの上部に取り付けていても、見かけ上、スコープが弾道の真上に設置されていないような状況になります。このような場合にオフセット計算によって弾道を再現することが出来ます。
この図は真上から見た図であって左右のズレしか表現していませんが銃口から弾頭が飛び出るときは、上下左右、全方向にずれが生じることが考えられます。この場合は、上下にも見かけ上のズレが発生することがあるので、縦と横のオフセットが用意されています。
弾頭が銃身の方向と違った方向に飛び出す要因は沢山考えられます。
○ 銃身が曲がっている
○ 銃身の取り付けそのものがアクションの中心軸と合っていない
○ 銃身が激発の勢いで振動して弾頭の飛び出す方向が変わる
○ スコープマウントねじ穴がずれている、マウント自体が歪んでいる
○ スコープマウントベースのねじ穴がずれている、ベース自体が歪んでいる
○ アクションのネジ穴位置がずれている、アクションの表面が歪んでいる、マウントベースの間にゴミが入っている
○ マズルブラストの影響
○ マズルブレーキの影響
○ 銃口のクラウンの影響
○ ライフリングの銃口付近の偏りの影響、ライフリングスパイラルの偏向の影響
○ 散弾ではサボットやワッズが影響する場合
○ 散弾のカンチレバータイプ、自動銃の交換銃身の場合など、取り付けの精度が低い場合
○ 等々
散弾銃ではワッズやサボットが影響してしまう場合や、そもそも自動銃の交換銃身など、ライフルと違って高精度に銃身を取り付けできない物が多くありますので、アクションにスコープを取り付ければ、ズレが生じてしまう構造の物が多数を占めます。もちろんボルト式ならこの点は解消できるでしょうけど、その銃身はライフリングが半分削られていたりするので、弾道に影響してしまうこともあるでしょう。
ライフルでも、100mで10発撃って正確にゼロインしておいても、200mや300mで左右に偏ってしまうことは良くあります。どんな弾を撃ってもレシピを換えても左にズレが生じてしまうとかいうのは、おそらく、銃身の取り付けがアクションの中心軸と合っていないからでしょう。銃身の長さが60cmとして考えると、アクションと銃口で0.1mmの偏りがあると、60mで1cm、100mで約2cm、200mで約3cm、300mで5cmのズレが生じます。実例でもこのぐらいの偏りは珍しくありませんし、もっと偏りが生じる場合もあります。
ところで、このような現象はライフルスコープのパララックスによっても起こる事があります。この場合はオフセットとは異なりますので、ご注意ください。パララックスとは、ライフルスコープの照準が、スコープを見る目の位置によってズレてしまう現象です。ライフルスコープには焦点距離があって、その距離以外の場所では目の位置によって照準がズレてしまいます。頬付けの位置によってスコープを覗く目の位置が左右に変化すると、着弾点も変化してしまう事が起こります。AO又はフォーカス付きのライフルスコープで標的までの距離に焦点距離を合わせている場合は発生しませんが、それ以外ではズレます。確認するには銃を固定した状態で目の位置を左右に動かしてみて狙点がズレるようならパララックスがあります。AOの無い場合、多くのライフル用のスコープは100ヤード又はメートルに固定で、ショットガン又はマズルローダー用などのスコープの場合は50ヤード又はメートルに固定の場合もありますので、お手持ちのスコープはどうなのか、スペックを確認しておく事をお勧めします。ライフルスコープが100m
で焦点距離が固定されている場合、良くある例では射手のくせで、いつも頬付けの位置が左に偏る人の場合、50mではパララックスの性で右に狙点がずれ、100mではパララックスが発生しないため、頬付けで左に偏っても狙点通りの着弾になります。この場合、50mでの結果が右に偏った様になりますが、オフセットの性では無く、パララックスの性ということになります。頬付けが常に一定のズレをもたらすなら、オフセット計算で癖を再現できますけれども、「人の癖」ですから体調などによって変化してしまうので、意味のある結果は得られないと思います。
パララックスがある場合、いつもスコープの中心を覗くように工夫したとしても、狙っているうちに少しずつズレてしまうと、なかなか気がつかない事が多く、まして反動があるので引き金を引いたときに中心から見ていたかは確認できないので厄介です。しかし猟の場合だとAOダイヤルを合わせて照準する余裕がないことが多いため、AOを合わせていない距離でぼけてしまうAO付きスコープは敬遠されることがあります。AO無しのスコープはパララックスが少なくなるよう設計されているLUEPOLD社などもありますので、実際にパララックスがどの程度なのか確認しておく事をお勧めいたします。猟用に設計されたAO付きスコープなどは、AOを100mに合わせていても300mぐらいまでクリアに見え、50mでも実用上問題無い程度のボケで見える物もあります。一方で100mで合わせると、50mではオスだかメスだか解らない位にボケるのもあります。射撃なら問題ありませんが猟ではNGです。こういったのはスペックで解らないことが多く、スコープの性能は実際に覗いてみてから判断することをお勧めします。射撃場でお友達を作っておけば、鉄砲は触ることは出来ないでしょうけれどもスコープを覗くぐらいは出来るでしょうから、愛想も大事ということです。
|
|
|
スコープと弾道が合っていない場合の例を下図に示します。
弾道と照準だけを考えますと、下図の様に簡略化して作図することが出来ます。スコープと弾道がぴったり同じ直線上にある場合は、どんな距離でも左右の着弾はぴったり照準に合うはずです。
さて、スコープと弾道が合っていないと、ゼロ距離だけはスコープのクリック調整をする事で、狙った所に当たりますが、それ以外の所では狙った所と弾の当たるところは食い違ってしまいます。
|

