翼型解析

2D 翼型データベースと 10 種類の解析エンジン(αFOIL)

Ctrl+1 で「airfoil 解析」モードに入ります。

画面の構成

画面は左・中央・右の 3 つに分かれています。

場所内容
左 翼型検索。名前と、翼厚・キャンバーの最小/最大で絞り込みます
中央 上 翼型の一覧。選んだ翼型が、下のタブと右側に反映されます
中央 下(タブ) 翼型形状(形の図)・逆翼型設計・ 解析エンジンごとの結果(XFOIL・Eppler コード・今井コード・Theodorsen コード など)
右 上 解析エンジンの選択と「単一翼型を解析」「全翼型バッチ」ボタン、翼型情報
右 下(タブ) 座標(数値一覧)・解析履歴(実行した解析の一覧、CSV 出力、削除)

このページには独自のメニュー(ファイル・表示・解析・設計・設定・ヘルプ)と、 下端のツールバーがあります。データベースには UIUC/Selig の 1,665 翼型が最初から入っています。

解析エンジンの選択

右上の「解析エンジン」ドロップダウンで、計算に使う理論を選びます。 それぞれ得意不得意があるので、目的に応じて選んでください。

エンジン分類出せるもの
XFOIL 6.99粘性・非粘性パネル法 ポーラー / Cp 分布 / 境界層 / 迎角掃引 / 全翼型バッチ
Eppler コード
PROFIL 1.1
翼型設計・境界層解析 CL–迎角 / CD / Cm / Cp 分布 / 境界層 / 全翼型バッチ
Theodorsen コード
NACA TR-452
等角写像・非粘性 CL–迎角 / Cm–迎角 / Cp 分布 / 零揚力角 / 全翼型バッチ
今井コード
1942
逐次等角写像・非粘性 CL–迎角 / Cm–迎角 / Cp 分布 / 無揚力角 / 理想迎角 / 全翼型バッチ
守屋コード
1937/1938/1941
二次元ポテンシャル理論 CL–迎角 / Cm–迎角 / Cp 分布 / 零揚力角 / 空力中心 / 全翼型バッチ
森口コード
1938
二次元ポテンシャル理論 CL–迎角 / Cp 分布 / 零揚力角 / 全翼型バッチ
水野 BEM コード
SNG_B
線形分布渦・境界要素法 CL–迎角 / 循環 / 渦強度 γ / 全翼型バッチ
Morrisコード
無料版/有料版共通
Hess–Smith・非粘性パネル法 CL–迎角 / Cm–迎角 / Cp分布 / Blasius検算 / 全翼型バッチ
佐藤コード
1966・JP版 / ENG版
翼型逆設計理論 指定圧力分布 / 指定速度分布から翼型を逆設計
Lighthill コード
A.R.C. R&M No.2112
翼型逆設計理論 指定速度分布から翼型を逆設計
どれを選べばよいか
抵抗(CD)や失速の様子まで知りたいなら XFOIL か Eppler を選んでください。 粘性を解くので Reynolds 数の指定が要ります。
揚力傾斜・零揚力角・空力中心といった基本的な性質だけを素早く知りたいなら、 Theodorsen・今井・守屋・森口・水野 BEM が向いています。 これらは非粘性理論なので Reynolds 数に依存せず、計算も速いです。

・Morrisコード(無料版)

解析エンジンで「Morrisコード」を選び、「単一翼型を解析」を押します。 迎角の開始・終了・刻み、Blasius積分点数(既定1024)、Cp保存を指定します。 入力座標のパネルをそのまま使い、一定吹出しと共通渦、非貫通条件とKutta条件から圧力分布を解きます。 完了するとMorrisタブと解析履歴に保存され、Cp分布とCSV書き出しを使えます。 「全翼型バッチ」も使用でき、条件に合わない翼型は失敗理由を記録して次へ進みます。

後縁→上面→前縁→下面→後縁(逆回りも可)の、鋭く閉じた単一輪郭が必要です。 開いた/厚い後縁、重複点、非有限値、特異な行列はエラーとし、後縁を自動で変更しません。 輪郭の交差や複数翼の入力は対象外です。160〜320パネルを推奨します。 Cmは翼弦1/4(y=0)まわりで機首上げ正、Cpはパネル中点の値です。

