弾道計算ソフト2000 Classic
操作マニュアル
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この弾頭計算ソフトではスラグばかりでは無く、ライフルの弾道合わせにも対応できるように設計されています。この例では375HHの230gr弾頭をリローディングによって自作した装弾を100mで5発、300mで5発撃った標的紙を解析して、そのライフルの弾道を求める実例をご紹介します。
尚、本来なら異なる距離で各10発撃つべきで5発では弾道の確からしさは低くなります。弾道を突き止めるのであれば10発ずつ撃って集計した結果を元にしてください。この例は適切ではありませんが5発を10発に置き換えて操作手順に注目していただければと思います。
射撃場では、気温、気圧、湿度、高度をスマホで測定しており、これをデータとして使用します。
射撃場の気象条件
天候:曇りのち雨
気温:21.4℃
気圧:973.1hPa
湿度:71%
高度:30m
あいにくの雨で標的紙は濡れていますが、標的紙を貼り付けるときに水平器をつかって水平垂直を合わせ、また、ライフルを撃つときにも水平器を使って水平垂直を合わせています。これが間違うと若干違った結果になってしまいますので、射撃場で標的を貼り付けるときはご注意いただく事をお勧めします。
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まず、標的集計図から弾道を求めますから「標的集計図(弾道と連携する)」で起動します。そして最初に100mの写真を読み込み、寸法、垂直、照準点をセットします。設定において口径を.375にセットし、標的までの距離を100mにして確定ボタンを押し、弾痕マーカーを5発付けると以下のようになります。
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大体、2MOAぐらいの結果になっておりますが5発では統計的にイマイチですから10発だったと仮定して話を進めます。
センターは大体合っていると判断して、このまま300mを撃ち、その標的の写真を撮って読み込んで同じ手順で集計すると次のようになります。
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雨のせいで標的紙が濡れていますが、300mだとかなりばらつきます。集計図の設定タブで標的までの距離を最初の写真を100m、次の写真を300mと指定する事で、次のように表示されます。
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この結果から弾道を求めるには100mでの中心点はどのくらいかを求める必要があります。そのためには100mだけのデータを表示させる必要があります。V.3.1.5より集計タブに「集計しない」というチェックボックスが導入されておりますので、300mの集計タブにおいて、そのデータだけを集計したり、集計からはずしたりする事が出来ます。
「集計しない」チェックボックスで右クリックするか、ボックス横の文字表示部分でマウスをクリックするとメニューが出ますので、各写真番号だけ集計したり、全部を一回で集計に含めるように戻したりする事が出来ます。
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「集計しない」チェックボックスで右クリックするか
ボックス横の文字表示位置でマウスをクリックするとメニューが表示される。
この写真番号だけ集計したり全部を一度に集計したりする事が出来る。
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こうすると次のように100mと300mを分けた結果が表示出来ます。
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この結果をまとめると次のようになります。
100mの結果 弾痕の中心 左右 -14.7mm 上下 +71.3mm
300mの結果 弾痕の中心 左右 -41.7mm 上下 -266.3mm
例では各5発ですが、統計的に意味のある10発だったと仮定して中心点の結果から弾道を計算してみます。
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まず、各距離での着弾点から速度を逆算する場合は着弾点の情報が少しズレただけで逆算した弾速が大きく変わりますので、確かな着弾点のデータが必要になります。最低でも10発撃った、統計的な判断の出来る情報を使うことをお勧めします。この例では5発ですが10発だったと仮定して話を進めます。
弾道を計算するには、初速、BC値、スコープの高さ、ゼロ距離のデータが最低限必要です。リローディングブックや、弾頭の箱には、その弾頭のBCの値が記載されています。その値はG1のBC値が0.400となっていますので、その値を使用します。
スコープの高さは実際のライフルの銃身の中心からスコープの中心までをノギスなどで計ってみるのもいいです。それだとミリ単位の測定誤差が出ます。今回はスコープマウントに記載されているスペックを使用して、1.5inchと仮に推定してみます。弾道を求めた後に「縦横照準オフセット」計算機能を使用して計算で確認できるので仮置きでこの値を使用してみます。
さて、リローディングした弾なので、正確な初速とゼロ距離の両方が解りません。そこで、まず、初速を適当な数字2800fpsというのを、リローディングブックにあるロードのデータを引用します。合わせ込みの初期値に使用するだけですから2000fpsでも3000fpsでもいいのですが出来るだけ近い数値を使うことをお勧めします。
これで、大体の初速、BC値、スコープの高さがそろいましたが、ゼロ距離がどのくらいか解っていません。しかし、距離の異なる2点のデータがあるので、1点目をゼロ距離として2点目を1点目の相対位置として補正することで、弾速を逆算することが出来ます。
弾道計算ソフト2000 ClassicのV.3.1.5から、1点目のデータを使って2点目のデータを自動補正して計算する事が出来るようになりましたので、ゼロ距離は解らなくても「合わせ込み」機能を使用して初速を逆算してみます。
左上の設定メニューの「設定のリセット」 -> 「全てを出荷時の値にリセット」を選択して余計な値を紛れ込ませないようにしてから、気象条件と合わせ込み条件を入力していきます。
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まず、射撃場の気象条件を入力します。

