ファイル修復ソフトの特徴
  ファイル復旧ソフトやバックアップとの違い

  うっかり削除してしまったファイルや開けなくなったファイルを修復する際に、 よく使われる「ファイル復旧ソフト」というのは、 記録媒体上に残されたデータの痕跡を探して元のファイルを再構成するという仕組みです。 こういう手法の正確さは記録装置の仕様やフォーマット形式に依存します。 また、完全に抹消されて痕跡が残ってないデータは見つかりませんし、 そもそも入手した時点で最初から壊れていたファイルはどうにもなりません。 つまり、ファイル復旧ソフトというのは、その名の通り、 以前手元に存在していたファイルの記録を部分的に取り戻すことしかできません。

  ところが、Parchive に代表されるエラー訂正技術を使った「ファイル修復ソフト」は、 あらかじめリカバリ・ファイルを用意しておくことで、 冗長性の範囲内の破損・消失であれば確実にファイルを修復・復元することができます。 破損した部分を、破損してない部分とリカバリ・ファイルを使って、 数学的な計算で元に戻すという仕組みです。 破損する前にエラー訂正用のデータを作っておくことを専門用語では Forward Error Correction というそうで、 リアルタイム性が高かったり再送信することが困難な状況で使われるみたいです。 Parchive で使われてるリード・ソロモン符号は特許問題が無く信頼性が高いので 音楽 CD や映画の DVD、二次元バーコードでも使われてます。

  ここで、「破損する前にリカバリ・ファイルを作っておく必要がある」というのが難点で、 「破損することが予想できる時しか使えない」ということです。 つまり「うっかりファイルを削除してしまった」という状況では 当然のことながらリカバリ・ファイルなど用意してないわけで役に立ちません。 そういう意味でファイル復旧ソフトとは用途が根本的に異なります。 むしろ、前もって破損や消失に備えるという意味では、 バックアップのようにコピーして別の場所に保管しておくのと同じ感覚です。 リカバリ・ファイルの作成には手間がかかるので、バックアップの方が一般的です。 バックアップの強みは「処理速度が速くて完全復旧ができる」ことです。 一方で、Parchive がバックアップよりも優れていて効率的なのは、 「全てのデータが同時に破損することはまず無い」という場合に限られます。

  フロッピー・ディスクは破損しやすいのが欠点ですが、 複数のディスクが同時に破損することはめったにありません。 そこで例として、データを 10個に分割して 10枚の FD に保存したとします。 このバックアップを取る為には 10枚の FD が必要です。 それで合計 20枚の FD のうちどの 1枚が破損しても、 対となるバックアップからコピーしなおすことで修復することができます。 ところが Parchive を使ってリカバリ・ファイルを作って 1枚の FD に保存しておけば、 ずっと少ない合計 11枚の FD のうちどの 1枚が破損しても、 リカバリ・ファイルを使って修復することができます。 更に、同時に 2枚が破損しても大丈夫なようにしようとする場合、 バックアップを 2個ずつ作ると合計 30枚の FD が必要になりますが、 Parchive を使えばリカバリ・ファイル 2個と合わせてたったの 12枚で済みます。 部分的にしか破損しない場合は、 バックアップよりも Parchive の方が非常に効率がいいことがわかります。