添付のairfoil_potential.pyを組み込んだHess–Smith法とBlasius検算であり、 Morrisの原論文の静電場ソルバーそのものではありません。Blasius積分は同じ離散速度場の別経路積分です。 解析ログには圧力積分・Blasius積分によるCL/Cm、境界条件・Kutta残差、正味吹出しと行列条件数を記録します。 非粘性・非圧縮の二次元定常流なのでReynolds数、遷移、境界層、失速は求まりません。 圧力抗力は数値残差としてログにのみ記録し、実際のCD・CL/CDには使用しません。

1 つの翼型を解析する

  1. 一覧から翼型を選びます
  2. 右上で解析エンジンを選びます
  3. 「単一翼型を解析」を押し、ダイアログで条件(Reynolds 数・迎角範囲・パネル数など)を入れます(右下「解析履歴」タブの「選択エンジンで解析…」、メニュー「解析 → 選択エンジンで単一翼型を解析…」でも同じです)
  4. 結果は中央下のそのエンジンのタブに描かれ、右下の「解析履歴」にも残ります

一度計算した条件はデータベースに記録されるので、同じ条件で再度実行すると 即座に前回の結果が呼び出されます。

異なる Reynolds 数の結果を重ねる(version-0.06)

  1. 同じ翼型を XFOIL または Eppler で、Re だけを変えて複数回解析し、結果を保存します。
  2. 右下の「解析履歴」で比較の基準となる解析を選び、中央を CL–迎角、CL–CD、CM–迎角、CL/CD–迎角のいずれかに切り替えます。
  3. 「Re重ね表示」をオンにします。「比較するRe…」で必要な Re を選べます。 「すべて選択」「選択中のみ」で絞り込みを変更できます。
  4. 各曲線の色と凡例、共通の数値軸で比較します。オフにすると選択中の履歴 1 件へ戻ります。

比較に使うのは既に保存されたポーラーで、この操作で追加解析は始まりません。 翼型・解析エンジンと版・Mach・Ncrit(Eppler では MU)・上下面遷移位置・パネル数・最大反復回数が一致する履歴だけを並べます。 選択中の履歴は、その Re の代表として優先します。その他は Re ごとに最新の有効履歴を使います。 異なる迎角範囲を外挿・補間せず、未収束/非有限値は欠けたまま描きます。

Cp の重ね表示ではありません。
Cp 分布、ログ、CSV 出力、履歴の削除対象は選択中の 1 件のままです。 GAXQ の「前世代重ね」「全世代重ね」は別の機能です。→ GAXQ

XFOIL が止まるとき・中止するとき(version-0.06)

単一 XFOIL 解析の条件にある「1点の制限時間 [秒]」は、1 迎角に待てる時間です。 既定 45 秒、5〜300 秒で設定します。応答停止や時間超過ではその点を失敗として残し、セッションを再起動して後続の迎角を解析します。 通常の未収束では境界層を初期化します。未収束点に、隣の迎角の数値を代入することはありません。 Cp だけ取得できない場合も、完了済みの係数は保持します。

進捗の「中止」で実行中の XFOIL を停止します。完了した点があれば中断結果として保存され、停止理由は履歴・ログに残ります。 保存先は解析開始時に選んだ翼型です。途中で別の翼型をクリックしても変わりません。 アプリの終了時にも中止確認が出ます。「いいえ」なら終了せず解析を続けます。

時間制限・復帰は失速付近の収束を保証する機能ではありません。 GAXQ から DB 登録した翼型にも同じ単一解析の保護が働きます。停止が続く場合はログを確認し、迎角範囲・刻み・座標・パネル分割を見直してください。

Cp 分布を見る

解析エンジンのタブの上に並んでいるグラフ切り替えボタンのうち、 「Cp分布」を押すと、XFOIL の画面と同じ並びの図に切り替わります。

上の図Cp 分布。縦軸は上が負圧(XFOIL と同じく上下を反転)、横軸は x/c。上面と下面を色で分けます
下の図同じ横幅で描いた翼型の形。Cp の位置と翼型の位置が縦にそろいます
右の欄翼型名・Re・迎角・CL・CM・CD・L/D・Ncrit

「迎角:」のドロップダウンで、どの迎角の Cp を描くか選びます。 Cp 分布を保存した解析(解析ダイアログで「各収束点のCp分布を保存」/「各迎角のCp分布を保存」にチェックしたもの。既定でチェックが入っています)だけが描けます。