|
このような場合、100mで10発撃ってその中心を正確に割り出して、スコープのクリック調整を行いゼロインしても、200mでは狙った所からずれて当たることになりますし、50mでも同じく狙った所に当たりません。
弾道計算ソフト2000 Classicでは、正しくマウントされているスコープでも、100mでゼロインして200m、300mで左右に偏りが出来てしまう場合に対して、スコープの弾道からのズレ(offset)を入力する事で、お手持ちの鉄砲の弾道を計算で再現することが出来るようになっております。
100mでゼロインして、200mの着弾位置が左右にずれている場合、この情報から手計算で求める事も可能ですが、弾道計算ソフト2000 Classicでは、スコープのズレを着弾情報から逆算することが可能です。
ところで、実際には左右にだけ弾道が変化するだけでなく、上下、斜め、いろいろな方向に弾道の変化が起こりえますので、弾道計算ソフト2000 Classicでは、鉛直成分、水平成分にわけて、「縦照準 offset」と「横照準 offset」の二つの成分で、これを表現します。
さて、縦方向に変化が起こる場合は手計算で逆算するのは一苦労です。初期の弾道計算ソフト2000 Classicでは、スコープの高さをいろいろ手動で変えてみて合わせ込む事で、見かけ上の上下の着弾位置を突き止めることが出来ましたが、バージョン3.1から自動で計算する事が出来るようになりました。
|
|
|
さて、上記のような弾道のズレを計算で求めるには、どのぐらいずれているかの着弾点の情報が必要になります。まず、ゼロ距離などの基準となる着弾と、ズレていると思われる着弾情報と、その他諸条件の情報です。
弾道計算ソフト2000 Classicで縦と横の照準 offsetを自動計算するには、次の要件が必要になります。
○ ゼロ距離など、基準となる着弾情報と、それ以外の着弾情報
○ 銃口における弾の速度
○ 弾のBC値(併せて気象条件)
○ スコープの高さ
たとえば100mでゼロインする場合、100m以外、200mとか50mでの着弾点の情報を必要とします。また、弾速も弾速計で測定したような値が必要になります。工場装弾の場合でも撃つ鉄砲によって、記載された弾速が出ないときもあります。弾頭のBC値は弾頭メーカーの示す値を使用しますが、気象条件でBC値は変化しますし、それ以外のいろいろな条件で表示と異なる場合もあります。これらの値を正確に得るのは難しいです。
ゼロインするときに10発撃つと思いますが、その時に弾速計で弾速を測定して、平均値と分散などを得て、妥当な弾速を得ることが出来ると思いますし、BC値も気象条件を測定しておけば大きく異なることは希でしょうから、メーカーの値を使用してみても良いと思います。ゼロ距離以外の着弾は10発撃ってその中心を得て分散などを計算してみて妥当性を吟味する必要があるでしょう。また、弾速計と銃口は2mから3mほど離れて設置しなければならない場合もありますが、このときは、銃口の弾速を逆算して補正しておく必要があります。
目的は、射撃場では試すことが出来ない距離での着弾点を出来るだけ実際に近い数値で予測することにありますので、統計的に妥当かどうかを常に検証できるような状況での測定が望まれます。