次に、合わせ込み条件を入力していきます。特に、単位を間違わないようにします。

1点目の距離がゼロ距離になっていて、それが0ではない値を指定しています。
この様な指定をするとプログラムでは矛盾を検出して、
指定された点がゼロだった場合の2点目の着弾位置を再計算して合わせ込みを行います。
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合わせ込みタブの「合わせ込み計算」ボタンをクリックすると、下図のような結果になります。
計算方法は、合わせ込みタブの1点目をゼロ距離として新しい照準線を作ります。その照準線から2点目のデータを見た場合の位置を計算して初速を逆算します。補正された2点目のデータはゼロ点補正値として表示されます。
計算結果を見ますと、100mで指定した値が0に補正され、その照準線から見た300mの位置480.2mmが使われ、初速が逆算されます。
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計算の結果、約2700fpsとなりました。
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この初速から新しくリローディングした装弾がどのくらいのゼロ距離になっているか計算してみます。それには「ゼロ距離」調整機能を使用します。合わせ込みタブの初速に今得た初速を入力し合わせ込みボタンの左となりのコンボボックスを「初速調整」から「ゼロ距離調整」に変更して合わせ込み計算ボタンを押します。
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どうやら、このライフルを最後に使ったときは200mでゼロインしていた事がうかがえますが新しくリローディングした装弾は前回とぴったり同じにはならないようです。今回は200mで10発撃って正確にゼロインしていませんから、この値を仮使用します。
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さて、次にいい加減に決めたスコープの高さが気になりますし標的紙の結果では若干左に偏っているように見えます。そこで「縦横照準オフセット」計算をして何クリック調整したらぴったりセンターになるか、また、見かけ上この弾道にあったスコープの高さはどのくらいなのかを計算してみます。それには次のステップを行います。
(1) 弾道計算タブの初速、BC値に合わせ込んだ値を入力する。
(2) 諸条件タブの横照準フィールド横にある「計算」ボタンを押して弾道データを2点入力し計算する。
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弾道計算タブで合わせ込み結果を反映します。

諸条件タブの計算ボタンを押して100mのデータを入力します。

次に300mのデータを入力します。

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これで、計算ボタンを押すと次のような結果になります。
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スコープは2クリック左に設定する必要があることが解ります。左右の照準オフセットは1mm単位の僅かな物なので、0~600mで3mm程度のズレしか発生しないことが上記の「見越し」の項目を見ると解ります。
計算結果が実測値とミリ単位で合致しているので、この弾道はそこそこ現実味があります。これがcmという違いが出るようなら初速やBCなどが大きく違っている可能性も出てくるでしょう。各距離でそれぞれ10発撃った結果で大きな違いが出てくるようなら、ノギスの測定、射撃場の気象条件、射撃的の傾き、ライフルの傾き、パララックス、いろいろな射撃条件をもう一度検証してみる必要があると思います。
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この状態で、標的集計図をもう一度見ると、弾道が加味された表示に変わります。 全点表示チェックボックスをオンにしますと、10発のまとまった表示を見ることが出来ます。
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水平σ、鉛直σの項目を見ると、一番ばらつくのは水平σです。100mで93mm以内に99%の確率で着弾するという値です。平たく言えば、100mで約10cm以内に当たると言うことです。300mだと、単純に3倍して約30cmに広がります。写真で見ると、この広がりは20cm弱ですから行けそうな感がありますが、統計的には30%増しになります。そしてグルーピングの30%増しというのはこの場合だけであって、ばらつき具合では異なった値になります。なので2.58σというのはちゃんと計算しておくことが大事です。
30cmの丸を書いてみて考えると、このばらつき具合では300mで狙えるのはシカの肺としても半矢感が否めませんので、このレシピは失敗と思います。そして、異なる距離を5発で撃ち分けて弾道や統計値を表示してみましたが、それぞれ条件が若干違うので、この統計値もイマイチです。なので、各距離でそれぞれ10発撃ってその結果を評価することを強くお勧めします。
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リローディングにおいては薬量を調整することでもっとタイトなグルーピングを得る事が可能かもしれませんので、次回の射撃場では速度に換算して100~200fps変化するぐらい薬量を変えた弾を5発ずつ3~4種類作り、それぞれ100mでグルーピングを得て、その中からMOAを切るような薬量を検索し、決まったら20発作って100mと300mで撃ち分けて弾道を確定したい気分になります。100fps変えるための薬量を計算するには、弾道計算ソフト2000
Classicのメインコントロールパネルの「薬量計算」タブをつかって、リローディングブックのデータから計算して決めてください。
どれもダメだったら火薬の種類を燃焼速度の速いのと遅いので変えてみて、また出直しです。
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