・重ねて描けるもの

非粘性 Cp 同じ翼型・同じ迎角の境界層の無い Cp を点線で重ねます。 XFOIL の非粘性計算を使い、利用できない場合は Theodorsen の写像で計算します。 実線(粘性の Cp)との差を確認できます。
排除厚み δ* 翼型に境界層の厚みぶんを足した「流れから見た形」と、後縁から後ろへ伸びる伴流を、 下の翼型の図に破線で重ねます。境界層を保存した解析(XFOIL の「境界層データを保存」など)だけで描けます。
XFOIL の Cp 図の点線は何か
XFOIL の画面で Cp の実線に重なっている点線は、非粘性(境界層なし)の Cp です。 翼型の図の点線は、境界層の排除厚みを足した形と伴流です。 αFOIL+ωSIM でも同じものを「非粘性 Cp」「排除厚み δ*」のチェックで出せます。

解析データを CSV で書き出す

右下「解析履歴」タブで解析結果を 1 つ選び、「解析データをCSV出力…」を押して保存先のフォルダを選びます。 XFOIL がポーラー(PACC)・Cp 分布(CPWR)・境界層(DUMP)を別々のファイルに保存するのと同じく、 3 種類の CSV に分けて書き出します。

ファイル名中身
<翼型>_<エンジン>_Re…_polar.csv 迎角ごとの α・CL・CD・CDp・CM・上面/下面の遷移位置・収束したか
…_cp_a+3.00.csv その迎角の x/c・y/c・Cp(迎角ごとに 1 ファイル)
…_bl_a+3.00.csv その迎角の境界層:s・x/c・y/c・Ue/V∞・δ*・θ・Cf・H(伴流を含む)

どのファイルにも、先頭に解析条件(翼型・エンジン・Re・Mach・Ncrit・遷移位置・迎角範囲・パネル数・解析日時)を # 付きの行で書いておきます。文字コードは Excel でそのまま開ける UTF-8(BOM 付き)です。 非粘性のエンジンでは Reynolds 数をファイル名に付けません。

Cp と境界層のファイルは、解析のときにそれらを保存した迎角のぶんだけできます。 翼型の座標を書き出したいときは、メニュー「ファイル → 選択翼型をCSVで保存…」を使ってください。

全翼型バッチ解析

1,665 翼型をまとめて解析する機能です。右上の「全翼型バッチ」ボタン(メニュー「解析 → 選択エンジンで全翼型をバッチ解析…」)から実行します。

並列数は開始前のダイアログで指定できます。既定値はお使いの PC の CPU から自動で決まります (GUI と他モードのために、全コアは使いません)。

解析中も他のモードを使えます。 バッチ解析はバックグラウンドで走り続けるので、モードを切り替えてモデリングをしたり、 シミュレータで飛ばしたりできます。進み具合と停止ボタンは画面下のステータスバーに出ます。

完了済みの条件は自動的にスキップされるので、途中で止めて後から再開しても無駄がありません。

重い並列計算は同時に 1 つだけです。 全翼型バッチ解析・翼型自動選定+GA 探索・GA最適化は、どれも CPU のコアを目いっぱい使うため、 同時には動きません。
・バッチ解析と GA 探索がぶつかったときは、どちらを続けるか尋ねるダイアログが出ます。
・GA最適化が動いているとき(またはバッチ解析・GA 探索が動いているときに GA最適化を始めようとしたとき)は、 「ほかの計算が実行中です」と、動いている計算の名前と止め方が表示され、開始しません。

解析データの整理

解析を重ねると airfoils.sqlite3 がどんどん大きくなります (Cp 分布や境界層のデータは 1 件あたりの容量が大きいため)。

操作場所内容
1 件ずつ削除解析履歴タブ「選択した解析結果を削除」 選んだ解析結果だけを消します
その翼型の解析を全削除解析履歴タブ「この翼型の解析結果を全削除」 選択中の翼型に紐づく解析結果をまとめて消します
解析データを全削除メニュー「解析 → データベース管理(解析結果の削除・容量圧縮)…」 全翼型ぶんの解析結果を消してファイルを縮めます
翼型座標そのものは消えません。 全削除しても 1,665 翼型のカタログは残り、解析結果だけが消えます。 削除後に自動で VACUUM を実行するので、ファイルサイズが実際に小さくなります。

逆翼型設計

「逆翼型設計」タブでは、翼型の形から性能を求めるのではなく、 望みの性能(圧力分布・速度分布)から翼型の形を作り出します。 タブ上部の「逆設計手法」で次の 4 つから選びます。

・Eppler PROFIL(TRAPRO)

Eppler PROFIL 1.1 の TRAPRO 等角写像法です。設計迎角 α* の分布から翼型を逆設計します。

・佐藤コード(1966)