|
|
|
さて、20番サボット(フェデラル Trophy Copper Sabot Slug 20 Gauge Part # P209 TC)を100mでゼロインして撃ってみた例をとって、どのように弾道計算ソフト2000
Classicで縦横照準オフセット計算を行うか、その方法をステップバイステップでご紹介します。尚、以下の例で、横オフセットだけ計算したい場合は、着弾点の縦位置の入力項目をブランク(空白)にして計算をする事が出来ます。ブランクの場合は、その距離での弾道値が自動的に補われます。
- ステップ 1
- 鉄砲のスコープの高さを測る(銃身の中心からスコープの中心まで)
○ 4.3cm
- ステップ 2
- 10発撃って100mでゼロインを行う。このとき、弾速を測定しておく。
○ 10発の標準偏差σ=2.2
○ 弾速 10発平均値 1790fps(銃口から弾速計までの距離補正含む)
○ 弾のBC値 0.171(フェデラルのホームページ参照)
- ステップ 3
- 150mで10発撃って、着弾点の中心を得る。
○ 10発の標準偏差σ=3.2
○ 縦位置 -22.3cm(下に22.3cm)
○ 横位置 7.0cm(右に7cm)
さて、本来なら100mで正確に0に合わせているわけですので、150mでもゼロ位置にあって良いわけですが、この例では、実際に撃って「標的集計」ツールで検証してみたら7cmほど右に中心点がずれていました。100mで10発撃って標準偏差が2.2で、150mで10発撃って標準偏差が3.2ですから、たまたま偏って中心点がずれたのではないでしょう(「標的集計」では標的の写真から中心点やσを計算して表示します)。撃つ時に銃が傾いていて(CANT角)ずれたのではないことを水平器などを使用して良く確認しておく必要がありますが、この例ではCANT角はありませんでした(ちなみに、CANT角で右に7cmずれるためには10°以上傾けなければなりませんので撃ってて解るという物です)。
また、パララックスが原因であることも考えられますので、150mの標的を狙うとき、頬付けを左右にずらしてみて、スコープを覗く目の位置を左右に動かし、照準が標的上をどのぐらい左右にズレてしまうのか確認しておく必要があります。これが大きく、頑張ってスコープの中心に目を持ってきて狙っても7cmぐらいズレてしまう場合は、この計算は無意味である可能性があります。今回は、正確に頬付けしてパララックスは無かったと仮定して話を進めることにします。尚、AO又はフォーカスの付いているスコープの場合は、距離又はフォーカスを合わせることでパララックスは発生しなくなります。
このような場合、銃身の方向と弾道が何らかの要因で一致していないことが考えられますので、計算でどの程度のオフセットがあるのか、求めてみましょう。
ステップ 4
縦横照準オフセット計算をするには、まず、基本となるこの弾の弾道を計算する必要があります。
まず、弾道計算ソフト2000 Classicのメインコントロールパネルから、「弾道計算」タブを選択し、初速、ゼロ距離、弾のBC、スコープの高さを入力します。
|
|

