2.(3)所得金額を求めるもう一つの方法

前節で、所得金額は年間の収益から年間の費用を差し引くことで求められることを述べました。ここでの所得金額とは、簡単に言えば1年間にどれだけ利益(または損失)があったかということですから、その間の事業用資産の増減によっても求められることが、直感的に分かります。仮に事業用資産が現金だけであると単純化してみると、例えば、期首に600万円の現金があり、期末に800万円に増えていたとすると、その間に200万円の利益があったと考えられます。このことを式に表すと、
所得金額 = 期末の資産 - 期首の資産
となります。

ただし、正確には資産の増減だけではなく、負債(例えば借入金)の増減も考慮しなくてはなりません。もし現金が200万円増えていたとしても、そのうちの50万円は友人からの借入金によって増えたのだとしたらどうでしょうか。その場合は、200万円(資産の増減)全部が利益とは言えず、そこから50万円(負債の増減)を差し引かなけれならないことは明らかでしょう。負債の増減が「期末の負債 - 期首の負債」で求められることも考慮して先ほどの式を書き直すと、
所得金額 = (期末の資産 - 期首の資産) - (期末の負債 - 期首の負債)
となります。

この式を、
所得金額 = (期末の資産 - 期末の負債) - (期首の資産 - 期首の負債)
と変形してみましょう。
この式では、期末の「資産 - 負債」から期首の「資産 - 負債」を差し引いて、その増減を求めています。「資産 - 負債」は、「正味の資産」(=純資産)と言い換えられますから、所得金額とは結局、純資産の増減であるとも言えることになります。この関係を残高グラフで表すと、例えば図3のようになります。



なお、この図は青色申告の際に提出する貸借対照表に相当します。

ここまでで、所得金額を求める方法は、次のように2通りあることが分かりました。
@ 所得金額 = 年間の収益 - 年間の費用
A 所得金額 = 期末の純資産 - 期首の純資産 = 純資産の増減

白色申告では@の方法を用いましたが、青色申告では、@とAを組み合わせて用います。@には売上や仕入などの明細が分かるというメリットがあり、Aには財務状況が分かるというメリットがあります。2つを組み合わせることで、両方のメリットを生かすことができるわけです。

それでは、@とAを組み合わせるとは具体的にどういうことなのでしょう。また、日々の取引をどのように記録するのでしょう。それらの点について、次節以降に説明したいと思います。




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