佐藤淳三「望ましい圧力分布を有する二次元翼断面形の設計法」の厳密二次元ポテンシャル理論です。 目標流速分布 qα(θ) や写像関数 g(θ) から翼型を直接作ります。

JP 版(日本語論文版)と ENG 版(Trans. Japan Soc. Aero. Space Sci. Vol.9 No.14)があります。 理論は同一で、後縁を z=0 に置いた座標系と式番号が異なります。

・Lighthill コード(A.R.C. R&M No.2112, 1945)

M. J. Lighthill「A New Method of Two-dimensional Aerodynamic Design」の方法です。 log q0(θ) の Fourier 級数から、式(7) → 式(10) → 式(8) の順に翼型を逆設計します。

Qspec逆設計(カーソルで速度分布を書き換える)

いまある翼型を出発点に、表面速度の分布(Qspec)の曲線をマウスでつまんで動かし、 その分布になるよう翼型を直す機能です。XFOIL の逆設計(QDES・MDES)にあたります。

一覧で翼型を選び、ページのメニュー「設計 → Qspec逆設計(カーソル編集)…」 (Ctrl+D、または下端のツールバーのボタン)で開きます。

・画面の見かた

上の図 表面速度 Q/V。灰色の破線が元の翼型、黄色の破線が指定 Qspec(つまんで動かす線)、 水色/橙の実線がいまの翼型の上面/下面です
下の図翼型の形。灰色の破線が元の形、実線がいまの形です
右の欄 厚み・キャンバー・CL・CM、元の値との比較、逆解法の結果(反復回数・時間・指定の実現率・残差・輪郭を動かした量)

・使いかた

  1. 「逆解法」で解き方を選びます(ふつうは既定の混合逆解法のまま)
  2. 「設計迎角 α」を、速度分布を合わせたい迎角にします
  3. 上の図の黄色い破線をつまんで上下に動かします。「なじませる幅」で、まわりをどれだけ一緒に引きずるかを変えられます
  4. 「翼型を作る (EXEC)」を押すと、指定に近い翼型が計算されます
  5. 気に入らなければ「1 つ戻す」。気に入ったら「DATで保存…」か「データベースに登録…」
ボタン働き
指定を現状に戻す (QSET)黄色い破線を、いまの翼型の速度分布に戻します
なめらかに (SMOO)指定 Qspec のギザギザをならします
高次を落とす (FILT)指定 Qspec を低次のフーリエ成分だけにします(完全逆解法のときだけ)
翼型を作る (EXEC)指定に近い翼型を解きます
形状を編集速度分布ではなく、下の図の輪郭を直接つまんで動かすモードに切り替えます

・2 つの逆解法

解法直し方向いている使い方
混合逆解法
パネル法・XFOIL の QDES 相当
書き換えたところのまわりだけ、輪郭を法線方向に動かして合わせます。動かさない部分との継ぎ目に折れ目はできません。 既定。「この部分の圧力分布だけ直したい」とき。 ほぼすべての翼型(データベースの 98.7%)で使えます
完全逆解法
Theodorsen の写像・XFOIL の MDES 相当
速度分布から翼型全体を作り直します 分布を全体的に作り替えたいとき。 薄くてキャンバーの強い翼型は扱えません(データベースの約 44%)。 扱えない翼型では選べなくなります
指定どおりにならないことがあります。 閉じた翼型が作れる速度分布には拘束があるため(Lighthill の 3 条件)、描いた曲線の通りになるとは限りません。黄色い破線(指定)と実線(実現した分布)を見比べると、どこが無理だったか分かります。 実現できた割合は右の欄の「指定の実現率」に出ます。
後縁のすぐ手前は編集できません。 後縁が薄い(上下面が触れそうな)翼型では、パネル法の表面速度が後縁から翼弦の 2% ほどの範囲で乱れるため、その範囲の曲線は描かず、つまめないようにしています。

解析した翼型を機体に使う

翼型を選んだ状態で、メニューの「翼型(F) → airfoil 解析で選択中の翼型を使う…」を実行すると、 その翼型がプロペラ・主翼・尾翼の断面として設定されます。 Qspec逆設計で作った翼型も、「データベースに登録…」しておけば同じように使えます。

区間ごとに別の翼型を割り当てたい場合は、 「機体(A) → 平面図で寸法を編集」や「プロペラ正面図で寸法・翼型を編集」から 区間ごとに選んでください。→ 機体データの編集