|
|
次に、「諸条件」タブをクリックして開き、弾の重量、弾の直径を入力しますが、これらの値は弾道計算上、必ずしも必須ではありませんが、エネルギーの計算やTKOVの計算に影響しますので、正しく入力しておきます。
|
|

|
|
画面右下の「数値計算」ボタンで弾道を計算しますと、以下のようになります。
|
|

|
|
弾道の数値を見ますと、150mで-17.1cmとなっており、実際に撃った標的紙は-22.3cmであることから、かなり下になってます。また、左右のズレは本来無いはずですので、これも合わせる必要があります。
最終ステップ
「横照準 offset」とある欄の一番右に「計算」というボタンがあります。このボタンを押すことによって、弾道と銃身が合っていない場合の見かけ上のスコープのズレを計算することが出来ます。計算の前に、計算されたオフセットの単位をinchではなく、cmにするために、横・縦
offsetの単位をinchからcmに直しておきます。そして、「計算」ボタンをすと、着弾位置入力画面が表示されますので、ゼロ距離の着弾の情報を入力する画面がでます。
|
|

|
|
第一着弾点は、主にゼロ距離の情報を入れますが、ゼロインしていない場合など、状況に応じてゼロ距離以外の着弾点を入力する事も出来ます。その場合は、その点と第二点目の差分を元にオフセット計算が行われます。尚、第一着弾点を通ってゼロ距離の時に丁度照準の狙点が合うように、クリック補正してから弾道計算を行います。その時のクリック調整量は結果と共に表示されます。
「確定して次へ」ボタンを押しますと、下記の様に第二着弾点の入力画面が出ますので、それぞれ入力します。
|
|

|
|
ここで、計算ボタンを押すと、オフセット計算が実行されます。
オフセット計算は、入力された弾道の状況から、現在計算されている弾道に一致するように、縦・横の照準のオフセットを割り出します。
|
|

|
|
計算結果には、これまで入力した第一着弾点の情報と第二着弾点の情報が表示されますので、入力した数値と同じか確認できます。また、「第一着弾点を通るゼロ点へのクリック調整量」と表示されている項目は、第一着弾点がゼロ点の場合は0になりますので、無視して問題ありません。
照準(スコープ)のオフセットを付けることで、実測した弾道に合わせることが出来ました。ここで終わりではなく、この弾道が本当に合っているか、25mや50mなどで撃ってみていただきたいと思います。思ったより狙いと着弾が違う事が体験できると思います。
さてここで、0mの見越しのズレが大きい事にお気づきと思います。銃口からゼロ距離に向かって飛んでいく弾頭に対してゼロ距離100mで中心に照準した場合、銃口では、ここで表示された距離が照準の中心から外れると言うことを表現しています。ですので照準を覗いた場合にオフセットがあると近い距離でのズレが大きく見えますので近場で外す要因となることもあります。この例では50m進む毎に7cmもズレるので、手元で14cmも狙いがズレる事になります。
横クリック、縦クリックの表示がありますが、ゼロインしていない場合、つまり、第一点目の値がゼロ距離以外の着弾データ、または、ゼロ距離でも着弾点が左右上下に僅かにずれているデータの場合は、ゼロ距離にクリック補正してから弾道を合わせます。調整したクリック値は、計算後に表示するようになっています。
|
|
|
さて、オフセット計算では、あくまでも、実際の弾道を見かけ上の問題として帳尻を合わせる物です。したがって、弾の初速とBC値が確定している状況で有効であって、これらが実際と違う場合には無理矢理見かけ上の弾道を合わせたとしても長距離で必ずしも計算された弾道が実際に近くなる訳ではありません。そればかりか、全く違った計算結果になってしまうこともあります。
そこで、射撃場で高い精度の弾道を決定するためには、以下の要点を押さえておく必要があります。
(1)弾速を正しく計測しておく。
最低でも10発撃って、速度をクロノグラフ(弾速計)で実測し、統計的に確からしさを確認できる様にする。
(2)撃ち始めと打ち終わりでの気象条件を計測しておく。
BC値は気象条件、特に、気圧、高度に影響を受けますので、気象条件を確定しておく事は必須です。
(3)着弾点のデータは10発撃ったデータを使う。
正確に着弾点を得るためには10発撃って、統計的に有効なデータを得て、その着弾点の確からしさを統計的に
扱えるようにしておく必要があります。
(4)不確定要素を出来るだけ排除する。
左右に着弾がそれる要因として、パララックスや、 CANT角などが考えられます。
スコープの傾きCANT角などが加味されてくると、後でデータを整理するときにやっかいです。
高い精度の着弾点の評価をする場合には水平器を使用しましょう。また、風の影響は300m程度の距離でも
効いてきますので風の日は避けましょう。可能であればインドアの射撃場を利用しましょう。
上記の要点を踏まえた上で、弾道が実際と合わない場合、BC値やゼロ距離のずれなどを合わせ込み計算で調整することで、多くの場合の弾道が一致するようになります。それでも合わない場合や、合わせ込みを行った結果のBC値やゼロ距離が現実的ではない場合、または、左右に着弾がずれてしまう場合など、見かけ上の弾道がズレていると思われる場合に、オフセット計算をおこなって合わせ込むのが有効になります。
|
戻る
|